01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Fenton-Glynn, C. (2021). Children and the European Court of Human Rights. Oxford University Press.
章の要約
約430ページの研究書で、全12章の後に参考文献、判例一覧、国際文書一覧、索引が付く。出版社は、子どもに関する欧州人権裁判所の判例を包括的かつ詳細に概観した書であり、裁判所が「不吉で父権的な出発点」から、子どもの個人としての主体性を認めるようになるまでの展開をたどると説明している。各章は条文別ではなく主題別に編成されている。
第1章:Introduction
出発点を示す章。条約は子どもを念頭に起草されたものではないが、裁判所は子どもに関する相当量の判例を生み出してきた。10ページと短く、以降の章の枠組みを示す。
第2章:Freedom from Violence and Exploitation
最初の実質的な章で、子どもの身体的完全性の保護を扱う。出版社の紹介文は、身体的完全性の保護を本書の主題の一つに挙げている。
第3章:The Right to Respect for Private Life
私生活の尊重の権利に基づく子どもの主張を扱う。
第4章:Juvenile Justice
刑事手続における子どもに関する判例。約40ページあり、単一主題の扱いとしては長い部類に入る。
第5章:Children and the Immigration System
出入国管理の場面における子ども。出版社は、移民を、裁判所が子どもについて判例を発展させた分野の一つとして挙げている。
第6章:The Right to Education
教育に関する裁判所の判例。出版社は、宗教とともに、本書が扱う分野として挙げている。
第7章:Social and Economic Rights
市民的・政治的権利を中心とする条約が、子どもの社会的・経済的利益をどのように扱うか。
第8~9章:Family Formation and Parenthood; Private Law Child Disputes
家族法に最も近い2章。第8章は親子関係の帰属と家族の形成を扱う。出版社は親子関係を裁判所の影響が深い分野として挙げている。第9章は子どもをめぐる私法上の紛争を扱う。出版社は、子の奪取を裁判所の影響が深い家族法の分野の一つに挙げている。
第10~11章:Child Protection; Adoption
家族生活における公法的側面、すなわち子どもを保護するための国家の介入と養子縁組。出版社は、児童保護と養子縁組を裁判所の影響が大きい分野に挙げている。
第12章:Conclusions
出版社の紹介文が予告する、裁判所の成果と残る弱点についての評価で、各章の議論をまとめる。
主要概念
第1~7章:条約の主題ごとの子どもの権利
- 一般的な条約のもとでの子どもの権利:子どものために作られていない条約が子どもにどう適用されてきたか、という本書の出発点となる問い。
- 身体的完全性:第2章が扱う暴力と搾取からの自由。
- 少年司法と移民:別々の章で扱われる二つの判例分野。
- 教育と社会経済的権利:条約が明示的には扱っていないが、裁判所が取り上げてきた分野。
第8~11章:家族法の主題
- 親子関係の帰属:誰が子の法的な親となるか。第8章の主題。
- 子どもをめぐる私法上の紛争:私人間の紛争で、第9章の主題。出版社は子の奪取を扱う分野の一つに挙げている。
- 児童保護と養子縁組:国家による家族生活への介入。
- 子どもの主体性:出版社が述べる、裁判所が父権的な立場からより権利を重視する立場へ移ってきたという展開。
批判的分析
長所
- 主題別の構成:各章が少年司法、移民、養子縁組など子どもの法の一分野を取り上げる。読者は関連する章に直接進み、その分野に関する裁判所の判例がまとまっているのを見つけられる。
- 幅広い範囲:刑事司法、教育、移民から親子関係、養子縁組までを扱うため、さまざまな文脈で裁判所が子どもをどう扱っているかを比較できる。
- 発展を描く論旨:出版社によれば、本書は父権的な出発点から個人の主体性の承認へという裁判所の扱いの変化をたどり、残る弱点を批判する。読者は単なる判例の目録ではなく、検証すべき主張を得られる。
- 参照のための装置:参考文献、約20ページの判例一覧、国際文書一覧がある。
短所
- 教科書ではなく研究書:条約と裁判所の手続に関する知識を前提としており、いずれの入門書でもない。
- 判例を枠組みとする構成:裁判所の判断を軸に組み立てられているため、家族法や人権法の文脈をすでに知っている読者に最も役立つ。刊行後の判例には別の資料が必要である。
- 対象範囲:主題はストラスブール裁判所の判例であり、イングランド・ウェールズの国内家族法は本書の対象ではない。そのためには一般的な家族法の教科書が必要である。
コースにおける位置づけ
家族法の書物の中で、本書は一般的な教科書ではなく、一つの主題に絞った専門的な研究書である。Cretney and Probert の Family Law、Herring の Family Law、Bromley の Family Law はイングランド・ウェールズ法を成人の関係と子どもにわたって扱い、Herring の Family Law: A Very Short Introduction と Eekelaar の Family Law and Personal Life はより短く考察的である。Fenton-Glynn の本は、これらの一冊を読んだ後に、欧州人権法がそれらの書物で扱われる主題をどう形づくるかを見たいときに読む。
人権法のコースにおける条約の標準的な解説である Harris, O'Boyle and Warbrick の書物は条文ごとに権利を扱うが、本書は子どもを主題別に裁判所の判例を通じて追う点で補い合う。
本書の使い方
子どもの権利、家族法、欧州人権条約についてレポートや論文を書く大学院生、研究者、上級の学部生に向いている。家族法の履修と、条約、特に第8条についての一定の知識が前提とされている。
実践的な進め方は次のとおり。
- 最初に第1章と第12章(結論)を読み、論旨をつかむ。
- 家族法のコースの中核は第8~11章(親子関係、私法上の紛争、児童保護、養子縁組)。
- その他の章は主題に応じて読む。少年司法は第4章、移民は第5章、教育は第6章。
- 特定の判決がどの章で論じられているかは、判例一覧から探せる。
