01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hornblower, S. (2011). The Greek World 479–323 BC (4th ed.). Routledge.
章の要約
第4版は全19章、432ページで、ペルシア戦争の終結からアレクサンドロス大王の死までを扱う。出版社の説明によれば、本書の編成原理は地域的多様性であり、アテナイやスパルタだけでなく、地中海世界やその外にまで広がるギリシア人共同体を追っている。以下は目次に沿った要約である。
第1章:Introduction
本書の導入であり、この時代へのアプローチと、出版社が文献・碑文・考古学的資料と述べる証拠の扱いを示す。
第2〜3章:The beginning of the Delian League; Empire
ペルシア戦争後に成立したアテナイ主導の同盟と、それが帝国へ発展する過程を扱う。前5世紀の政治史の骨格にあたる部分である。
第4〜8章:South Italy and Sicily; Kyrene and Egypt; The Persian Empire, especially Asia Minor; Argos; Macedon, Thessaly and Boiotia
地域別の概観が続く。最初の3章は西方、北アフリカとエジプト、ペルシア支配下の小アジアにおけるギリシア人を、後の2章はアルゴスと北部・中部ギリシアを扱う。このまとまりは本書の地域的多様性というテーマを担い、アテナイ中心の通史との主な違いになっている。
第9〜14章:The run-up to the war; Corinth; Sparta; Athens; The Peloponnesian War; The effects of the Peloponnesian War
本書はペロポネソス戦争に入る前に、まずその原因、次いでコリントス、スパルタ、アテナイの三大国を検討し、そのうえで戦争そのものと、別章でその帰結を叙述する。
第15〜17章:The Corinthian War; The King's Peace to Leuktra; the Second Athenian Confederacy; Leuktra to Mantineia and the Revolt of the Satraps
ペロポネソス戦争後からマンティネイアの戦いまでの紛争と講和を扱い、大王の和約、第二次アテナイ同盟、レウクトラ、サトラップの反乱を含む。
第18〜19章:Philip; Alexander
最後の2章はフィリッポスとアレクサンドロスにあてられ、前323年で叙述を終える。
主要概念
第1〜3章:導入から帝国まで
- デロス同盟:ペルシア戦争後にアテナイが率いたギリシア諸国の同盟。本書はこれが帝国化する局面まで追う。
- 証拠:この時代を再構成するための文献、碑文、考古学的資料と、その利用上の問題。
第4〜8章:地域別の章
- 地域的多様性:ギリシア史は地中海各地で異なる展開をしたという、本書の編成テーマ。
- ペルシア帝国:特に小アジアで、ギリシア世界を取り巻く環境の一部として扱われる。
第9〜14章:ペロポネソス戦争
- 戦争の原因と帰結:それぞれ独立した章とされ、その間に主要国ごとの章が置かれる。
第15〜19章:前4世紀
- 大王の和約と第二次アテナイ同盟:前4世紀初頭の国家間の取り決め。
- サトラップの反乱:ギリシア情勢に影響したペルシア属州の反乱。
- マケドニアの拡大:時代の頂点としてのフィリッポスとアレクサンドロスの事績。
批判的分析
長所
- 地理的な広がり。 目次では、西方ギリシア人、キュレネとエジプト、小アジア、アルゴス、マケドニア、テッサリア、ボイオティアがそれぞれ独立した章を持つ。第4版では島嶼に関する新しい小章が加わり、ギリシア世界各地のポリスに関する近年の研究も取り入れられている。
- 証拠への注意。 出版社は文献・碑文・考古学的証拠とその利用の難しさを強調している。第4版では前4世紀の碑文の引用が改められ、文献目録も更新された。
- 標準的教科書としての評価。 『Bryn Mawr Classical Review』の第4版書評は、本書をギリシア史の主要な教科書の一つとしている。第3版については『Times Literary Supplement』と『Scholia Reviews』が、史料の扱いと独自性を称賛している。
- 明快な構成。 地域別の概観、大戦争、前4世紀とマケドニア王という流れで、19章が見通しよく並んでいる。
短所
- 最初の入門書ではない。 証拠と学説に基づく詳細な歴史であり、ギリシア史の予備知識がない読者には、まず短い概説書のほうが取り組みやすい。
- 戦争の叙述が全体の中心ではない。 ペロポネソス戦争に至るまでに複数の章が地域に割かれているため、連続した政治史を求める読者は章の順序を意識して読む必要がある。
- 時代の限定。 前479年に始まり前323年で終わるため、アルカイック期の背景やヘレニズム期の展開は範囲外である。
コースにおける位置づけ
ホーンブロワーは、古代史のリストの中で詳細な時代史にあたる。ポール・カートレッジの『Ancient Greece: A Very Short Introduction』は、11の都市を通じてギリシアを短い章で描き、ホーンブロワーの前の最初の見取り図として有用である。ロビン・レイン・フォックスの『The Classical World』はギリシアとローマの一巻本の通史で、より広い枠組みや、分析の前に物語を読みたい読者に向く。マルク・ファン・デ・ミエロープの古代近東史はマケドニア征服までを扱い、ホーンブロワーのペルシアやアレクサンドロスの章の東方的背景を補う。
マーティン・グッドマンの『The Roman World 44 BC–AD 180』とリウィウスの『The Early History of Rome』はコースのローマ側に属し、本書の代わりにはならない。両世界がどのように研究され、どの史料が残るかを比べるために、並行して読むのが適している。
本書の使い方
本書は、古典期ギリシア史の授業を取る学部生や、この時代の概略をすでに知っている読者に向く。ペルシア戦争やペロポネソス戦争になじみがなければ、先に短い概説書を読むとよい。
実際の読み方の例を挙げる。
- 中核: 枠組みとアテナイ帝国のために第1〜3章、ペロポネソス戦争への道、主要国、戦争の帰結のために第9〜14章、アレクサンドロスに至る前4世紀のために第15〜19章。
- 関心に応じて: 地域別概観の第4〜8章は選んで読んでよい。ギリシア世界全体、ペルシア、マケドニアを重視する授業で特に重要になる。
- 併読: トゥキュディデス、クセノポン、碑文の翻訳など、本書が論じる古代史料を併せて読むと、各章の証拠の検討を原典で確かめられる。レポートの題材は更新された文献目録から探すとよい。
