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Physical Hydrology(物理水文学) cover

地理学

地理学

Physical Hydrology(物理水文学)

S. Lawrence Dingman

英語原題: Physical Hydrology

水文学を、水循環の陸域部分を扱う地球科学として位置づけた定量的な教科書です。降水、蒸発散、積雪、浸透、地下水、流出の背後にある物理原理を展開し、水収支とエネルギー収支をどのように測定・モデル化し、流域に適用するかを示します。

前提知識: 微積分、物理学入門、統計学の基礎知識を前提とします。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
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01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Dingman, S. L. (2015). Physical Hydrology (3rd ed.). Waveland Press.

章の要約

本書は約640ページで、三部構成をとる。導入(第1–2章)、大気と地表面のあいだの水とエネルギーの交換(第3–6章)、陸上および地中での水の移動(第7–10章)である。そのあとに七つの付録が続く。出版社の説明では、全体を貫く主題は、水文学の基本概念、地表面と大気のあいだの水とエネルギーの交換、水文循環の陸上の局面であり、それぞれの分析手法は、その前提と限界とともに示される。

第1章:水文学――基本概念と課題

冒頭の章は、水文学の範囲と本書の方法を定める。節は、物理量と法則、次元と単位、水の性質、水文システムと保存式、流域と地域の水収支、水文変数の特殊な性質、水文学的貯留と不確実性にわたる。章の終わりでは、これらの考え方を流域の機能のモデル化に応用し、水文学の将来を論じる。

第2章:地球規模の文脈――気候、水文、クリティカルゾーン

主題を地球規模の文脈に置く短い章である。地球気候の基本的な側面、全球の水文循環、そして水文学とクリティカルゾーンとの関係を扱う。

第3章:原理と過程

第II部の最初の章で、地表面と大気の交換に必要な物理を整理する。圧力・温度・密度の関係、水蒸気、蒸発の過程、運動量・質量・エネルギーの乱流輸送が扱われる。

第4–5章:降水;積雪と融雪

第4章は降水を、気象学、測定、点観測から面的な降水量を推定する方法、降水の気候学を通して扱う。第5章は積雪に独立した章を与え、その水文学的重要性、物質としての特性、測定と分布、融雪の過程、融雪流出の生成、融雪のモデル化を論じる。

第6章:蒸発散

蒸発と熱交換の過程から出発して蒸発散過程の分類に進み、自由水面・湖面の蒸発、裸地面の蒸発、蒸散、遮断による損失を扱う。章末には、可能蒸発散と基準作物蒸発散、そして実蒸発散が置かれている。

第7–8章:地下流動の原理;浸透と土壌中の水分移動

第III部は地表の下から始まる。第7章は多孔質媒体の物質特性、貯留、飽和流と不飽和流の基本原理を扱う。第8章はそれを土壌に適用し、土壌水の状態、浸透の過程とその測定、点および面での浸透の定量的モデル化、土壌水の再分布を論じる。

第9–10章:水文循環における地下水;流出生成と河川流量

第9章は、帯水層と難透水層、地域規模の地下水流動、地下水と地表水の関係、地域水収支における地下水の構成要素、地下水開発の影響を扱う。第10章は水を河川まで追う。流域と河道網、河川の応答、流出源の特定、降雨イベント時の流出生成過程、河道過程、降雨流出モデル化である。

付録A–G

付録は、測定精度・有効数字・単位と式の換算、物質としての水、水文学に役立つ統計の概念、日々の晴天時入射日射量の推定、短期調査のための流量観測法、水文シミュレーションモデル、科学的水文学の発展を扱う。

主要概念

第1–2章:基礎

  • 保存式と水収支:水文システムは、流域や地域に適用される質量保存によって記述される。
  • 水文学的貯留と不確実性:水の貯留と水文推定の不確実性は、本書では主題の基本的な特徴として扱われる。
  • クリティカルゾーン:水文、気候、生態系が相互に作用する地表近くの層。

第3–6章:地表面と大気の交換

  • 乱流輸送:蒸発を駆動する運動量・質量・エネルギーの移動。
  • 面的推定:点の雨量計測から、地域全体の降水量を導くこと。
  • 融雪:積雪を流出に変える過程とモデル。
  • 可能蒸発散、基準作物蒸発散、実蒸発散:蒸発散を推定する段階的な水準。

