01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Persson, K. G., Sharp, P., & Lampe, M. (2025). An Economic History of Europe: Knowledge, Institutions and Welfare, Prehistory to the Present (3rd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
第3版は、序論、11の章、結論とエピローグを合わせた章、短い付録、用語集からなり、本文は約290ページである(出版社の表示は、前付けと後付けを含めて全334ページ)。ほとんどの章は約20~26ページである。出版社によれば、この版は範囲を先史時代と古典古代の経済にまで広げ、福祉、持続可能性、効率への焦点を加え、各章に箇条書きの要約を加えている。以下の説明は、章題と、出版社による本書の主題の紹介に拠っている。
序論と第1~2章:ヨーロッパの形成/無名から経済の回復へ(The Making of Europe; Europe from Obscurity to Economic Recovery)
出版社は、本書を、より広い世界的な文脈の中に置かれた、汎ヨーロッパ的な経済発展の歴史として紹介している。第1章「ヨーロッパの形成」(The Making of Europe、38ページまで)と第2章「無名から経済の回復へ」(Europe from Obscurity to Economic Recovery、39~63ページ)が叙述の幕を開ける。題は、ヨーロッパがどのように形づくられ、その経済が無名の状態からどのように回復したかを指している。出版社は、先史時代と古典古代の経済をこの版の新しい内容に挙げており、前の版の副題は600年から始まっていた。
第3~4章:人口と資源の制約/前工業化期における経済成長の性質と程度(Population and Resource Constraints; The Nature and Extent of Economic Growth in the Pre-industrial Epoch)
第3章(64~84ページ)と第4章(85~107ページ)は、人口と資源が前工業化期の経済に課した限界と、工業化以前の成長の性質と程度を扱う。続く制度と知識についての問いを用意する章である。
第5~6章:制度と効率/知識、技術移転、収斂(Institutions and Efficiency; Knowledge, Technology Transfer and Convergence)
第5章(108~131ページ)と第6章(132~154ページ)は、本書の副題にある3つの語のうち2つを取り上げる。すなわち、制度と経済の効率、そして知識と技術、およびその地域間の移転と収斂である。前の版の出版社の紹介も、制度と知識にもとづく技術との相互作用を同じように挙げていた。
第7~9章:貨幣、信用、銀行/貿易とグローバル化/生産要素市場とグローバル化(Money, Credit and Banking; Trade and Globalization; Factor Markets and Globalization)
第7章(155~177ページ)は金融の仕組みを扱う。第8章(178~203ページ)と第9章(204~229ページ)はグローバル化についての2つの章で、前者は貿易、後者は生産要素市場を扱う。両者は、グローバル化と産業革命を含む出版社の主要テーマの一覧に対応している。
第10~11章:政府は何をする(べき)か/個人、世帯、国家の間の不平等(What Governments (Should) Do; Inequalities between Individuals, Households and Nations)
第10章(230~253ページ)は政府の役割を扱い、経済政策が福祉に及ぼす広い影響を重視する出版社の新しい強調と合致している。第11章(254~274ページ)は、個人、世帯、国家というレベルでの不平等を扱う。
結論とエピローグ、付録「歴史データの選び方と使い方」(Conclusion and Epilogue; Appendix: Choosing and Using Historical Data)
この版で新しい、結論とエピローグを合わせた章(約13ページ)は、歴史的な進歩と将来の課題を扱う。歴史データの選び方と使い方についての2ページの付録と、用語集が続く。
主要概念
- 制度と効率:第5章の題であり、副題の3つの語の一つ。
- 知識と技術移転:第6章の題で、経済の収斂とともに扱われる。
- 福祉:新しい副題の3つ目の語で、出版社によれば、社会の幸福についてのより広い理解を反映している。
- 前工業化期の成長と資源の制約:第3章と第4章の主題。
- グローバル化と生産要素市場:第8章と第9章で扱われ、第7章の貨幣、信用、銀行と並ぶ。
- 不平等:第11章の主題で、個人、世帯、国家のレベルにわたる。
- 持続可能性:出版社が、経済史と現代の地球規模の課題とを結びつけて挙げている語。
批判的分析
長所
- 短い本の中の広い時間幅。 第3版は先史時代から現在までを本文約290ページで扱い、出版社は世界的な文脈の中の汎ヨーロッパ的な視点を強調している。
- 経済学の取り付きやすい使い方。 出版社によれば、年代順の構成、明快な説明、ケーススタディ、複雑な数学の最小限の使用により、学生が経済理論を歴史の事例に応用できる。
- 学習の補助。 各章の新しい箇条書きの要約、用語集、歴史データの選び方と使い方についての付録が挙げられている。
- 今日的な主題。 新版は歴史的発展を福祉、持続可能性、効率と結びつけ、ユーロ危機に至る研究を取り入れている。
- 推薦の言葉。 出版社は Kevin O'Rourke、Anne McCants、Jane Humphries、Kerstin Enflo の言葉を引用し、本書を代表的で読みやすく構成のよいテキストと評しているが、これらは出版社が選んだ推薦文であり、学術誌の書評ではない。
短所
- 意図的に簡潔。 各章が約20~26ページなので、銀行、国家政策、不平等といった題材は簡潔にしか扱われず、いずれかを深く知るには専門書が必要である。
- 経済学の枠組み。 本書は歴史に経済学の考え方を適用するため、経済学の背景がない読者は、用語集を使って読み進める必要があるかもしれない。
- ごく新しい版。 2025年10月に刊行され、確認した時点では、第3版についての独立した批評的書評は見つからなかった。
- 主題別の構成。 章題から、本書が出来事の物語ではなく主題別に組まれていることがわかる。ヨーロッパの政治史や社会史を求める読者には、別の本が必要である。
コースにおける位置づけ
Persson、Sharp、Lampe の本は、この経済史・社会史のコースにおける汎ヨーロッパ的な経済概説を担う。Allen の Global Economic History: A Very Short Introduction は、1500年以後に世界のある地域が豊かになったのはなぜかを短く説明する本で、予備的な読書として、あるいは世界的な枠組みとの比較に使える。Pomeranz の The Great Divergence は、なぜ中国でなく西ヨーロッパが最初に工業化したのかについての比較論で、第4~6章の発展的な読書に向く。Stearns の The Industrial Revolution in World History は、工業化についての簡潔な世界史である。
Thompson の The Making of the English Working Class は、1780年頃から1832年までのイングランドにおける工業化の社会的経験を扱い、本書の経済的な叙述を補う。Burke の A Social History of the Media は、通信技術についての関連するが別個の歴史である。
本書の使い方
入門的な経済学の授業を受けていると役に立つが、本書は使う概念を説明しており、単純な量的推論しか必要としない。経済学や歴史学の学部生、ヨーロッパ経済史や長期の成長を扱う授業の履修者に向く。
進め方としては、枠組みと長い年代については序論と第1~2章、成長、制度、知識については第3~6章、続いて金融とグローバル化の第7~9章を読む。第10~11章と結論とエピローグは、政策、福祉、不平等を扱う授業に向く。読む前と読んだ後に章の要約を使い、用語は用語集で確認し、歴史データを扱うときは付録を参照する。さらに深めるには、コースのリストにある専門書を章と組み合わせるとよい。
