01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Mott, R. L., Vavrek, E. M., & Wang, J. (2017). Machine Elements in Mechanical Design (6th ed.). Pearson.
章の要約
第6版は3部構成の全23章と、データや設計資料をまとめた19の付録からなる。第1部は設計のための応力解析と荷重の扱いを復習し、第2部は一つの機械駆動装置の設計を軸に構成され、第3部はその他の機械要素を扱って設計プロジェクトの章で締めくくられる。Pearsonの紹介によれば、この版から2人の共著者がMottに加わり、応力解析の内容が強化され、扱う技術的トピックの幅も広がった。
第1章:機械設計の本質
第1部「設計と応力解析の原理」の冒頭として、機械設計とは何をすることか、本書がそれにどう取り組むかを示す章である。
第2章:機械設計における材料
工学材料とその設計上の特性を概観する。付録の物性表を使う準備となる章で、付録には炭素鋼・合金鋼、熱処理鋼、浸炭鋼、ステンレス鋼、構造用鋼、鋳鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、チタン合金、銅合金、プラスチックの表が収められている。
第3章:応力と変形の解析
Pearsonが無料で公開しているこの章のサンプルから、章の形がわかる。冒頭の「The Big Picture」では身近な製品がどのように壊れるかを考えさせる問いが示され、「You Are the Designer」ではユーティリティクレーンの設計場面を使って静力学と自由体図による解析を復習する。続く23節で、軸荷重とせん断による直接応力、ねじり(非円形断面や薄肉管を含む)、はりの曲げ応力とせん断応力、せん断中心、はりのたわみ、曲がりはり、重ね合わせ、応力集中と切欠き感度を復習する。本文は材料力学の授業を修了していることを前提とすると明言している。
第4章:組合せ応力
複数の種類の応力が同時に作用する部材を扱い、第3章で復習した単一荷重の場合を拡張する。
第5章:さまざまな荷重形態に対する設計
静的荷重か変動荷重かという荷重の種類によって設計の進め方がどう変わるかを扱う。第3章・第4章とともに、各部品の章が拠りどころとする解析の基礎をなす。
第6章:柱
第1部の最後に圧縮部材を扱う。ここでは応力ではなく安定性が設計を決める。
第7〜10章:ベルト伝動とチェーン伝動、歯車の運動学、平歯車の設計、はすば歯車・かさ歯車・ウォームギヤ
第2部「機械駆動装置の設計」は巻掛け伝動から始まり、歯車へと進む。まず歯車の運動学、次に平歯車の設計、そしてはすば歯車、かさ歯車、ウォームギヤである。付録19には平歯車の歯面疲労(ピッチング)に関する幾何係数が収められている。
第11〜14章:キー・継手・シール、軸の設計、公差とはめあい、転がり軸受
回転部品をつなぎ、支える要素を扱う。キー・継手・シール、軸、公差とはめあい、転がり軸受の順である。第3章のサンプルにはすでに歯車軸のたわみを求める例題があり、歯車にかかる力を扱う後の章を参照している。
第15章:動力伝達装置の設計の完成
第2部の総仕上げとして、個別に設計した要素を一つの動力伝達装置にまとめ上げる。
第16〜19章:すべり軸受、直動要素、ばね、締結要素
第3部「設計の詳細とその他の機械要素」では、駆動装置以外の部品に目を向ける。すべり軸受、直線運動のための要素、ばね、締結要素である。
第20〜22章:機械フレーム・ボルト結合・溶接継手、電動機と制御、運動制御:クラッチとブレーキ
機械を一体に保つ構造と、機械を動かし制御する部品を扱う。フレームと継手、電動機とその制御、クラッチとブレーキである。
第23章:設計プロジェクト
最終章には、本書全体を使って取り組む設計プロジェクトが集められている。
主要概念
第1部:設計と応力解析の原理(第1〜6章)
- 安全のための設計:部品に生じる応力と変形は、合理的に予見できる条件のもとで許容範囲に収まらなければならない。第3章はこの考え方から始まる。
- 応力要素:ある点に作用する垂直応力とせん断応力を表すための微小要素。
- 応力集中と切欠き感度:形状が変化する箇所での局所的な応力の上昇と、それを材料が実際にどの程度受けるか。
- 組合せ応力:複数の荷重が同時に作用するときの応力状態。
- 柱の安定性:圧縮部材が過大応力ではなく座屈によって破損すること。
第2部:機械駆動装置の設計(第7〜15章)
- 歯車の運動学:かみ合う歯車の幾何と速度の関係。歯車の強度より先に学ぶ。
- 軸の設計:歯車、プーリ、スプロケットを載せ、軸受で支えられる軸の寸法を決めること。
- 公差とはめあい:かみ合う部品の寸法の許容範囲を指定すること。
- システムとしての統合:個別に設計した要素を組み合わせて動力伝達装置を完成させること(第15章)。
