01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Cross, N. (2021). Engineering Design Methods: Strategies for Product Design (5th ed.). Wiley.
章の要約
第5版は約210ページのコンパクトな本で、三部からなる。第1部(第1〜3章)は設計とは何か、設計プロセスがどのようにモデル化されてきたかを説明する。第2部(第4〜13章)は実践の中核で、設計手順への導入、続いてそれぞれ一つの手法を軸にした8つの章、そして設計戦略の章からなる。第3部(第14章)は設計を製品計画とシステム設計のなかに位置づける。ワイリーは本書を、工学とプロダクトデザインのあらゆる分野の学部生・大学院生のために書かれたものと説明している。著者のナイジェル・クロスはオープン大学のデザイン研究の名誉教授で、デルフト工科大学で設計方法論の教授を務めた。
第1章:設計という活動
本書は、設計者が自分の仕事について語る言葉から始まる。エンジニアリングデザイナー、インダストリアルデザイナー、家具デザイナー、そして建築家でもあるエンジニアのサンティアゴ・カラトラバの発言を引き、直観、問題と解の絡み合い、対話としてのスケッチについて述べる。続いて設計の終点から逆にたどる。設計の本質的な成果は、他の人がそれをつくれるほど正確な人工物の記述である。そこから設計の伝達、評価、生成、探索へと進む。新しい事例研究では、ゴードン・マレーのT.25シティカーを、ノートのスケッチから針金と段ボールのモックアップを経て、公道を走る試作車まで追う。
第2〜3章:設計の本質/設計のプロセス
第2章は設計問題、その構造、設計者がそれをどう解くかを検討する。第3章は設計プロセスの記述的モデル、規範的モデル、統合的モデルを比較する。
第4章:設計手順
実践への橋渡しとなる章。体系的な手順、設計手法という考え方、そして本書が用いる二つの系統、すなわち創造的手法と合理的手法を扱う。
第5〜8章:機会の特定/目的の明確化/機能の確立/要求の設定
最初の4つの手法の章は問題の定義を扱う。各章は一つの手法を軸にしている。製品の機会を見つけるユーザーシナリオ法、目的ツリー法、機能分析法、性能仕様法である。
第9〜12章:特性の決定/代替案の生成/代替案の評価/細部の改善
続く4つの手法は、設計を要求から洗練された提案へと進める。顧客要求を工学的特性に変換する品質機能展開(QFD)、代替案を生成する形態チャート(モルフォロジカルチャート)、それらを評価する重み付き目的法、そして細部を改善するバリューエンジニアリング法である。
第13章:設計戦略
設計戦略とは何か、戦略を立てるための枠組み、戦略の管理、そして設計を学ぶことと熟達を育てることについての節を扱う。後者の節は、この版でワイリーが強調する設計能力に関する新しい内容に対応している。
第14章:設計とイノベーション
第3部の唯一の章は、個々のプロジェクトを超えて製品計画とシステム設計に目を向ける。
主要概念
第1部:設計の基礎
- 記述としての設計:設計の最終成果は人工物の記述(通常は図面)であり、他の人がそれをつくれるほど正確でなければならない。
- 問題と解の共進化:設計者は暫定的な解を使って問題を理解し、問題と解を並行して発展させる。
- 記述的モデルと規範的モデル:設計者が実際にどう働くかの説明と、どう働くべきかの推奨。
第2部:設計の実践
- 創造的手法と合理的手法:アイデアの生成を刺激する手法と、プロセスを体系的に構造化する手法。
- 目的ツリー:設計の目的とその相互関係を明確にする階層構造。
- 機能分析:製品がしなければならないことを、特定の解に依存せず、入力、出力、下位機能として記述すること。
- 性能仕様:要求を解の形ではなく、測定可能な性能水準として述べること。
- 品質機能展開:顧客の要求を工学的特性に翻訳すること。
- 形態チャート:下位機能とそれを実現しうる手段の表で、組み合わせて代替案を生み出す。
- 重み付き目的:重み付けした基準に照らして代替案を採点し、比較すること。
- バリューエンジニアリング:部品や細部を検討して、コストに対する設計の価値を高めること。
