索引 / 001 JA
Applied Mathematics: A Very Short Introduction(応用数学:超入門) cover

数学

数学

Applied Mathematics: A Very Short Introduction(応用数学:超入門)

Alain Goriely

英語原題: Applied Mathematics: A Very Short Introduction

応用数学者が何をし、どのように考えるのかを紹介する短い入門書。物理学、生物学、医学、技術からの例を通じて、現実の問題がどのように数理モデルに置き換えられ、そのモデルがどう単純化され解析されるのか、そしてそれ自体のために発展した数学が思いがけない用途を見いだす様子を示す。

前提知識: 高校程度の数学。数式は少なく、考え方は言葉と図で説明されている。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
applied mathematicsmathematical modellingdimensional analysisdynamical systemsvery short introductions

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Goriely, A. (2018). Applied Mathematics: A Very Short Introduction. Oxford University Press. Very Short Introductions.

章の要約

本書は約140ページで、8つの章、短いエピローグ、読書案内、索引からなる。各章の題は、遊び心のある問いと、その章で扱う例を示す副題の組み合わせになっている。出版社は本書のねらいを、応用数学という分野と、それが純粋数学・科学・工学ともつ関係を、コンパクトでありながら包括的に示すことだと説明している。物理学と工学における初期の成果、第二次世界大戦後に独立した分野として発展したこと、そして今日の科学における役割である。出版当時、著者はオックスフォード大学の数理モデリング講座の教授を務め、オックスフォード産業・応用数学センターの所長でもあった。

第1章:What's so funny 'bout applied mathematics? Modelling, theory, and methods(応用数学の何がおもしろいのか――モデル化、理論、方法)

最初の章は、応用数学とは何かを示す。数理モデルを作ること、それを支える理論、それを分析する方法である。そのうえで、応用数学と、それを取り巻く純粋数学・科学・工学との関係を位置づける。

第2章:Do you want to know a secret? Turkeys, giants, and atomic bombs(秘密を知りたいか――七面鳥、巨人、原子爆弾)

規模のまったく異なる3つの例、すなわち七面鳥の調理から巨人の大きさ、原子爆弾のエネルギーまでを軸にした章である。共通するのは物理量とその次元から推論することで、方程式を解く前に答えが得られることもある。

第3章:Do you believe in models? Simplicity and complexity(モデルを信じるか――単純さと複雑さ)

モデルとは何か、どれだけの細部を含めるべきかを論じ、単純なモデルと複雑なモデルを比べる。

第4章:Do you know the way to solve equations? Spinning tops and chaotic rabbits(方程式の解き方を知っているか――回るこまとカオス的なウサギ)

モデルを書き下したら、その方程式を解かなければならない。この章は、こまの運動と、ウサギの個体数のカオス的なモデルを例として取り上げる。

第5章:What's the frequency, Kenneth? Waves, quakes, and solitons(周波数はいくつか――波、地震、ソリトン)

主題は波である。振動と周波数、地震のあとに地球内部を伝わる波、そして形を保ったまま進む孤立波であるソリトンを扱う。

第6章:Can you picture that? X-rays, DNA, and photos(思い描けるか――X線、DNA、写真)

この章は画像に目を向ける。数学によってX線の測定から画像を得る方法、DNAの研究に数学が入り込むしかた、そして写真の表現と処理である。

第7章:Mathematics, what is it good for? Quaternions, knots, and more DNA(数学は何の役に立つのか――四元数、結び目、そしてまたDNA)

ここでは向きが逆になる。四元数や結び目理論のように、それ自体のために発展した数学が、のちにDNAの研究を含む応用を見いだした例である。

第8章:Where are we going? Networks and the brain(どこへ向かうのか――ネットワークと脳)

最後の章は新しい分野、すなわちネットワークと、著者自身も研究している脳のモデル化に目を向ける。その後に短いエピローグが続く。

主要概念

第1–3章:応用数学は何をするのか

  • 数理モデル化:世界についての問いを数学の問題に置き換え、分析し、答えを解釈すること。
  • 理論と方法:第1章がモデルと並べて挙げる、この分野のほかの2つの柱。
  • 次元に基づく推論:物理量の単位と尺度を使って答えを見積もること。七面鳥、巨人、原子爆弾の例の主題である。
  • 単純さと複雑さ:分析できるほど単純なモデルと、現実的であるほど詳細なモデルとのあいだのトレードオフ。

