01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Craig, J. J. (2022). Introduction to Robotics: Mechanics and Control (4th ed.). Pearson.
章の要約
本書は13章からなる。出版社は、本書が従来の機械工学の内容に計算機科学と制御理論の概念を融合させたものだと説明し、剛体変換、順運動学・逆運動学による位置の計算、リンク機構の速度とヤコビアン、動力学、線形・非線形制御、力制御、機械設計、ロボットのプログラミングを扱うとしている。対象はロボット工学の学部上級生と大学院1年生の科目であり、出版社によれば第4版は応用と理論のバランスを保ち、問題の計算的側面を重視し、簡潔で直感的な提示を心がけている。本書は1986年から刊行されている。
第1–2章:序論;空間変換
最初の章で分野を紹介する。第2章は空間変換、すなわち運動学の章が拠って立つ、位置と姿勢の剛体としての記述を扱う。
第3–4章:順運動学;逆運動学
この2章はマニピュレータの位置に関する運動学を扱う。関節の値からリンク機構の先端がどこにあるかを求めることと、望む位置に対する関節の値を求める逆の問題である。
第5–6章:速度、静力、ヤコビアン;動力学
第5章は、ヤコビアンを通じて運動学を速度と静力へ広げる。第6章はマニピュレータの動力学を扱う。
第7–8章:軌道計画;ロボットの機械設計
第7章はマニピュレータの運動を時間とともに計画することを扱う。第8章はロボットの機械設計を扱う。
第9–11章:線形制御;非線形制御;力制御
マニピュレータの制御に関する3章で、線形・非線形の位置制御から力制御まで進む。
第12–13章:プログラミング言語とシステム;シミュレーションとオフラインプログラミング
最後の2章はソフトウェア側の話題で、ロボット用のプログラミング言語とシステム、およびシミュレーションとオフラインプログラミングを扱う。
主要概念
第1–4章:記述と運動学
- 空間変換:剛体の位置と姿勢を記述し、一つの座標系を別の座標系と関係づけること。
- 順運動学と逆運動学:関節変数から先端位置を求める写像と、その逆。
第5–8章:運動、力、設計
- ヤコビアン:関節速度を先端の速度に、静的な場合には力に関係づけるもの。
- マニピュレータの動力学:加えられたトルクのもとでのリンク機構の運動を支配する方程式。
- 軌道計画:マニピュレータがたどる時間依存の経路を定めること。
第9–13章:制御とソフトウェア
- マニピュレータの線形・非線形制御。
- 力制御:接触力を制御する方法論。
- オフラインプログラミングとシミュレーション:実機を使わずにロボットのプログラムを準備し検証すること。
批判的分析
長所
- 明快な進行。 章の順序は、記述、運動学、速度と静力学、動力学、軌道、設計、制御、プログラミングという、この分野の通常の論理に従っており、各部分を順に学べる。
- 力学と制御のバランス。 出版社は、機械工学と計算機科学・制御理論の融合を強調している。力学の章に加えて、制御の3章とプログラミングの2章がある。
- 計算の重視。 第4版は計算的側面の重視を保っており、運動学や動力学をソフトウェアで実装しようとする読者に適している。
- 定評のある教科書。 出版社は1986年の初版刊行に触れており、大学の教科書として長い実績がある。
短所
- 外部の予備知識に依存する。 制御は3章で扱われるので、制御系の科目を履修していない読者は、基礎となる理論について別の資料が必要になる。
- マニピュレータ中心。 章立てはロボットマニピュレータとそのプログラミングを軸に組まれており、移動ロボット、視覚、学習に基づく手法は目次に現れない。
- 複数の版が流通している。 Pearsonは第4版とGlobal Editionで異なる製品を掲載しているので、課題を章に対応させるときは版を確認すること。
コースにおける位置づけ
この信号・システム・制御コースの中で、Craigはロボット工学の応用書にあたる。基礎の後に位置し、信号とシステムについてはOppenheimとWillskyの Signals and Systems、Sadikuの入門書、Downeyの Think DSP が扱い、Niseの Control Systems Engineering はMATLABとSimulinkを用いてフィードバックシステムのモデル化、解析、設計を学ぶ応用的入門である。ÅströmとMurrayの Feedback Systems は、物理、生物、情報のシステムにわたるフィードバック、モデル化、安定性、状態空間、ロバスト性の現代的入門である。
Craigは第9–11章でその制御の素養を前提とするので、順序としては、NiseまたはÅströmとMurrayのような最初の制御の科目の後に、ロボット固有の力学と制御のためにCraigを読むのが穏当である。力学が主な関心の読者は、制御理論より線形代数と剛体動力学に依存する第1–8章を先に読める。後の制御の仕事の背後にある信号とシステムの道具を知りたい読者は、上に挙げた基礎から始め、その具体的な工学的応用としてCraigに戻るとよい。
本書の使い方
対象は、ロボット工学の科目を受講する機械、電気、計算機工学の上級学部生と大学院1年生である。線形代数、剛体動力学、制御の入門科目が役に立つ予備知識である。
実践的な進め方:
- 中核: 第1–6章を順に。第2–4章は他のすべてが使う変換と運動学を与え、第5章と第6章は速度、静力学、動力学を加える。
- 次に: 第7章の軌道計画、続いてマニピュレータの制御のために第9–10章。
- 関心に応じた任意: 機械設計は第8章、力制御は第11章、プログラミングとシミュレーションは第12–13章。
本書は計算を重視しているので、簡単なアームの順運動学と逆運動学をできるだけ早くコードで実装すること。制御の章は専門の制御の教科書と併用し、力学の章と制御の章は別々に見直せる二つのブロックとして扱うとよい。
1学期の科目では、通常、力学のために第1–7章、制御の章を一つか二つ、プログラミングを短く、という形になる。独習者は第6章で止めても、マニピュレータの運動学と動力学の中核は得られる。残りの章は、力学が固まった後の二巡目として役に立つ。計算機科学を背景とする読者にも同じ順序が向いている。第2章の空間変換から始めて実装し、運動学のコードが動いてから動力学を取り入れる。
