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Behavioural Economics: A Very Short Introduction(行動経済学) cover

経済学

経済学

Behavioural Economics: A Very Short Introduction(行動経済学)

Michelle Baddeley

英語原題: Behavioural Economics: A Very Short Introduction

心理学、社会学、神経科学の知見が標準的な経済学の選択理論をどう修正するかを説明する、行動経済学のコンパクトな入門書である。動機づけ、社会的影響、ヒューリスティクス、リスク、時間に関する主要な知見を概観し、それらがマクロ経済と公共政策にどう応用されるかを示す。

前提知識: 経済学や心理学の予備知識は必要ない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
behavioural economicsheuristics and biasesdecision makingpublic policyvery short introduction

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Baddeley, M. (2017). Behavioural Economics: A Very Short Introduction. Oxford University Press. Very Short Introductions.

章の要約

本書は全9章、本文約126ページである。第1〜7章は、行動経済学の主要な考え方を個人から外側へと組み立てていく。この分野とは何か、人を動かすものは何か、他者がどう影響するか、人はどう判断し、リスクと時間をどう扱うか、そして性格と感情がどう関わるかである。第8章と第9章は、これらの考え方をマクロ経済と公共政策に応用する。

第1章:経済学と行動

7ページの短い序章で、行動経済学が注目される理由と、従来の経済学との違いを説明する。行動経済学は、経済学の分析力を必ずしも捨てることなく、心理学、社会学、神経科学、進化生物学を取り込む。限定合理性、生態学的合理性、選択的合理性を紹介し、実験、神経科学的データ、自然実験、ランダム化比較試験など、この分野が依拠する証拠の種類を示す。

第2章:動機とインセンティブ

経済分析の中核であるインセンティブから出発し、動機を内発的なものと外発的なものに分け、外的な報酬が内発的動機を締め出しうることを示す。また、特に慈善寄付における向社会的選択とイメージ動機、さらに経済的要因と社会心理的要因が組み合わさって職場での努力を決める例として効率賃金理論を扱う。

第3章:社会生活

社会的影響を扱う章である。不平等な結果への回避(不利な場合と有利な場合の二つの形)、信頼と互恵性、社会的学習、群集行動と同調圧力、社会規範を取り上げ、それらを協力とただ乗りの問題に結びつける。

第4章:素早い思考

情報と選択肢が多すぎるとき、人は簡便なルールに頼る。この章は、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが研究したヒューリスティック(利用可能性、代表性、係留と調整)と、それが生みうるバイアスを紹介しつつ、ヒューリスティックがしばしばうまく働くことにも触れる。

第5章:リスクのある選択

リスクを数量化する従来の方法である期待効用理論から出発し、アレのパラドックスとエルスバーグのパラドックス、そしてどの意思決定理論も説明すべき確実性効果、鏡映効果、分離効果を示す。そのうえでカーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論と、リチャード・セイラーのメンタル・アカウンティングやグレアム・ルームズとロバート・サグデンの後悔理論といった代替理論を説明する。

第6章:時間をかける

テーマは時間をまたぐ選択である。より大きな将来の報酬よりも小さな即時の報酬を好む現在バイアスと、その背後にある時間的非整合性を扱う。忍耐強い自分とせっかちな自分の葛藤、プリコミットメントと自己制御、そして選択のブラケティング、フレーミング、メンタル・アカウンティングに基づく行動ライフサイクル・モデルを論じる。

第7章:性格、気分、感情

5因子のOCEANテストで測られる性格が、認知能力や経済的・金融的な選択をどう形づくるかを説明する。続いて、感情は非合理なものか、それとも理性を補いうるものかを問い、感情ヒューリスティック、ソマティック・マーカー仮説、二重システム・モデル、神経経済学を扱う。

第8章:マクロ経済における行動

行動マクロ経済学は、きわめて多様な人々、ヒューリスティック、バイアスを集計するという難しさに直面する。この章は、楽観と悲観、信頼感、社会的ムードがマクロ経済の変動の説明にどう役立つかを示し、幸福とウェルビーイングで締めくくる。ロジャー・フランツの書評によれば、ケインズ、カトーナ、ミンスキーの行動的マクロ理論とアニマル・スピリッツの考え方も論じられている。

第9章:経済行動と公共政策

最終章は、主としてミクロ経済的な行動公共政策を扱う。市場の失敗を是正するのではなく、人々をより良い選択へとナッジすることで日常の意思決定を変えることを目指すものである。行動インサイトに基づく政策は、従来の経済政策手段に取って代わるのではなく補完すべきだと論じて終わる。

主要概念

第1〜3章:基礎、動機、社会的影響

  • 限定合理性:意思決定者が情報と認知能力の限界に直面しているという考え方。関連する生態学的合理性、選択的合理性とともに扱われる。
  • 動機のクラウディング・アウト:外的な報酬が、ある行動への内発的動機を弱めること。
  • 不平等回避:自分が劣位にある場合(不利な不平等)でも優位にある場合(有利な不平等)でも、不平等な結果を嫌うこと。
  • 社会規範と群集行動:共有されたルールと他者に追随する傾向。同調圧力によって強化される。