第3部:設計の詳細とその他の機械要素(第16〜23章)
- 軸受の種類:運動部品を支える別々の方法としての転がり軸受(第14章)とすべり軸受(第16章)。
- 継手:機械フレームにおけるボルト結合と溶接継手。
- 運動制御:クラッチとブレーキ、そして機械を駆動する電動機とその制御。
批判的分析
長所
- 全体の中で要素を設計する。 Pearsonは本書の重点を、機械要素を常にそれが属するより大きな機械の文脈の中で考えながら応用することだと説明している。構成もそのとおりで、第2部はベルトや歯車から軸、軸受まで一つの機械駆動装置の設計を軸に組み立てられ、動力伝達装置を完成させる章で終わる。
- 明快で一貫した例題。 第3章のサンプルでは、約20題の例題がすべて「目的・与えられた条件・解析・結果・コメント」という同じ形式をとり、その後に80題を超える章末問題が続く。例題はヤード・ポンド系(米国慣用単位)とSI単位の両方を使っており、どちらの単位系にも出会う読者にとって重要である。
- 実践的な設計データ。 19の付録が断面の性質、標準寸法とねじ、多くの金属とプラスチックの物性表、はりのたわみ公式、標準構造形鋼、換算係数、硬さ換算、応力集中係数を収めている。サンプルの章には参考文献とインターネット上の資料の一覧もあり、教育用の応力解析ソフトウェアや応力集中データのオンライン資料などが挙げられている。
- 復習が組み込まれている。 第3〜5章で部品の設計に入る前に応力解析を復習するので、材料力学を学んでから時間がたった学生も別の教科書なしに追いつける。
短所
- 深さより幅。 幅広い機械要素を23章で扱うため、より解析的な機械設計の教科書に比べて一つのトピックに割ける紙幅は少ない。本書は破損理論の参考書というより、実践的な授業用教科書である。
- 前提知識は本当に必要。 復習の章は役立つが、サンプルは材料力学の授業を修了し、静力学に慣れていることを前提とすると明言している。内容はあくまで復習であって、最初の授業ではない。
- 取捨選択が必要な大著。 このハードカバーについてOpen Libraryの記録は880ページとしており、多くの授業では特に第3部から章を選ぶ必要があるだろう。
コースにおける位置づけ
このコースの機械設計の教科書のなかで、Mottは最も直接的に実践的である。学生に必要な応力解析を復習したうえで、一つの完全な駆動装置の設計を順を追って進める。JuvinallとMarshekの Fundamentals of Machine Component Design とNortonの Machine Design: An Integrated Approach は破損理論、疲労、表面損傷により多くの紙幅を割き、Nortonは繰り返し登場するケーススタディをコンピュータによる計算とともに追う。Shigley's Mechanical Engineering Design は上級の授業向けの参考書レベルの扱いである。Mottは最初の機械設計の教科書としてよく機能し、授業がより多くの理論を必要とするときには、これらのいずれかが次の一歩となる。
設計方法論の本は別の役割を担う。Nigel Crossの Engineering Design Methods とPahlとBeitzの Engineering Design: A Systematic Approach は、歯車や軸や軸受の寸法を決めることではなく、製品のコンセプトをどう練り上げるかを扱う。学生が与えられた問題を解くのではなく自分で設計を定義し発展させなければならない第23章の設計プロジェクトと並行して読む価値がある。
本書の使い方
本書は、静力学と材料力学の後に最初の機械設計の授業をとる機械工学・工学技術系の学生と、設計データ付きの読みやすい参考書を求める実務技術者に向いている。Pearsonは本書を機械設計の授業用教科書として位置づけている。
1学期の授業での実践的な計画:
- 解析の中核: 第1〜5章。材料力学の記憶が新しくても第3章には取り組むこと。後の章がその記法と応力集中の扱いを使うからである。柱を扱う第6章は、圧縮部材が出てきたときに読めばよい。
- 設計の中核となる流れ: 第7〜15章を順に。各章は第15章に向けて積み上がるので、要素を設計するたびに決定事項(回転数、荷重、材料、寸法)を記録しておくとよい。
- 選択的に、プロジェクトに応じて: 授業やプロジェクトに合わせて第16〜22章から選ぶ。たとえば機構ならばねと締結要素、構造物ならフレーム、ボルト結合、溶接継手である。
- 統合: 第23章の設計プロジェクトを学期のプロジェクトとして使う。
各章ではまず「The Big Picture」と設計場面を読み、解答を読む前に例題を自分で解いてみること。現実的な設計は材料特性、標準寸法、応力集中係数を仮定するのではなく調べることにかかっているので、早いうちから付録に慣れておくとよい。
