01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Jansen, M. B. (2002). The Making of Modern Japan. Belknap Press of Harvard University Press.
章の要約
本書は、1600年から20世紀末までの日本を描いた単著の通史で、本文は約870ページ、20章からなり、文献案内、注、索引が続く。出版社は、徳川幕府による秩序の確立、19世紀の開港、第二次世界大戦の敗北という、激しい変化の三つの時期を軸にした構成だと説明している。その枠のなかで、社会史・思想史にも紙幅を割き、政治指導者だけでなく、作家、芸術家、思想家も取り上げている。
第1〜3章:Sekigahara; The Tokugawa State; Foreign Relations
本書は1600年の関ヶ原の戦いに始まり、徳川国家の構造、続いて幕府のもとでの対外関係へ進む。
第4〜7章:Status Groups; Urbanization and Communications; The Development of a Mass Culture; Education, Thought, and Religion
徳川社会をテーマ別に扱う4章。身分集団、都市とそれをつなぐ交通・通信、大衆文化の発展、そして教育・思想・宗教である。出版社の説明によれば、消費人口を抱える村落や城下町の出現と、武士的価値の文化への浸透が扱われる。
第8〜10章:Change, Protest, and Reform; The Opening to the World; The Tokugawa Fall
幕末の各章は、安定した構造から変化への圧力へと移る。改革と抗議、19世紀の外の世界との接触、そして幕府の終焉である。
第11〜14章:The Meiji Revolution; Building the Meiji State; Imperial Japan; Meiji Culture
明治の部分は、1868年の変革、新国家の建設、帝国としての日本、その時代の文化を追う。出版社は、近代国家の形成、西洋モデルの受容、貿易の拡大、産業化などを主題として挙げている。
第15〜18章:Japan between the Wars; Taisho Culture and Society; The China War; The Pacific War
20世紀の章は、戦間期とその社会・文化を扱い、続いて日中戦争と太平洋戦争を扱う。
第19〜20章:The Yoshida Years; Japan Since Independence
最後の2章は、吉田に代表される占領期から初期戦後の時期と、独立回復後の数十年を扱う。出版社はマッカーサー将軍による占領改革にも言及している。
主要概念
第1〜7章:徳川日本
- 徳川国家:関ヶ原の後に確立された幕府の秩序の体制。
- 身分集団:徳川社会の社会的区分。
- 大衆文化:都市で成長した商業的・民衆的な文化。
第8〜14章:徳川の終焉から明治国家へ
- 世界への開放:19世紀における鎖国状態の終わり。
- 明治維新と明治国家:幕府の交代と近代国家の建設。
第15〜20章:20世紀
- 戦間期と戦時の日本:戦間期、日中戦争、太平洋戦争。
- 戦後の枠組み:吉田の時代と独立後の日本。
批判的分析
長所
- 長い年代的射程。 20章が1600年から20世紀末まで一つの物語として続くため、近世の構造と後の変化との関係が見えやすい。出版社が引用する書評は、優雅で明晰であり、50年以上の日本研究の集大成だと評している。
- 社会史・文化史。 身分集団、都市化、大衆文化、教育と宗教、明治文化、大正の文化と社会といった章が政治叙述と並ぶ。書評は、作家、芸術家、思想家や個々の日本人の経験への目配りを挙げている。
- 解釈の均衡。 引用された書評は、日本人と西洋人の他の研究者の見解も取り入れていること、日本を孤立した存在ではなく外の世界との関係のなかに置いていることを指摘している。
- 読みやすさ。 書評は繰り返し、読みやすく概説科目の教科書に適していると述べている。
短所
- 長さ。 800ページを超えるため、一学期の授業には長く、通常は章を選んで読むことになる。
- 政治叙述が骨格。 主に年代順の叙述で構成されているので、一つの問いについて論点中心・テーマ別に論じた本を求める読者は他の文献が必要になる。
- 刊行時期。 初版は2000年(ペーパーバックは2002年)で、20世紀末以降の展開は含まれない。
コースにおける位置づけ
ジャンセンは、東アジア史のリストにおける日本を中心とした長編の通史である。チャールズ・ホルコムの『A History of East Asia』と、イブリーとウォルソールの『East Asia: A Cultural, Social, and Political History』は地域全体の一巻本の概説で、中国、朝鮮、ベトナムの文脈が必要な読者にはこちらが出発点として適している。ジョナサン・スペンスの『The Search for Modern China』とラナ・ミッターの『Modern China: A Very Short Introduction』は、同じ近代について中国側から比較できる自然な相手であり、F・W・モートの『Imperial China 900–1800』はそれより前の中国史を扱う。
日本を深く追うには地域概説のあとにジャンセンを読み、19世紀の世界に日本と中国がどう向き合ったかを比べるならスペンスと並行して読むとよい。
本書の使い方
近代日本史や東アジア史の授業を取る学部生と、詳しい通史を求める一般読者に向く。前提知識は多くなく、物語的な文体のため、東アジア史の入門はあれば役立つが必須ではない。
実際の読み方の例を挙げる。
- 中核: 徳川体制の確立のために第1〜3章、幕府の終焉と明治の変容のために第9〜13章、20世紀のために第15〜20章。
- 社会史・文化史: 第4〜7章と第14章、第16章は、社会史・文化史を重視する授業でまとめて読める。
- 任意: 安定した徳川秩序とその終わりをつなぐ第8章、およびレポートの題材探しのための巻末の文献案内。
- 併読: 時代の地図と年表で体制の移り変わりを確認し、各時代の短い一次史料を読んで叙述を補う。
