01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Norton, W., & Walton-Roberts, M. (2013). Cultural Geography: Environments, Landscapes, Identities, Inequalities (3rd ed.). Oxford University Press Canada.
章の要約
第3版は10章、約416ページである。オックスフォード大学出版局は、本書を、人々とその住む場所との関係を探るものと説明し、地域規模と地球規模での文化的アイデンティティと文化景観を分析するとしている。今版では、伝統的な立場と現代的な立場のバランスをとるため、第2の著者 Margaret Walton-Roberts が加わった。出版社によれば、本文は、アイデンティティと権力、社会空間的関係、ハイブリッド性と自然、フェミニズム、マルクス主義についての議論を充実させて改訂されている。章題の並びは、学問の歴史から景観へ、そしてアイデンティティと権力へ、最後に場所へと進む。
第1章:文化地理学の紹介
冒頭の章は、人々とその住む場所との関係という主題を紹介する。出版社の紹介文は、これを本書の出発点としている。
第2〜3章:文化地理学の伝統;文化地理学の再考
分野の展開を扱う2つの章。章題が示すとおり、前者は文化地理学の伝統を、後者はその再考を提示する。両者が合わさって、出版社が強調する伝統的な立場と現代的な立場のバランスをなしている。
第4〜6章:環境、倫理、景観;景観の進化;地域の景観
景観に関するひとまとまりの章。最初の章は環境・倫理・景観を結びつけ、次の章は景観の進化を、3つ目は地域の景観を扱う。
第7〜8章:権力、アイデンティティ、グローバルな景観;権力、アイデンティティ、表象
章題が権力とアイデンティティを組織上の主題としている2つの章で、まずグローバルな景観との関連で、次に表象との関連で扱われる。
第9章:場所に生きる:社会空間的関係
題名から判断すると、場所に住まうことと、社会生活と空間との関係を扱う章で、出版社はこれを「社会空間的関係」と呼んでいる。
第10章:文化地理学:継続と展開
最終章。題名は、この分野がどのように続き、展開していくかを見渡すことを示している。
主要概念
第1〜3章:分野
- 文化的アイデンティティと文化景観:出版社の紹介文が挙げる2つの分析対象で、地域規模と地球規模で研究される。
- 伝統的な立場と現代的な立場:本書が第2章と第3章に組み込んでいる対比。
第4〜9章:景観、アイデンティティ、場所
- 文化景観:環境の中に見える文化の痕跡で、第4〜6章の主題。
- 権力とアイデンティティ:第7章と第8章に対になって現れる主題。
- 表象:場所や集団がどのように描かれるかで、第8章の焦点。
- 社会空間的関係:社会生活と空間とのあいだの相互のつながりで、第9章で探究される。
批判的分析
長所
- 伝統と現代の両立。 出版社は新しい共著者がバランスを保つ役割を果たすことを強調しており、初めの2章が学問の伝統とその再考にあてられているので、学生は現在の考え方の由来がわかる。
- 他分野とのつながり。 出版社によれば、本書は文化地理学が社会地理学、経済地理学、政治地理学、環境地理学、自然地理学とどう関わるかを示す。
- 更新されたテーマ。 改訂によって、アイデンティティと権力、社会空間的関係、ハイブリッド性と自然、フェミニズム、マルクス主義の扱いが強化されており、出版社はこれにより今日の学生により適したテキストになったとしている。
- 学生の関与を促す工夫。 出版社は、ボックス記事、批判的に考えるための問い、推奨される参考文献を挙げている。
短所
- テーマが章にならず、全体に散らばっている。 フェミニズム、マルクス主義、ハイブリッド性は章の主題ではなく、景観・権力・場所を軸にした章の中に織り込まれている。そのため、そのうちの一つを集中的に知りたい読者は、章をまたいで追うか、専門書に当たる必要がある。
- よくある文化的テーマの章がない。 目次には、言語・宗教・大衆文化・遺産を名称とする章がなく、これらは文化地理学の入門書に期待されうるテーマである。扱われているとしても、より広い章の中に収まっている。
- やや古い。 2013年刊行のため、その後の分野の研究は対象外である。
コースにおける位置づけ
Norton と Walton-Roberts の本は、このコースの一般的な教科書で、学問の歴史、景観、アイデンティティ、権力、場所を並べて見渡す概観である。Mitchell の Cultural Geography: A Critical Introduction は、文化を闘争の場として扱い、権力・経済・政治を中心にとどめるべきだと論じる批判的な書で、概観というより論証の書であり、教科書のあとに対照として読むとよい。
ほかの4冊が中心的な概念を取り上げる。Cresswell の Place: An Introduction は場所についての学生向けの短い入門書、Tuan の Space and Place は人々が空間と場所をどう経験するかを論じる人間主義地理学の古典、Massey の For Space と Lefebvre の The Production of Space は空間を社会的関係の産物として扱う理論書である。第9章の社会空間的関係の議論は、それらに進む自然な切り替え点になる。
本書の使い方
本書は学部の文化地理学・人文地理学の授業向けに書かれている。人文地理学の入門科目を履修しておくと役に立つ。
進め方の提案:まず第1〜3章を読み、この分野がどう発展し、なぜ再考されたのかを理解する。次に景観のまとまり(第4〜6章)と、権力とアイデンティティの章(第7〜8章)を読み進める。第9章は場所に向かい、第10章は本書による分野の展望で締めくくられる。
批判的に考えるための問いで論点を試し、推奨される参考文献で原著者に当たるとよい。より歯ごたえのある理論的な議論を求める読者は、第9章のあとで Mitchell、Massey、Lefebvre に進むことができる。
