01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Patrich, J. (2023). Physical Geography (Version 2; T. Radtke, Ed.). College of the Canyons. Free official edition: https://drive.google.com/drive/folders/1oTVcpLRpb9YYHCxMp_UdzFHOxTL-Pj2G
章の要約
本書は約300ページのオープン教育リソース(OER)で、カリフォルニア州のコミュニティカレッジであるカレッジ・オブ・ザ・キャニオンズの自然地理学の授業のために、Jeremy Patrichが執筆・編纂した。特に断りのない限りCC BY 4.0で公開されている。全19ユニットからなり、各ユニットは「目標と到達目標」の一覧で始まり、ユニットのまとめで終わる。その間の本文には写真、図、表が数多く添えられ、その多くは著者が学生と行った野外巡検で撮影されたものである。序文では、覚えておくべき点を示す「Pin It!」ボックスが紹介されており、各ユニットにはQRコードと著者の動画へのリンクがある。動画にはサンアンドレアス断層やデスヴァレーでの野外解説も含まれる。章末問題、用語集、索引、参考文献表はない。
ユニット1:Introduction to Geography as a Discipline(学問としての地理学入門)
自然地理学を、地球の陸地、水、生物、大気、内部を空間的に研究する学問と定義し、科学的・地理学的な探究と科学的方法を論じる。続いて地理座標系を導入し、リモートセンシング、GPS、GISを概観する。
ユニット2:Earth's Place within the Cosmos(宇宙の中の地球)
天文学のユニット。膨張する宇宙とビッグバン、恒星系と銀河、天の川銀河、恒星内部の核融合、恒星の分類を扱う。
ユニット3:Introduction to Geology & Geologic Time(地質学と地質時代入門)
地質学とは何かを説明したうえで、層序学の原理、斉一説、地質年代表を通して、地球の長大な時間の感覚を養う。相対年代と絶対年代を区別し、放射年代測定とその前提を説明する。
ユニット4:Mapping Earth's Surface(地表の地図化)
地図学のユニット。縮尺(分数縮尺と縮尺バーを含む)、地形図の等高線、範囲と解像度の違い、地図投影の仕組みとゆがみ、米国の公有地測量制度(Public Land Survey)を扱う。
ユニット5:Earth-Sun Relationships: Reasons for the Seasons(地球と太陽の関係:季節の原因)
地球の自転と公転、夏至・冬至と春分・秋分、太陽高度と日照時間、近日点と遠日点を扱う。太陽放射、温室効果と温室効果ガス、日食・月食、月の満ち欠け、潮汐もこのユニットに含まれる。
ユニット6:Earth's Atmosphere(地球の大気)
大気の組成と層構造、エネルギー・熱・温度の関係、太陽エネルギー収支とアルベド、地球規模の大気循環を扱う。局地風は雨陰効果とカリフォルニアのサンタアナ風で説明される。
ユニット7:Elements of Weather & Climate(気象と気候の要素)
大気中の水分、気団と前線、温帯低気圧、雷雨などの極端な気象を扱う。続いて気象と気候を区別し、ケッペンの気候区分の五つの主要な気候帯を表で示し、気候変動、地球温暖化、気候の観測について簡潔に論じる。
ユニット8–11:Basic Mineral Development(鉱物の基礎);Igneous Rocks(火成岩);Sedimentary Rocks(堆積岩);Metamorphism & Metamorphic Rocks(変成作用と変成岩)
地球を構成する物質についての4ユニット。ユニット8は原子とイオン、物理的性質による鉱物の同定を扱う。ユニット9は岩石サイクル、マグマの組成、結晶化(ボーエンの反応系列)、火成岩の組織を紹介する。ユニット10は砕屑性堆積岩と化学的堆積岩を分類し、堆積構造と化石を使って過去の環境を読み解く。ユニット11は変成作用を支配する要因、片理、変成岩の分類、そしてプレートテクトニクスとの関係を扱う。
