01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Jones, A., & Dunne, N. (2026). Jones & Sufrin's EU Competition Law: Text, Cases, and Materials (9th ed.). Oxford University Press.
章の要約
第9版は17章からなる。出版社は本書を、EU競争法の完全な手引きを1冊にまとめたものと紹介している。著者による詳しい解説に、主要な判例と制定法資料の抜粋が添えられている。章は大まかに四つのまとまりに分かれる。基礎、二つの主要な禁止規定、特定の種類の合意と行為、そして執行とより広い文脈である。
第1–2章:Introduction to Competition Law;Competition Law and Institutions of the European Union
冒頭の2章は、競争法が何のためにあるのか、EU競争法がEUの諸機関の中でどこに位置するのかを示す。以降の各章は、ここで示される枠組みの中で進む。
第3章:Market Power, Market Definition, Barriers to Entry
章題が示すとおり、市場支配力、市場画定、参入障壁という互いに関連する三つの概念を扱う。本書の順序では二つの禁止規定の前に置かれている。
第4–5章:Article 101 TFEU: The Elements;Article 101 TFEU: Substantive Appraisal
最初の禁止規定は二段階で扱われる。第4章は101条の要件、第5章はその実体的評価である。
第6–7章:Article 102: Introduction and Dominant Position;Article 102 TFEU: Conduct which can be Abusive
二つ目の禁止規定も同じ構成である。まず支配的地位の概念、次に濫用となりうる行為の種類を扱う。
第8章:Competition and the State
競争規則と国家との関係を扱う章。
第9–12章:Horizontal agreements: Cartels and Collusion;Horizontal Cooperation Agreements;Vertical Agreements;Licensing Agreements and other Agreements Involving Intellectual Property Rights
四つの応用章が、101条の枠組みを合意の類型に当てはめる。競争者間のカルテルと共謀、競争者間の協力協定、サプライチェーンの異なる段階にある事業者間の協定、そしてライセンス協定その他の知的財産権に関わる協定である。
第13–14章:Public Enforcement of Article 101 and Article 102 by the Commission and National Competition Authorities;Private Enforcement of Articles 101 and 102
執行は、欧州委員会と各国競争当局による公的執行と、同じ二つの条文の私的執行に分けられる。
第15章:Mergers
企業結合規制を扱う独立した章。
第16章:EU Competition Law and Policy in the Digital Economy
デジタル経済における競争法と競争政策に充てられた章。
第17章:International Aspects
最終章は、EU競争法の国際的な側面を扱う。
主要概念
基礎(第1–3章)
- 市場画定:第3章の章題に挙がっている。
- 市場支配力と参入障壁:同じく第3章の章題にあり、101条・102条の各章の前に置かれる。
禁止規定(第4–8章)
- EU運営条約101条:反競争的合意の禁止。要件と実体的評価を通じて扱われる。
- EU運営条約102条:支配的地位の濫用の禁止。支配的地位、次に濫用行為の順に扱われる。
- 競争と国家:競争規則と国家の関係。第8章の主題。
応用と執行(第9–17章)
- カルテル、水平的協力、垂直的合意:101条のもとで検討される主な合意の類型。
- 公的執行と私的執行:当局による執行と私人による執行。
- 企業結合規制、デジタル経済、国際的側面:最後の3章の主題。
批判的分析
長所
- **解説と一次資料が1冊に。**出版社は、専門家による解説と、主要判例・制定法資料の抜粋との組み合わせを強調している。議論を追ったうえで原典に当たることができる。
- **批判的な検討。**出版社によれば、本書はこの分野の展開について批判的な洞察を示し、現在の政策論争や争いのある法的問題を扱う。立場を論証する必要のある学生に向く。
- **文献への配慮。**出版社は、丁寧な脚注と参照が既存の文献をたどる助けになると述べており、論文や専門的な研究に役立つ。
- **主題の明快な区分。**17章は、二つの禁止規定、合意の類型、二つの執行方法、企業結合、デジタル経済、国際的側面を分けているので、主題ごとに使いやすい。
- **新しい内容。**出版社は、第9版が最新の規則とガイダンス、EU裁判所の判例、欧州委員会の決定実務で更新されていると述べ、目次にもデジタル経済の章がある。
短所
- **大部で専門的。**主題が非常に詳しく扱われており、専門の競争法の授業には適するが、概説的な授業には過剰である。
- **EU法のみ。**書名も各章もEU競争法に関するものである。英国や米国の競争法が必要な読者は別の資料が要る。
- **最初の入門書ではない。**出版社が想定する読者は、専門的研究に取り組む研究者、学部生・大学院生、法律実務家である。EU法に初めて触れる読者は、EU法の概説書を併用したい。
コースにおける位置づけ
この競争と規制の書目の中で、本書はEUに重点を置いた専門書である。Whish と Bailey の Competition Law はEUと英国の競争法を併せて扱う総合的な教科書で、役に立つ場面では経済学も取り入れている。英国法も必要な読者にはこちらのほうが広い。Jones と Dunne は、資料の抜粋とEU規則をめぐる批判的な議論により多くの紙幅を割く。The Antitrust Enterprise は米国反トラスト法の入門書で、米国のアプローチとの対比に使える。
Understanding Regulation と The Oxford Handbook of Regulation は、規制の理論や戦略を含む、より広い意味での規制を扱う。競争法はその中の一つの手段であり、これらは背景を与える。背景はそれらで、法の内容は本書で学ぶとよい。
本書の使い方
本書は、上級の学部課程や大学院の競争法の授業を受ける学生、研究者、実務家に向く。EU法または競争法を一度学んでおり、市場や市場支配力といった基本的な経済学の概念に慣れていると、最初の章が読みやすい。
実用的な読み方:
- **中核:**第1–7章とカルテルを扱う第9章。枠組み、経済学の道具、二つの禁止規定が得られる。
- **応用:**第10–12章と第15章を、授業の計画に応じて選ぶ。水平的協力、垂直的合意とライセンス、企業結合。
- **執行:**実体規則が分かってから第13–14章。
- **選択:**第8章(競争と国家)、第16章(デジタル経済)、第17章(国際的側面)は、授業や論文の題目に応じて。
判決や決定の抜粋は飛ばさず、解説と照らしながら読む。小論文では脚注を手がかりに二次文献を探す。
