01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
de Haas, H., Castles, S., & Miller, M. J. (2020). The Age of Migration: International Population Movements in the Modern World (6th ed.). Red Globe Press.
章の要約
第6版は15章からなり、約440ページで、そのあとに用語集、参考文献、索引が続く。序章は章を3つのグループに分けている。第2〜5章は理論的・歴史的な背景、第6〜9章は1945年以降の世界の各地域の概観、第10〜14章は主要な主題と課題の検討で、第15章は結論である。
第1章:序章
冒頭の章は、移民が出身社会と受け入れ社会の両方に引き起こす、期待と不安の入り混じった思いから、そして移民の政治的な重要性の高まりから始まる。国際移民の数は絶対数では増えたものの、世界人口の約3パーセントで安定していること、大多数の人は生まれた場所にとどまっていること、国内移動のほうが国際移動より大きいことが論じられる。戦後の6つの傾向として、移民のグローバル化、主な流れの方向の変化、新しい移民先、移民の転換の増加、労働移民の女性化、移民の政治化と安全保障化が挙げられる。著者は6つの主な論点を示しており、受け入れ社会の労働需要が国際移民の主な推進力であること、移民の過程は始まると独自の勢いをもつこと、考えの足りない政策がしばしば逆効果になることなどが含まれる。
第2章:移民のカテゴリー
研究者、メディア、政治家が移民を描くために用いるカテゴリーを検討し、偏ったカテゴリーを無批判に採用することに警告を発する。出版社はこれをこの版の新しい章として挙げており、「気候難民」というカテゴリーの議論を含む。
第3章:移民の理論
移民の原因とその持続を説明する理論を示し、複数の理論の洞察を合わせることでより豊かな像が得られると論じる。貧しい国での開発がなぜしばしば移民を増やすのか、失業率が高いときになぜ低技能の移民が続くのか、なぜ移民がネットワークやフィードバックを通じて独自の勢いを得るのかといった謎に取り組む。
第4章:移民、エスニシティ、アイデンティティ
受け入れ国で、エスニックおよび文化的な多様性から生じる社会的・政治的な問題を扱う。同化から、人種主義、隔離、少数派の形成、多文化主義に至る包摂の様式を比較し、経験が階級、ジェンダー、国家のイデオロギーによってどう左右されるかを示す。
第5章:1945年以前の国際移民
近世から1945年までを長期的に見渡し、国家が戦争、植民地化、奴隷制、労働者の募集を通じて果たした役割と、植民地支配や帝国による介入が生んだ持続的なつながりを強調する。
第6–9章:1945年以降のヨーロッパにおける移民/アメリカ大陸の移民/アジア太平洋地域の移民/アフリカと中東の移民
地域の章は同じ時期区分を用いる。1945〜1973年、1973年の石油ショックから1989年、1989年から大不況まで、そして2008年以降である。第6章は旧ソ連とその後継国を含み、この版ではその部分が拡充された。著者は地域の章を「避けがたく大まかなもの」と呼び、全般的な政治経済の動向が地域ごとに異なる移民の結果をどう生むかを示すことを目的としている。
第10章:国家、政治、移民
移民を近代国家の形成の中心にあるものとし、同時に国民的アイデンティティと主権への挑戦であると捉え、そのうえで国内および国際政治、国際ガバナンスを改善する試み、難民の移動へと進む。
第11章:移民政策の発展と有効性
1945年以降の政策がどう発展してきたかをたどり、政府が入国・統合・帰還に用いる手段の「移民政策のツールボックス」を整理し、その有効性と意図せざる影響を検討する。この版で新しい章である。
第12章:労働力の中の移民とマイノリティ
労働市場における移民の位置と、産業社会・脱産業社会の経済における移民労働への需要を分析する。募集や、下請け、一時的雇用、非公式の仕事における移民の役割も含まれる。
第13章:新しいエスニック・マイノリティと社会
法的地位、社会政策、エスニックな共同体、人種主義、市民権、国民的アイデンティティを通じて、移民の社会的地位を考察し、なぜある移民は周辺化された少数派を生み、別の移民は社会的上昇を果たすのかを問う。
第14章:出身社会における移民と開発
移出が出身国の開発と社会変容にどう影響するかを論じ、頭脳流出と頭脳獲得をめぐる議論、そして送金を取り上げる。この版で新しい章である。
第15章:結論
論旨をまとめ、現在の動向を振り返り、移民の将来と、国際協力を改善するうえでの障害を考える。
主要概念
第1–5章:基礎
- 移民の転換:ある国が移民の送り出し国から受け入れ国へ、あるいはその逆に変わること。
