01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Elliott, S., & McGhee, J. (Eds.). (2025). Snell's Equity (35th ed.). Sweet & Maxwell.
章の要約
Snell's Equity は、イングランドとウェールズのエクイティ法に関する定評ある体系書である。第35版は2024年12月に刊行され、2025年12月に第1補遺が出された。編者はSteven Elliott KCとJohn McGhee KCで、1,000ページを超える全45章・6部の構成である。出版社の紹介によれば、エクイティが用いられる主題ごとに整理されており、エクイティの性質と格言、エクイティ上の権利の取引、保護的管轄、救済、信託、そして財産の管理と担保を扱い、商事の場面での信託や受認者義務の広がりにも注意を払っている。以下では6つの部に沿って、章題は目録のとおりに示す。
第I部 Equity and Equities(第1–4章)
章は、The Nature, History and Courts of Equity、Equitable Property、Assignment of Choses in Action、Priorities である。エクイティの性格と歴史から始まり、エクイティ上の財産、さらにその取引、すなわち動産債権(chose in action)の譲渡と競合する権利の順位へと進む。出版社はこの部を、エクイティが実際にどう働くかを示すものと説明している。
第II部 Maxims and Doctrines(第5–6章)
章は、The Maxims of Equity と The Equitable Doctrines である。格言はエクイティの一般原則として示され、法理は、出版社の言葉では、古くからの5つのエクイティ上の法理、すなわち conversion、reconversion、election、performance、satisfaction である。
第III部 Equitable Protection(第7–13章)
章は、Fiduciaries、Fraud, Undue Influence and Unconscionable Transactions、Breach of Confidence、Powers: General Principles、Specific Powers: Powers of Appointment、Estoppel、Penalties and Forfeiture である。受認者関係や不当威圧から、エストッペルや違約罰の救済まで、地位や状況のために弱い立場にある者をエクイティが保護する領域と、権能(powers)に関するエクイティ法がここにまとめられている。
第IV部 Equitable Remedies(第14–20章)
目録上の章は、Introduction、Rescission、Rectification、Specific Performance、Injunction、Appointment of Receivers by the Court、Injunction である。導入に続いて、取消し、訂正、特定履行、差止命令、管理人の選任といった主要な救済を扱う。
第V部 Trusts(第21–30章)
章は、Definition and Classification of Trusts、Private Express Trusts、Charitable Trusts、Trusts Arising to Enforce an Informally Expressed Intention、Resulting Trusts、Trusts Arising from Wrongs、Appointment, Retirement and Removal of Trustees、Specific Powers: The Administrative Powers of Trustees、The Duties and Discretions of Trustees、Breach of Trust である。信託の中核部分で、信託の定義と分類、信託が生じるさまざまな経路、そして受託者の選任、権限、義務、責任が扱われる。
第VI部 Administration of Assets(第31–45章)
章は、Collection and Realisation of Assets、Payment of Debts、Distribution of Assets、Remedies、Legacies、The Nature and Classification of Securities、Creation and Setting Aside of Mortgages、The Rights and Interest of the Mortgagor、The Rights and Interest of the Mortgagee、Floating Charges、Priorities of Mortgages、Discharge of Mortgages、Pledges、Liens、Suretyship である。最初の5章は債務の支払や遺贈を含む財産の管理を扱い、残る10章は抵当権を中心とする担保を扱い、続いて質権、留置権、保証に及ぶ。
主要概念
第I–II部
- エクイティ上の財産と優先順位:エクイティ上の権利がどのように保有、譲渡され、競合する請求に対して順位づけられるか。
- エクイティの格言:エクイティが働く際の一般原則。
- エクイティ上の法理:conversion、reconversion、election、performance、satisfaction。
第III部
- 受認者:エクイティ上の忠実義務を負う者と、その違反の帰結。
- 不当威圧と非良心的取引:不公正に得られた取引に対するエクイティ上の救済。
- エストッペルと秘密保持義務違反:信頼と秘密情報に対するエクイティ上の保護。
- 権能:権能の指定に関するエクイティ法。
第IV部
- 取消し、訂正、特定履行:契約に対する、また契約の履行のための主要なエクイティ上の救済。
- 差止命令と管理人:行為と財産に向けられた救済。
第V–VI部
- 明示信託、復帰信託、擬制信託:信託が生じるさまざまな経路。
- 受託者の義務と信託違反:受託者に課される基準と、違反に伴う責任。
- 抵当権、浮動担保、保証:担保に対するエクイティ上の扱い。
批判的分析
長所
- 一つの発想のもとでの広さ。 出版社は本書を、エクイティ上の原則と救済、およびその信託・遺言検認・抵当への適用を扱うものと説明しており、目次もそれを裏づける。1冊のなかで、エクイティ上の法理や受認者から救済、信託、担保までが扱われる。
- 権威。 書籍販売の紹介文は、本書を包括的で裁判所にしばしば引用されるものと述べており、エクイティの論点について典拠を探す際にまず手に取る本となる。
- 商事の側面。 紹介文は、商事の場面における信託と受認者義務の広がりを挙げており、受認者、浮動担保、保証の各章がそれを反映している。
- 新しさ。 第35版には補遺が出されており、2025年12月の補遺は、受認者の利益吐き出し責任、不誠実な幇助、不当威圧、株式譲渡の方式に関する最近の最高裁判決を取り込んでいる。
- 参照しやすい構成。 6つの部と番号付きの章があるため、訂正やエストッペルといった主題にすぐ飛べる。
短所
- 教科書ではなく体系書。 実務家や上級学生のための参照書であり、演習問題や自己テストのある講義用の教科書ではない。
- 分量。 1,000ページを超え45章あるため、通読するよりも必要に応じて引くのに向く。
- 理論面は控えめ。 目次は主題と法理ごとに組まれている。信託がなぜその形をとるのかという概念的説明を求める読者には、より短い論証的な本のほうが明示的に論じている。
- 補遺が必要。 2025年の判例は別冊の補遺にあるため、本体と合わせて読む必要がある。
コースにおける位置づけ
Snellは、エクイティと信託のリストのなかで参照書の側に位置する。Gary Wattの Equity & Trusts Law Directions は初めてこの科目に接する読者のための入門教科書であり、Pennerの The Law of Trusts は概念上の論争に丁寧に触れる簡潔な基本教科書である。Alastair Hudsonの Equity and Trusts とGraham Virgoの The Principles of Equity and Trusts は、法を述べたうえでその政策と理論を検討する単独著者の本格的な教科書である。Hanbury & Martin: Modern Equity は、信託法とより広いエクイティ管轄を学術的議論に目配りしながら詳述する、もう一つの長大な体系書である。Snellは、信託を超えて、法理、保護的管轄、救済、担保にまで及ぶ点で異なる。
本書の使い方
エクイティと信託の科目を修了済みで、特定の論点について詳細で権威ある法の叙述を必要とする上級の学部生、大学院生、実務家に向く。
実際の使い方の例は次のとおり。
- 主題から引く。 部の構成を手がかりに該当章を探す。受認者、不当威圧、エストッペルは第III部、救済は第IV部、信託は第V部。
- 深く読むために。 エッセイや事例問題で典拠が必要なときは、短い教科書の章とSnellの対応する章を組み合わせる。
- 信託の科目の核: 信託を扱う第21–30章と、受認者を扱う第7章。
- 選択的に: 財産管理と担保の章(第31–45章)は、主に遺産や財産担保の科目で必要となる。
- 併用するもの: 法の記述に依拠する前に、最新の補遺と最近の判例を確認する。