第3部:デザイン思考
- 設計戦略と熟達:設計プロジェクトをどう進めるかの計画と、経験とともに設計能力がどう育つか。
- 製品計画とシステム設計:製品群やシステム全体のレベルでの設計判断。
批判的分析
長所
- 一章に一手法、明確な手順。 ワイリーは、8つの主要な手法を明確かつ詳細に、図解とともに示している点を強調している。第5〜12章の構成のおかげで、各手法を見つけやすく、段階を追って適用しやすい。実際のプロジェクトに取り組んでいる学生に向いている。
- 設計者についての研究に根ざす。 第1章は、手法を導入する前に、著名な設計者へのインタビューと観察研究をもとに、設計者がどう考え、どう働くかを描く。第5版では、著者の研究分野を反映して、デザイン思考と設計能力についての内容が加えられた。
- 記憶に残る実例。 ゴードン・マレーのシティカーの研究は、最初のスケッチから受賞した試作車までの開発全体を示し、最初からプロセスを具体的なものにしている。
- 短く持ち運びやすい。 約210ページなので、技術系の教科書を押しのけることなく、プロジェクト科目と並行して読める。
短所
- 手法であって解析ではない。 本書は、構想を実際に機能する部品に変える工学計算を扱わない。解析の教科書と組み合わせる必要がある。
- 後の段階は手薄。 手法の章はバリューエンジニアリングまでで終わる。製造を考慮した詳細設計、試験、試作の手法は独立した章になっていないため、これらの段階については学生は別の資料が必要になる。
- 第3部の幅広さ。 イノベーション、製品計画、システム設計が一つの章を共有しており、それぞれ独自の文献をもつ話題を短く扱うにとどまる。
コースにおける位置づけ
クロスは、ほかは機械要素を中心に組まれた機械設計の書目のなかで、設計プロセスを扱う本である。モット、ヴァヴレク、ワンの Machine Elements in Mechanical Design、ジュヴィナルとマーシェクの Fundamentals of Machine Component Design、ノートンの Machine Design: An Integrated Approach、ブディナスとニスベットの Shigley's Mechanical Engineering Design はいずれも、軸、歯車、軸受、締結要素などの部品の解析と寸法決定を教える。クロスはそれより前の問い、すなわち設計プロジェクトをどう組み立て、どう構想を選ぶかに答える。設計科目の初めに読み、構想が決まったら部品の教科書に戻るとよい。
パール、バイツ、フェルトフーゼン、グローテの Engineering Design: A Systematic Approach は、体系的な設計方法論についての包括的な参考書である。同じ段階(課題の明確化、機能構造、概念設計と具体化設計)を、はるかに詳しく機械の例とともに扱う。クロスはその自然な入門書であり、機能分析と形態チャートの章を役立つと感じた学生は、同じ考え方をパールとバイツのより完全な手順へとたどることができる。
本書の使い方
ワイリーは本書を、工学とプロダクトデザインのあらゆる分野の学部生・大学院生に向けている。技術的な予備知識は必要ないので、1年次に、解析の科目より前に読むことができる。
- 最初に読む: 第1〜4章。設計の活動とプロセスを説明し、創造的手法と合理的手法を導入する。第1章のシティカーの事例はじっくり読む価値がある。
- プロジェクトとともに使う: 第5〜12章を道具箱として使う。プロジェクトがその段階に達したら、自分の課題に各手法を適用する。始めにユーザーシナリオと目的ツリー、問題を定義する間に機能分析と性能仕様、構想選定の間に形態チャートと重み付き目的、詳細化の間にバリューエンジニアリングである。
- 最後に読む: 自分のプロジェクトの進み方を振り返れる時期に、戦略と熟達についての第13章を、そしてより広い製品とシステムの文脈について第14章を読む。
各手法の成果物(目的ツリー、機能図、仕様書、形態チャート、評価表)を設計ファイルとしてまとめておくこと。それらは最終設計の背後にある推論の記録となり、報告書やデザインレビューで役に立つ。