- 移民のカテゴリー:移民に付けられるラベルで、その使い方が分析や議論を歪めることがある。
- 移民ネットワークとフィードバック:移民がいったん始まると独自の勢いをもつようになる過程。
- 包摂:移民とその子孫が受け入れ社会の一部になる多様なあり方で、同化から多文化主義、あるいは排除までを含む。
第6–11章:地域、国家、政策
- 戦後の移民の時期区分:すべての地域の章で用いられる4つの時期。
- 安全保障化:移民を安全やアイデンティティへの脅威として枠づけること。
- 移民政策のツールボックス:政府が入国、統合、帰還を管理するために使う手段。
第12–15章:帰結
- 移民労働への構造的な需要:経済が低技能と高技能の両方で移民に依存しているという主張。
- 頭脳流出と頭脳獲得:移出が出身国にとって有益か有害かをめぐる対立する見方。
- 送金:移民が故郷に送るお金で、生活水準を高め、地元の投資を支えることがある。
批判的分析
長所
- 真に学際的な総合。 著者は人類学、歴史学、社会学、地理学、政治学、経済学の成果を取り入れ、分野ごとに補い合う見方が得られると述べている。出版社が再掲する評者もこの幅の広さを評価している。『Ethnic and Racial Studies』(第4版について)は、本書を学部生にとって「特に価値がある」とし、大学院生の入門書としても役立つとした。
- 明示された主張。 目的と主な論点が冒頭で示されているので、読者は後の各章をそれに照らして検討できる。
- 比較しやすい地域の章。 ヨーロッパ、アメリカ大陸、アジア太平洋、アフリカと中東のすべてに同じ4つの時期区分が適用されるので、地域どうしを比べやすい。
- 学習への支援。 出版社は、囲み記事の事例、表・図・地図、各章末の「さらなる読書のためのガイド」、本文中で強調される重要語の用語集、追加の事例・フラッシュカード・ウェブリンクを備えた付属ウェブサイトを挙げている。出版社のページに再掲された『Choice』の書評は、本書をあらゆるレベルの読者に薦めている。
- 刊行時点で新しい。 この版は、カテゴリー、政策、出身国についての章を加え、旧ソ連と東欧の扱いを広げ、反移民の政治や大規模な難民の移動に関する新しいデータも盛り込んでいる。
短所
- 深さより広さ。 著者は地域の章を「避けがたく大まかなもの」と呼んでいるので、特定の国や地域を研究する人には専門的な資料が必要になる。
- 著者が立場をとっている。 序章は、労働需要が移民の主な推進力であり、移民は構造的な社会経済問題の原因でも万能薬でもないと述べている。読者はこれらを検証すべき主張として扱い、他の学派の研究と照らし合わせるべきである。
- 国際移民に焦点がある。 国内移動は関連する箇所でしか現れないが、序章は国内移動のほうがはるかに大きいと述べている。
- データの古さ。 見本の章の数値は2017年と2018年までのもので、最新の数字は新しい資料から得る必要がある。
コースにおける位置づけ
このコースの書目の中で、The Age of Migration は本格的な移民の教科書である。Weeks の Population は、移民を出生、死亡、都市化についてのより広い叙述の中に位置づけ、1章を割いているので、2冊を組み合わせると効果的である。Khalid Koser の International Migration: A Very Short Introduction は、簡潔でバランスのとれた概観であり、最初の1冊として適している。
Massey らの Worlds in Motion は国際移民の理論を総合したもので、その点ではより深い。序章の「さらなる読書のためのガイド」自体が、理論と動向の包括的な概観としてこれを推薦している。K. Bruce Newbold の Population Geography: Tools and Issues は、移民を測定手段やその他の人口の論点の中の1つの主題として扱う。
本書の使い方
前提知識は示されておらず、著者は、さまざまな学術的・職業的背景をもつ読者に理解しやすい形で、多くの分野の知見を提示することを目指していると述べている。
- 中核: まず第1〜3章。以後で使う語彙と理論が得られる。続いて、エスニシティとアイデンティティを扱う第4章。
- 地域の選択: 授業に関係する地域の章(第6〜9章)を読み、歴史的な背景のために第5章を読む。
- 政策と政治: 国家、難民、政策手段を扱う第10・11章、続いて労働、マイノリティ、開発を扱う第12〜14章。
- 短い道筋: 第1、2、3、11、15章で、枠組み、概念、政策論争、結論が得られる。
- 付録的な資料を使う: 各章末の読書ガイド、付属ウェブサイトの事例とフラッシュカード、そして用語が繰り返し出てきたときの用語集。
