01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Harvey, D. (2009). Social Justice and the City (rev. ed.). University of Georgia Press. (Originally published 1973.)
章の要約
本書は1973年に初めて刊行された。ジョージア大学出版局版(シリーズ「Geographies of Justice and Social Transformation」、約370ページ)は、それを再録し、巻末に後の論考「都市への権利」(2008年)を加えている。本文は序論と三つの部「リベラルな定式化」「社会主義的な定式化」「総合」に分かれる。出版社は、その議論を、都市問題に対するリベラルで技術官僚的な扱いから、ハーヴェイが「革命的地理学」と呼ぶものへの転換として説明している。都市計画と政策の中心的な問題(雇用と住宅の立地、ゾーニング、輸送費、貧困の集中)が、それぞれ社会的正義と空間との関係という観点から検討される。
序論
短い導入部(この版では9–19ページ)。出版社による本書全体の紹介は、都市の貧困とそれに伴う弊害を前にして、地理学が客観的でいられるはずはないというハーヴェイの立場を打ち出す本だとしている。
第I部 リベラルな定式化:第1–3章
第1章「社会過程と空間形態 1:都市計画の概念的問題」と第2章「社会過程と空間形態 2:都市システムにおける実質所得の再分配」は対をなす。前者は社会過程を空間形態に結びつける際の都市計画の概念上の問題を、後者は都市システムのなかでの実質所得の再分配を扱う。第3章「社会的正義と空間システム」は、社会的正義の概念を空間的組織に適用する。三章あわせて約100ページで、リベラルな分析の枠内で議論が進む。
第II部 社会主義的な定式化:第4–6章
第4章「地理学における革命的理論と反革命的理論、およびゲットー形成の問題」は、地理学における革命的理論と反革命的理論を取り上げ、ゲットー形成の問題を主題とする。第5章「使用価値、交換価値、都市土地利用の理論」は、使用価値と交換価値という経済学的範疇に向かい、それを都市の土地利用の理論に適用する。第6章「アーバニズムと都市――解釈的試論」は最も長い章で、約90ページにわたるアーバニズムについての解釈的な論考である。
第III部 総合:第7章と追加の論考
第7章「結論と考察」は議論をまとめ、それまでの章を振り返る。追加された論考「都市への権利」(2008年、315–332ページ)は、この版に加えられたハーヴェイの後年の論考である。そのあとに文献目録と索引が続く。
主要概念
第I部:リベラルな定式化
- 社会過程と空間形態:社会の動き方と都市の物理的・空間的配置とを結びつける問題。
- 実質所得の再分配:都市システムが集団間で実質所得をどう移動させるか。
- 社会的正義と空間システム:正義を、人についてだけでなく空間についての問いとして扱うこと。
第II–III部:社会主義的な定式化と総合
- 革命的理論と反革命的理論:第4章の題名にある、既存の状況に挑戦する、あるいは挑戦しない地理学的理論を指す語。
- 使用価値と交換価値:マルクスの範疇を土地とその利用に適用したもの。
- アーバニズム:第6章の長い解釈的論考の主題。
- 都市への権利:追加された2008年の論考の題名にある概念。
批判的分析
長所
- 議論が構成に表れていること。 三つの部は、ハーヴェイがまずリベラルな方法を試し、次にマルクス主義的な方法に向かい、最後に両者を総合する過程を示す。出版社が引く『Ethics』誌の評者は、論考が理論的転換を地図のように示し、包括的な見方を求めている点を評価している。
- 具体的な都市問題を出発点にしていること。 雇用と住宅の立地、ゾーニング、輸送費、貧困が、抽象的な議論に具体的な素材を与えており、それぞれが正義という観点から扱われる。
- 著者自身の後年の論考。 追加された2008年の論考「都市への権利」が、本書を1973年よりも先まで延ばしている。
- 同時代の受容が記録されていること。 出版社は、『Geographical Review』、『Annals of the Association of American Geographers』、『Urban Studies』、『Times Literary Supplement』などの書評を掲載しており、読者はこの議論がどう受け止められたかを知ることができる。
短所
- 1973年の文章であること。 主要な本文は1973年のもので、後年の資料は2008年の論考だけである。最近の都市研究には別の本が必要になる。
- 要求が高く、立場が明確であること。 マルクス主義的な定式化が議論の中心にある。出版社が引く『Times Literary Supplement』の評者は、著者の同僚の一部には理論的マルクス主義の分量が薄められていなさすぎると思われるかもしれない、と予想し、『Annals』のリチャード・モリルは、説得力のある考えとない考えの両方を見いだした。
- 章の長さが不均等であること。 第6章は約90ページ、第2章は約46ページ、第3章は約23ページである。中盤が長いことを覚悟しておくとよい。
- 経済学の語彙を前提とすること。 実質所得、使用価値、交換価値が章題に現れる。これらに不慣れな読者は、経済学またはマルクスの短い入門書を併せて読む必要がある。
コースにおける位置づけ
このコースの読書リストのなかで、本書は入門書ではなく古典的な理論書である。レイサムらの『Key Concepts in Urban Geography』とアーチャーの『The City: The Basics』は簡潔な概説を与え、ホール&バレットの『Urban Geography』とパチオーネの『Urban Geography: A Global Perspective』は体系的な教科書である。まずこれらのどれかを読むと、ハーヴェイの議論を置く分野の見取り図が手に入る。
レヴィらの『Contemporary Urban Planning』は、アメリカを中心とした都市計画の実務への入門書であり、ハーヴェイの第I部は計画の前提への批判として、これと対比して読める。ハーヴェイは、教科書の都市理論の章の相棒としてよい。概説は教科書で読み、その概説が要約している議論はハーヴェイで読む。
本書の使い方
本書は、地理学、都市研究、計画学などの社会科学の上級学部生や大学院生で、都市地理学または都市研究の科目を履修し、地代や市場といった概念にある程度なじんでいる人に向いている。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 序論、第3章(社会的正義を直接の主題とする)、第6章、第7章。
- あわせて価値があるもの: ハーヴェイが出発点とするリベラルな議論を知るには第1–2章、マルクス主義理論への移行を知るには第4–5章。
- 最後に: 同じ主題の短い後年の再論として、「都市への権利」。
出版社が載せている書評を章とあわせて読み、この本がどこで異論を受けたかを確かめるとよい。また、住宅政策または交通政策について、リベラルな定式化と社会主義的な定式化が同じ問いにどう答えるかを、一ページにまとめてみるとよい。