ユニット12:Weathering & Soils(風化と土壌)
機械的風化(凍結破砕を含む)、加水分解・酸化・溶解による化学的風化、マスムーブメントと地すべりの危険、土壌の生成、土性、土壌層位を扱う。
ユニット13–15:Earth's Dynamic Surface: Plate Tectonics(動的な地表:プレートテクトニクス);Earth's Dynamic Surface: Tectonics Force(動的な地表:地殻変動の力);Earth's Dynamic Surface: Volcanoes(動的な地表:火山)
ユニット13は地球の内部、大陸移動と海洋底拡大、プレート境界の種類を扱う。ユニット14は地殻応力、褶曲と断層、地震、マグニチュードと震度、シェイクマップ、液状化を説明する。ユニット15はマグマの生成をテクトニックな環境と結びつけ、マグマの組成が噴火様式をどう左右するか、主な火山の種類、火山災害を説明する。
ユニット16–19:Shaped by Coastal Processes(海岸の作用による地形);Shaped by Rivers & Running Water(河川と流水による地形);Shaped by Wind as a Geomorphic Agent(地形営力としての風による地形);Shaped by Glaciers(氷河による地形)
地形学の一連のユニット。ユニット16は波、沿岸漂砂、侵食と堆積による海岸地形、海面変動、人間による海岸への干渉を扱う。ユニット17は流域、平衡河川、河川の侵食と堆積を扱い、さらに湖と地下水による水の貯留に進む。ユニット18は乾燥の程度を定義し、風食、砂丘の型、その他の砂漠地形を説明する。ユニット19は地球の過去の氷河作用とミランコビッチ・サイクルを概観してから、氷河の働きと、氷河の侵食・堆積による地形を説明する。
主要概念
ユニット1–5:基礎
- 地理座標系:位置を定めるための角度による測定値としての緯度と経度。
- 地理空間技術:空間データを収集・分析するためのリモートセンシング、GPS、GIS。
- 地図投影:地球儀から平面への体系的な変換。必ず何らかの性質をゆがめる。
- 季節の原因:地軸の傾きと公転。これにより日射の角度と時間が変わる。
ユニット6–7:大気、気象、気候
- アルベドと太陽エネルギー収支:入射エネルギーのうち反射される割合と、地球システムに出入りするエネルギーの収支。
- 気団と前線:温度と湿度が一様な大規模な空気の塊と、それらが接する帯。
- ケッペンの気候区分:気温と降水量で定義される五つの主要な気候帯。
ユニット8–12:地球の物質と風化
- 岩石サイクル:火成岩、堆積岩、変成岩を結びつける一連の過程。
- 化学的風化:地表で不安定な鉱物の加水分解、酸化、溶解。
- 土壌層位:気候、母材、斜面、時間が風化した岩石に働くことで、深さに応じて形成される層。
ユニット13–19:テクトニクスと地形
- プレート境界:発散境界、収束境界、トランスフォーム境界と、それぞれで起こる活動。
- 沿岸漂砂:斜めに打ち寄せる波によって海岸に沿って運ばれる堆積物。
- 平衡河川:縦断面がなめらかな曲線に調整された河川。隆起や侵食基準面の変化によってその状態を失うことがある。
- 氷河地形:侵食によるU字谷、アレート、ホルン、懸谷と、堆積によるティル、エスカー、アウトウォッシュ。
批判的分析
長所
- 無料で、オープンライセンス。 全文はWord版も含めて無料でダウンロードでき、CC BY 4.0のもとで改変できる。
- わかりやすいユニット構成。 どのユニットも冒頭で目標を示し、最後にまとめを置くので、学生は各ユニットで何が求められているかを確認できる。ユニットは短く(およそ2,400〜6,300語)、ほぼ独立している。
- 野外に根ざし、地域に密着。 写真の多くは著者の野外巡検で撮影されたもので、事例はカリフォルニアに大きく依拠している。サンアンドレアス断層、デスヴァレー、ヨセミテ、シエラネバダ、モハーヴェ砂漠、モノ湖、サンタアナ風などである。リンクされた動画では著者が現地で解説しており、遠隔で学ぶ学生の助けになる。
- 地質と地形に強い。 本書の約半分は地球の物質、テクトニクス、地形学に充てられ、岩石の種類、火山の種類、地震、海岸、河川、砂漠、氷河を詳しく扱う。
短所
