01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Wilkinson, N., & Klaes, M. (2017). An Introduction to Behavioral Economics (3rd ed.). Bloomsbury Academic.
章の要約
第3版は5部11章で構成され、約600ページに及ぶ。出版社は、行動経済学の主要な話題を網羅的かつ厳密に、批判的に概観した本だと説明している。心理学、進化生物学、神経科学を取り込む学際的な姿勢をとり、学部の高学年や修士課程の学生を対象としている。
第1〜2章:行動経済学の性質、方法論
第I部「序論」は、約26ページの第1章でこの分野の性質を述べ、約32ページの第2章でその方法論を論じる。両章は合わせて、行動経済学を定義し、個別の話題に入る前に、その証拠がどのように得られるかを説明する。
第3〜6章:価値・選好・選択、信念と期待、リスクと不確実性のもとでの意思決定、メンタル・アカウンティング
第II部「基礎」は最も長い部で、個人の意思決定の構成要素を扱う。価値・選好・選択、信念と期待、リスクと不確実性のもとでの選択、そしてメンタル・アカウンティングである。約69ページの第5章が、この部で最も長い。
第7〜8章:割引効用モデル、代替的な異時点間選択モデル
第III部「異時点間の選択」は、まず約22ページの短い章で割引効用モデルを示し、次に約59ページのより長い章で、時間をまたぐ選択の代替的なモデルを論じる。
第9〜10章:行動ゲーム理論、社会的選好
第IV部「戦略的相互作用」は、結果が他者に左右される場面に向かう。第9章は行動ゲーム理論を扱い、第10章は社会的選好を扱う。第10章は約73ページで、全体で最も長い。
第11章:行動経済学:まとめと展望
第V部「結論」は約43ページの1章のみで、この分野をまとめ、今後を展望する。
主要概念
序論と基礎(第1〜6章)
- 行動経済学:心理学および関連分野の証拠に基づいて経済的意思決定を研究すること。第1章で説明される。
- 選好と信念:個人の意思決定の拠り所となる価値、選択、信念、期待。
- リスクと不確実性のもとでの意思決定:結果が確実でないときに人がどう選ぶか。
- メンタル・アカウンティング:お金や意思決定を、人が心の中の別々のカテゴリーに振り分けるやり方。
異時点間の選択(第7〜8章)
- 割引効用モデル:時間をまたぐ選択の標準的なモデルで、他のモデルはこれを基準として比べられる。
- 代替的な異時点間選択モデル:時間の標準的な扱い方から離れるモデル。
戦略的相互作用と結論(第9〜11章)
- 行動ゲーム理論:理想化された行動ではなく、実際の行動を許容する戦略的分析。
- 社会的選好:他者の結果や公平性への関心。
出版社が強調するテーマ
- ヒューリスティックスとバイアス:判断における体系的な近道と誤りで、この版で扱いが拡充されている。
- 神経経済学:脳に関する証拠の利用で、出版社はこの版の新しい内容として挙げている。
- 合理性:合理的であるとはどういうことか、また非合理に見える行動がなぜ時に人の役に立つのか。
批判的分析
長所
- 学際的な姿勢が明確。 出版社は、心理学、進化生物学、神経科学のすべてが取り入れられていること、また著者が、合理的であるとは何か、非合理に見える行動がなぜ時に人のためになるのかを問うていることを述べている。
- 標準モデルに対応した順序。 各部は、価値・信念・リスクから時間、そして戦略的相互作用と社会的選好へと進み、これは標準的な選択理論の主要な話題に沿っている。また第7章では、代替モデルを取り上げる前に、標準的な割引効用モデルが示される。
- 重要な話題の持続的な扱い。 各章のページ範囲からは、リスクと不確実性のもとでの選択(約69ページ)、代替的な異時点間モデル(約59ページ)、社会的選好(約73ページ)が長い章になっていることがわかり、これらの話題が十分な分量で論じられている。
- 教材。 出版社は、第3版で例と復習問題が増えたと述べており、付属のウェブサイトには教員向けのスライドと、学生向けの追加問題・参考文献がある。
- 新しい事例。 第3版では、英国のEU離脱国民投票やトランプ当選での投票行動、肥満の流行といった時事的な事例が加わった。
短所
- 穏やかな入門ではない。 出版社は学部高学年と修士課程の学生を対象としており、厳密さと批判的検討に重点を置くため、短い入門書より密度が高い。
- 政策の章がない。 目次には、福祉や政策への応用を扱う独立の章がない。Cartwright の Behavioral Economics では、これらにそれぞれ章が与えられている。
- 時期。 本版は2017年のもので、それ以降のこの分野の展開は含まれていない。
コースにおける位置づけ
Wilkinson と Klaes の本と Edward Cartwright の Behavioral Economics は、この書目にある2冊の主要な学部向け教科書である。Cartwright は行動経済学を、実験とフィールドの証拠を伴うモデルの集まりとして示し、学習、進化と文化、神経経済学、幸福と効用、政策に別々の章を設けている。Wilkinson と Klaes は、時間をまたぐ選択に2つの章、すなわち割引効用モデルとその代替モデルを充て、メンタル・アカウンティングにも独立した章を与えている。両方を使うことも可能で、一方を主教科書とすればよい。
Michelle Baddeley の Behavioural Economics: A Very Short Introduction は簡潔な概観であり、Richard Thaler の Misbehaving はこの分野の発展を当事者が語る記録である。どちらも教科書の前の最初の一読に向く。Camerer、Loewenstein、Rabin の Advances in Behavioral Economics は影響力のある学術論文の編集論文集であり、教科書の考え方に慣れたあとで一次文献を読む自然な方法である。Sanjit Dhami の The Foundations of Behavioral Economic Analysis は、体系的で形式的な扱いを求める読者のための大学院水準の概論書である。
本書の使い方
出版社は、本書を学部高学年と修士課程の学生に向けている。中級ミクロ経済学が妥当な準備であり、リスクと時間の章では確率と代数の知識も役立つ。標準モデルをすでに知っていて、それがどのように批判されるかを見たい学生に向く。
実際的な進め方は次のとおりである。
- 中核: この分野の目的と方法を知るために第1・2章、続いて、後の部が使う概念を提供する第II部(第3〜6章)。
- 次に: 時間を扱う第III部(第7・8章)と、戦略的相互作用と社会的選好を扱う第IV部(第9・10章)。第II部のあとは、時間が限られていればどちらを先にしてもよい。
- 締めくくり: この分野と未解決の問いをまとめた第11章。
各章を読み終えたら、復習問題と付属ウェブサイトの追加問題で理解を確かめる。本書は標準モデルに繰り返し立ち返るので、行動経済学の代替理論を読む前に、各話題の合理的選択版を頭に入れておくと役に立つ。
