01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Roberts, J. V. (2026). Criminal Justice: A Very Short Introduction (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
第2版(2026年6月)は約160ページの小型本で、第2版への序文、6つの章、控訴院判決の抜粋と解説を収めた付録、そして各章の参考文献と追加資料を含む文献案内からなる。著者のJulian V. Robertsはオックスフォード大学の犯罪学名誉教授で、2010年から2018年までイングランド・ウェールズ量刑評議会の委員を務め、米国法律協会(American Law Institute)の模範量刑法典にも助言した。出版社は本書を、犯罪から法廷まで、刑務所から仮釈放まで、制度のあらゆる段階を扱い、当事者主義のモデルに焦点を当てつつ現代の司法制度を批判的に検討する本と紹介している。新たな内容として、人工知能、刑事司法が可視的マイノリティや民族的マイノリティに異なる影響を与えるという認識、そして国際的な法的紛争が加わった。初版(2015年)は犯罪被害者の独立した章を含む7章構成だった。第2版では、被害者の役割は出版社が本書の扱う問いの一つとして挙げているものの、終盤の章立ては組み替えられている。
第1章:刑事司法の起源と主な特徴
約20ページの冒頭の章で、制度全体を導入する。初版の対応する章では、刑事司法の目的と主要原則、当事者主義と職権主義のモデルの対比、警察から仮釈放までの制度の構成要素、裁量、そして刑事上の不正義がとりうる形が示されていた。
第2章:犯罪と法廷のあいだ
犯罪の後、公判の前に何が起こるか。初版の同名の章は、法廷外での処分、起訴の決定、保釈と勾留、司法取引、有罪答弁による刑の減軽を扱っていた。これらの語は新版でも繰り返し現れる。
第3章:刑事法廷の内側
公判の段階。初版の対応する章(「In court and on trial」)は、裁判官と陪審、検察官と裁判官が任命されるか選挙されるか、問題解決型の専門裁判所、そして誤判と誤った無罪を論じていた。第2版でも陪審による法の無視(jury nullification)や誤判が繰り返し現れる語に含まれる。
第4章:なぜ罰するのか……そしてどのように?
30ページ近くある最も長い章で、量刑を専門とする著者の関心を反映している。初版のこの章は、犯罪の重大さを振り返る視点と将来の犯罪を防ぐ視点という刑罰の正当化を示し、比例性、抑止、社会復帰、量刑ガイドライン、加重・軽減事由、主な刑の選択肢を扱っていた。
第5章:刑務所の内と外
拘禁と釈放。初版の章は、受刑者の構成、拘禁の費用と「拘禁の苦痛」、釈放と仮釈放、釈放後の生活、再犯、そして電子監視などの代替手段を扱っていた。
第6章:刑事司法の未来
刑事司法の行方を論じる、約5ページの短い結びの章。
付録:控訴院判決の抜粋と解説—「Ms Barrett」の事件
控訴審判決の抜粋に著者の解説を付したもので、裁判所が事件についてどう推論するかを読者が直接見ることができる。
主要概念
制度とその段階(第1〜3章)
- 当事者主義モデル:中立的な判断者の前での検察と弁護の対抗。本書が焦点を当てるモデル。
- 職権主義モデル:裁判所が事件の審理を主導する対照的なモデル。
- 裁量:警察、検察官、裁判官が各段階で行う選択。
- 司法取引と有罪答弁:完全な公判を経ずに事件を解決しうる交渉。
- 誤判:刑事上の不正義の最も目に見える形。
刑罰(第4〜5章)
- 量刑の目的:比例性、抑止、社会復帰を含む、応報的・予防的な正当化。
- 量刑ガイドライン:量刑評議会が出すような、刑の決め方についての構造化された指針。
- 仮釈放と釈放:刑期満了前に受刑者を釈放する決定と、釈放後の生活。
新しい動き(第6章)
- 人工知能:刑事司法がどう変わりうるかという文脈で、この版から加わったテーマ。