- 扱いの欠落。 生物圏、生物地理学、バイオーム、生態系を扱うユニットはなく、海洋は波と海岸の作用を通してしか登場しない。Open Textbook Libraryのレビュアー(2021年のDimitar Dimitrov、2024年のJackie GallagherとJustin Hartnett)は、いずれも生物圏の欠落と水文学の扱いの薄さを指摘している。Gallagherはさらに、世界の気候が導入されるだけで説明されず、雨温図もないと述べている。
- 地質学に偏っている。 鉱物と岩石の4ユニットと天文学の1ユニットが、多くの自然地理学の授業なら気候区や植生に割く紙幅を占めている。Hartnettはユニット2が授業に必要かどうかを疑問視している。
- 学習用の仕掛けがない。 復習問題や演習、用語集、索引、さらに学ぶための参考文献がない。この点はDimitrovとGallagherも指摘している。図表の一部は他のオープン教材に由来するものとしてクレジットされており(たとえばSteven Earleによる表)、いくつかの相互参照は本書に存在しない章を指している。「侵食と堆積の章」や、大陸移動についての「第10章」がその例である。
- 数値には確認が必要なものがある。 いくつかの記述は古いか不正確である。たとえばユニット5の温室効果ガスの比較では、メタンの温室効果について古い値が使われている。
コースにおける位置づけ
Patrichの本は、このコースへの無料で短い入り口である。Alan Strahlerの『Introducing Physical Geography』ははるかに長い商業出版の概説書で、Patrichが扱わない世界の気候、生物地理学的過程、地球規模の生物地理、土壌に章を割いている。Patrichを主教材とする学生は、それらの章を借りて補うことができる。ChristophersonとBirkelandの『Geosystems』は、大気圏、水圏、岩石圏、生物圏を軸に構成された、より充実したシステム的な教科書で、気候変動と人間の影響に継続的に注意を払っている。
さらに深く学ぶなら、Smithson、Addison、Atkinsonの『Fundamentals of the Physical Environment』が、気候、地形、土壌、生態系の背後にある過程を1年次の概説書より深く説明し、Hartmannの『Global Physical Climatology』は気候物理学を定量的に扱う。Patrichは最初に読むか、より大きな教科書のいずれかと並行して読むのがよい。
本書の使い方
本書は、自然地理学や地球科学の入門授業を受ける1年生、特にコミュニティカレッジやオンライン授業の学生に向いており、高校までの理科以上の予備知識は必要ない。
実践的な読み方:
- 中核: 位置、地図、時間、エネルギー、大気を扱うユニット1と3–7、続いて風化、テクトニクス、地形を扱うユニット12–19。
- 任意または選択的に: ユニット2(天文学)は流し読みでよい。ユニット8–11は地質学や実習を含む授業に向いている。そうでなければ岩石サイクルを扱うユニット9を読み、残りは流し読みでよい。
- 到達目標をチェックリストとして使う。 各ユニットの後で、示された到達目標それぞれに記憶だけで簡潔に答え、ユニットのまとめと照らし合わせる。
- リンクされた動画を見る。 ユニット8、12–15、18にあり、いくつかは著者が現地で過程を解説している。
- 欠けているものを補う。 ユニット7には気候区の章を組み合わせ、生物地理学と土壌についての資料を加える。たとえばStrahlerや『Geosystems』の該当章である。本書には用語集がないので、自分用の用語集を作るとよい。
版と出典
本ガイドは、カレッジ・オブ・ザ・キャニオンズのZero Textbook Costページからリンクされたフォルダ(https://drive.google.com/drive/folders/1oTVcpLRpb9YYHCxMp_UdzFHOxTL-Pj2G)からPDFとして入手した第2版(Version 2、2023年)の読解に基づく。前付けと序文、目次、全ユニットの目標と到達目標・節見出し・まとめを読み、ユニット1、5、6、7、17、19の一部の節を全文読んだ。あわせて、Open Textbook Libraryの第1版の記録に寄せられた3件のレビューも参照した。