第4〜6章:判断、リスク、時間

  • ヒューリスティックとバイアス:利用可能性、代表性、係留などの簡便な意思決定ルールと、それが引き起こしうる系統的な誤り。
  • プロスペクト理論:確実性効果や鏡映効果などを説明するために考案された、カーネマンとトヴェルスキーによる期待効用理論の代替理論。
  • メンタル・アカウンティング:人がお金を別々の区分に分けて扱うというセイラーの説明。リスクとライフサイクルの選択の双方で用いられる。
  • 現在バイアス:即時の報酬を不釣り合いに好むこと。時間的に非整合な選択と、プリコミットメントへの需要を生む。

第7〜9章:感情、マクロ経済、政策

  • 感情ヒューリスティック:感情に意思決定を導かせること。二重システム・モデルやソマティック・マーカー仮説とともに論じられる。
  • アニマル・スピリッツと信頼感:マクロ経済の変動の説明に役立つ心理的・社会的な力。
  • ナッジ:選択肢を取り除くことなく、選択の提示の仕方を変えて行動を導くこと。

批判的分析

長所

  • 定番のヒューリスティックを超えた広い範囲。 ヒューリスティック、リスク、時間に加え、動機、社会的影響、性格と感情、マクロ経済にもそれぞれ1章を充てる。LSE Review of Books(2017年5月)のバートン・エジャートンの書評は、カーネマンとトヴェルスキーが本の3分の1を過ぎてから登場し、全体を支配しない点を新鮮だと評し、この分野が多くの貢献者の仕事として描かれていると述べている。
  • 概念と証拠の結びつき。 同じ書評は、特にリスクを扱う章で、著者が理論的概念と実験的証拠を巧みに織り合わせていると評価し、予備知識の少ない好奇心ある読者にとって価値ある入門書だとしている。
  • バランスのとれた結論。 章の要旨とエジャートンの書評のいずれによっても、本書は行動政策が従来の経済学に取って代わるのではなく補完すべきだと勧めて終わる。経済学を覆すものとして語られがちな分野について、節度ある位置づけを与えている。

短所

  • 分量に比して密度が高い。 学部教育の観点から Journal of Behavioral Economics for Policy(2019年)で本書を評したロジャー・フランツは、分析の水準が多くの学部生には高すぎ、二種類の不平等回避などの考え方の説明が短すぎると判断する一方、修士課程の学生には取り組みやすいとした。エジャートンも、7ページの第1章は経済学や社会科学の素養のない読者には速すぎると感じている。
  • これだけでは授業一つ分に足りない。 フランツは、約148ページでは1学期を支えきれず、補助的な文献が必要だと指摘する。
  • 形式的なモデルはない。 Very Short Introductions の一冊として、プロスペクト理論や現在バイアスなどの理論を言葉で説明している。モデルを使いこなす必要のある学生には教科書が必要である。

コースにおける位置づけ

本書は、行動経済学のリストにおけるコンパクトな概念的概観である。リチャード・セイラーの Misbehaving ももう一冊の一般読者向けの本だが、こちらはこの分野の発展を一人称で語る歴史である。バデリーの本はテーマ別に構成されており、分野の構造を素早くつかむのに向く。バデリーを先に、セイラーを後に読むとよく噛み合う。前者が地図を、後者がその背後にある物語と実験を与えてくれる。

授業での学習には、エドワード・カートライトの Behavioral Economics と、ウィルキンソンとクラースの An Introduction to Behavioral Economics が、同じテーマ(ヒューリスティック、リスク、時間、社会的選好、政策)についてモデルと証拠を並べて示す学部向け教科書である。バデリーの各章はそれらの構成とよく対応しており、各テーマの予習として使える。サンジット・ダーミの The Foundations of Behavioral Economic Analysis と、カメラー、ローウェンスタイン、ラビン編の論文集 Advances in Behavioral Economics は、大学院レベル・研究レベルの資料であり、後の学習向けである。

本書の使い方

本書は、初めて行動経済学に触れる経済学の学生、経済学者の見方を知りたい心理学や政策学の学生、そして一般読者に向いている。経済学や心理学の予備知識は形式上必要ないが、第1章は展開が速い。経済学に不慣れな読者は二度読むか、第4章の後に戻って読むとよい。

推奨する読み方:

  • 中核(第1、4、5、6章): 合理性、ヒューリスティック、リスク、時間は、どの教科書も扱うテーマであり、これらの章はその直接の準備になる。第5章はゆっくり読むこと。そこに挙げられたパラドックスと効果は、プロスペクト理論の標準的な試金石である。
  • 視野を広げる(第2、3、7章): 動機、社会的選好、感情。労働経済学、公共経済学、医療経済学、あるいは心理学の学生には特に役立つ。
  • 応用(第8〜9章): 第9章はナッジに関する授業の単元と並行して読み、従来の政策を補完するという結びの主張を議論の材料にするとよい。

数回に分けて読み切れる分量である。各章で言及される主要な実験を、エジャートンがそうしたように調べ、そのうえで同じテーマを教科書の章で追うとよい。そこでは同じ考え方の形式的な形が展開されている。