第4–5章:方程式と波

  • 方程式を解く:モデルが生む方程式の厳密解、近似解、数値解を求めること。
  • カオス:個体数モデルのような決定論的な系が初期状態にきわめて敏感で、長期の予測ができなくなるふるまい。
  • ソリトン:形を変えずに伝わる孤立波。

第6–8章:画像、思いがけない応用、新しいフロンティア

  • 数理イメージング:X線スキャンからデジタル写真まで、画像を再構成し表現すること。
  • 四元数と結び目:純粋数学から生まれ、のちに応用を見いだした構造。
  • ネットワーク:結ばれたノードの集まり。本書では脳のモデル化への入り口として用いられる。

批判的分析

長所

  • ごくわずかな紙幅で分野全体を示す。 約140ページのなかで、モデル化とは何かから始まり、次元に基づく推論、方程式と波を経て、画像、応用された純粋数学、ネットワークと脳の研究にまで進む。
  • 具体例を軸に組み立てられている。 どの章の副題もその章の例(七面鳥と原子爆弾、こまとウサギ、X線と写真)を挙げており、それぞれの考え方が定義ではなく問題を通じて導入される。
  • 純粋数学とのつながりを真剣に扱う。 第7章はのちに役立つことになった純粋数学に充てられており、出版社も純粋数学と応用数学の関係に本書が注意を払っていることを強調している。
  • 現役の応用数学者による執筆。 力学、生物の成長、脳に関する著者の研究は、この分野の行き先を見渡す最終章の主題に近い。

短所

  • 概観であって授業ではない。 この長さでは各話題は素描にとどまる。演習はなく、学生が問題演習で使えるような技法を教える本ではない。
  • 例の選び方に偏りがある。 各章は力学、波、画像、生物学に重心を置いている。このコースのほかの多くの本が扱う最適化、統計学、オペレーションズ・リサーチなど、応用数学のほかの領域は目次に現れない。

コースにおける位置づけ

本書はこのコースの総論にあたる。応用数学者が何をしているのかを短く読みやすく伝える本で、教科書の前に、あるいは並行して読むのに向いている。主題は1つの技法ではなく、分野全体である。

コースのほかの本は演習付きの教科書である。Guenin、Könemann、Tunçel の A Gentle Introduction to Optimization は、線形代数だけを前提とする、最適化の側で最初に読む教科書として自然な本であり、Chong、Lu、Żak の An Introduction to Optimization と Boyd と Vandenberghe の Convex Optimization は、最適化の理論とアルゴリズムにずっと深く踏み込む。Ian Jacques の Mathematics for Economics and Business と Adam Ostaszewski の Advanced Mathematical Methods は、経済学などへの応用を伴う数学的手法を示す。Goriely の本は動機と広い見取り図を与えるが、これらの教科書の代わりにはならず、教科書もまた本書の代わりにはならない。

本書の使い方

本書は、数学・物理学・工学の課程を始めたばかりの人、純粋数学と応用数学のどちらに進むか迷っている学生、モデル化に興味をもつ一般の読者に向いている。このシリーズは一般読者向けに書かれており、前提とされるのは学校で学ぶ数学だけである。

数回に分けて通読するとよい。第1–3章が中核で、モデル化とは何か、応用数学者が尺度と単純さについてどう推論するかを説明している。第4–8章はそれぞれ独自の例を中心にしているので、関心に応じて選んで読める。力学系と波なら第4章と第5章、画像なら第6章、純粋数学とのつながりなら第7章、現在の研究の方向なら第8章である。

より多くを得るには、第2章の尺度に関する議論を自分で選んだ例に当てはめてみること、そして読書案内をたどって関心をひかれた話題を1つ掘り下げることを勧める。その後、微分方程式、数理的手法、最適化の授業を受ける学生は、それぞれの技法がなぜ重要なのかを思い出すために、関連する章に立ち返るとよい。