第7–10章:陸上と地中の水

  • 飽和流と不飽和流:多孔質媒体中での水の移動の二つの様式。
  • 浸透:水が土壌に入ること。点でも面でもモデル化される。
  • 地域の地下水流動と地下水収支:より広い水収支の一部として考えた帯水層。
  • 流出生成:降雨や融雪水が河川流量となる過程と、それを表すモデル。

批判的分析

長所

  • 明快な三部構成。 章は水の動きに沿って並ぶ。地球規模の文脈、大気との交換、地表と地下での移動の順である。読者は、各章が全体の循環のどこに位置するかを見通せる。
  • 前提と限界の明示。 出版社は、著者が各分析手法の背後にある前提を説明し、その限界を明らかにしていることを強調する。式を実際に使う学生には有益である。
  • 変化への目配り。 出版社は、気候と水文の量に関する地球規模の変化の記録された傾向を検討している点を特色に挙げており、物理的原理が気候や土地利用の問題に結びつけられている。
  • 例題と実践的な素材。 出版社が引く評者は、例と計算を示したコラムを特に挙げている。出版社はさらに、インターネットで得られるデータセットを用いた追加演習と、ダウンロード可能なExcelのスプレッドシートも挙げている。
  • 有用な付録。 測定と単位、統計、日射量の推定、流量観測、シミュレーションモデルが付録にまとめられているため、本文は物理に集中でき、最後の科学的水文学の発展に関する付録が背景を補う。

短所

  • 分量と密度。 約640ページあり、入門の一コースで扱える範囲を超えるうえ、全体が定量的である。授業でも独学でも、章を選ぶ必要がある。
  • 陸上の局面のみ。 範囲は水文循環の陸上の局面である。章題からは、水質や水資源管理を独立して扱う部分は見当たらないため、それらの主題には別の本が必要である。
  • 出版社が前提知識を示していないこと。 出版社のページには必要な予備知識の記載がない。定量的な扱いからは、微積分、入門物理、基礎統計が想定されるため、これらを欠く読者は初めの章を難しく感じるだろう。

コースにおける位置づけ

このコースの読書リストのなかで、本書は水文学の詳細で定量的な扱いにあたる。ヘンドリクスの『Introduction to Physical Hydrology』は、地理学と地球科学の学生向けのコンパクトな入門書で、大気中の水、地下水、土壌水、地表水を順に、例題を交えて扱う。最初に読む本として適切であり、導出、測定法、モデル化に進むときにディングマンを手に取るとよい。

地形学の本は、水が形づくる地形を扱う。ハゲットの『Fundamentals of Geomorphology』とビアマン&モンゴメリーの『Key Concepts in Geomorphology』は幅広い入門書、グーディー&ヴァイルズの『Landscapes and Geomorphology: A Very Short Introduction』は短い概観である。アンダーソン&アンダーソンの『Geomorphology: The Mechanics and Chemistry of Landscapes』は、保存則から景観過程を組み立てるという点で方法がもっとも近い。ディングマンの第9–10章の地下水と河川流量は、これらの本の河川の章と自然に組み合わせられる。

本書の使い方

本書は、定量的な水文学の基礎が必要な、地理学、地球科学、工学の上級学部生・大学院生、および実務者に向いている。微積分、入門物理、いくらかの統計が適切な準備である。

一学期の授業での進め方の例を示す。

  • 中核: 第1章と、第2章のうち水文循環にあたる節、続いて第4、6、8、10章。これらを通して、降水から河川流量までの水の道筋をたどれる。
  • 必要に応じて追加: 蒸発の物理には第3章、積雪の卓越する地域には第5章、第8–9章の前には第7章、地下水には第9章。
  • 参考: 付録。とくに、統計の付録C、流量観測の付録E、シミュレーションモデルの付録Fを、課題の必要に応じて参照する。

演習に取り組む前に、例題のコラムを解いてみること。スプレッドシートとデータセットを使う演習で、実際のデータを扱う練習ができる。この分野が初めての読者は、先にヘンドリクスを読み、その後章ごとにディングマンに戻ってもよい。