- 異なる影響:刑事司法が可視的マイノリティや民族的マイノリティに及ぼす不均等な影響。
批判的分析
長所
- 1冊の短い本で手続の全体を見渡せる。 各章は、犯罪から法廷までの期間、公判、量刑、刑務所、釈放へと事件を順に追っていくので、初学者は各段階のつながりをはっきりと把握できる。
- 量刑の専門家による執筆。 Robertsの研究歴と量刑評議会での経験は、最も長い章である刑罰と量刑の扱いの厚みに表れている。
- 比較の視点。 本書は当事者主義と職権主義のモデルを対比し、繰り返し登場する例(イングランド・ウェールズ、カナダ、米国、その他のコモン・ロー諸国)によって、法域ごとの違いを示している。
- 最新の内容と一次資料との接点。 第2版はAI、人種による格差、国際紛争を加え、付録では実際の控訴院判決を読者の前に示している。
短所
- 非常に短い。 約160ページのため、各テーマは深く検討されるというより紹介にとどまり、結びの章はわずか5ページほどである。
- 章構成のうえで被害者の比重が下がった。 初版にあった犯罪被害者の独立した章は、章題としては見当たらない。被害者の権利や修復的司法に関心のある読者は、第2版がどこまで扱っているかを確かめるか、量刑に関する本にあたるとよい。
- 法律の教科書ではない。 本書は制度とその政策上の問いを説明するもので、刑法、証拠法、刑事手続の規則を説明するものではない。法学生はそれらについて法解釈学の教科書が必要になる。
コースにおける位置づけ
本書は、このリストの犯罪学・刑事司法の本のなかで最も短く取り組みやすい入口であり、科目が始まる前の最初の一冊に適している。Tim Newburnの Criminology と、Steve Caseらによる The Oxford Textbook on Criminology は、犯罪の理論、測定、制度の諸機関を扱う本格的な教科書である。本書はそれらの刑事司法の章の予習として、また後で各段階を簡潔に復習するために使える。The Oxford Handbook of Criminology は理論、研究、政策について専門家が執筆した概観の章を集めたもので、本書で紹介されたテーマを深めたいときに参照する本である。
Stephen Eastonらの Sentencing and Punishment: The Quest for Justice は、刑事政策、量刑原則、被害者の権利、拘禁、社会復帰についてのより上級の研究で、第4章と第5章を詳しく展開し、この版が独立した章として扱わなくなった被害者の問題も扱っている。Richard Englishの Terrorism: How to Respond は、政治的暴力に対する国家の対応という専門的な領域を扱う本で、一般的な制度に慣れてから読むのがよい。
本書の使い方
本書は学生だけでなく一般読者に向けても書かれており、法律や犯罪学の予備知識を前提としない。犯罪学、法学、社会政策の1年生や、詳しく学ぶ前に刑事司法の仕組みを理解したい人に向いている。
実践的な進め方:
- 通読する。 各章は事件が制度を進む順序に沿っているので、順番に読むのが最も効果的で、2〜3回に分ければ読み終えられる。
- 第4章に集中する。 量刑は本書で最も長く、最も展開されたテーマである。刑罰の目的ごとに、それを支持する議論と反対する議論を書き留めること。これらは犯罪学や刑罰学の科目を通じて繰り返し現れる。
- 付録を能動的に使う。 解説を読む前に控訴院判決の抜粋を読み、裁判所はどうすべきだったか自分の考えを決めてから、著者の分析と比べること。
- 文献案内をたどる。 巻末の各章の参考文献と追加資料は、教科書や研究文献への橋渡しとなる。
本書の後は、理論と制度についてはNewburnやオックスフォードの教科書のような本格的な教科書へ、量刑と刑罰を深めるにはEastonらの本へ進むとよい。刑事司法政策は変化が速いので、課題で本書の例を使う際には、最新の統計と量刑ガイドラインを公式の情報源で確認すること。
