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Physical Chemistry: Understanding our Chemical World(物理化学:身のまわりの化学を理解する) cover

化学

化学

Physical Chemistry: Understanding our Chemical World(物理化学:身のまわりの化学を理解する)

Paul M. S. Monk

英語原題: Physical Chemistry: Understanding our Chemical World

学部1年生向けの物理化学入門教科書で、各原理をまず身近な場面から導入し、そのあとで理論を展開する。気体、結合、熱力学、相平衡、酸と塩基、電気化学、反応速度論、分光学と光化学、表面とコロイドを扱い、自己評価問題を備える。

前提知識: 高校の化学と数学。用いる代数と簡単な微積分は本書の中で復習される。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
physical chemistrythermodynamicskineticselectrochemistry教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Monk, P. M. S. (2004). Physical Chemistry: Understanding our Chemical World. Wiley.

章の要約

本書は約620ページ、全10章からなり、各章は番号付きの節に分かれている。出版社は本書の進め方を「例が先」と説明している。まず日常の場面や応用を示し、それを説明するのに必要な化学と数学の理論を後から展開する。巻頭には「語源的序論」(Etymological Introduction)、記号一覧、標準接頭語の表があり、巻末には自己評価問題(SAQ)の解答と参考文献が付く。最も長いのは電気化学と反応速度論を扱う第7章と第8章で、それぞれ約70ページある。

第1章:物理化学への導入

最初の章は、変数・関係・法則という枠組みで物理化学とは何かを問い、続いて熱力学的測定の実際に移る。気体の性質と気体の法則は独立した章ではなくこの章で扱われ、章の最後ではエネルギーについてさらに考察する。

第2章:相互作用と結合への導入

物理的・分子的な相互作用から始め、それらとその影響を定量化する方法へ、さらに形式的な化学結合の形成へと進む。結合を主に扱うのはこの章であり、原子構造や量子力学に充てた独立の章はない。

第3章:エネルギーと熱力学第一法則

本格的な熱力学は内部エネルギーから始まり、エンタルピー、そして直接測定できない変化についてのエンタルピーの間接的な求め方へと続く。

第4章:反応の自発性と熱力学的変化の方向

物理化学的変化の方向を決める指標としてエントロピーを導入し、その温度依存性、ギブズ関数、熱力学変数に対する圧力の影響、熱力学と反応進行度の関係、温度の影響を順に扱う。

第5章:相平衡

エネルギーの観点からの導入の後、圧力と温度が変化するときの一成分系をまず定性的に、次に定量的に扱う。続いて、分配、束一的性質、蒸気圧の関わる平衡を通じて二成分系に進む。

第6章:酸と塩基

ローリー–ブレンステッドの酸と塩基、「強い」酸・塩基と「弱い」酸・塩基の区別、滴定分析、pH緩衝液、酸塩基指示薬。この内容は、多くの学科で分析化学として教えられる範囲と重なる。

第7章:電気化学

電池の用語と背景から始めて、半電池と電極電位、活量、ネルンストの式、濃淡電池、輸送現象を導入し、最後に実用電池(バッテリー)を扱う。

第8章:化学反応速度論

まず定義を述べ、濃度変化を定性的に論じた後、積分形速度式、複雑な反応の速度論的取り扱いへ進み、最後に速度論の熱力学的側面である活性化エネルギー、絶対反応速度、触媒作用を扱う。

第9章:光の関わる物理化学:分光法と光化学

分光法と光化学は一つの章にまとめられている。光子の吸収と波長の影響、光化学的・分光学的選択則、光物理過程としての発光と失活、その他の光学的効果を扱う。

第10章:吸着と表面、コロイドとミセル

最後の章は吸着を定義し、コロイドと界面科学、コロイドの安定性、会合コロイド(ミセル)を扱う。

主要概念

第1–2章:基礎

  • 気体の法則:気体の圧力・体積・温度・物質量の関係で、第1章で導入される。
  • 分子間相互作用:分子どうしに働く力。本書は形式的な化学結合に進む前にこれを定量化する。

第3–5章:熱力学と相平衡

  • 内部エネルギーとエンタルピー:系のエネルギーと定圧で出入りする熱。第一法則で扱う量である。
  • エントロピーとギブズ関数:自発的変化の方向を決める尺度。
  • 分配:互いに混じり合わない二つの相の間で溶質が分かれて存在すること。本書ではこれが二成分系の平衡への入口になる。
  • 束一的性質:溶質の種類ではなく量によって決まる溶液の性質。

第6–7章:酸・塩基と電気化学

  • 緩衝液と指示薬:pHの変化に抵抗する溶液と、色でpHを示す物質。
  • 電極電位とネルンストの式:半電池の電位が関与する化学種の活量にどう依存するかを表す。
  • 活量:非理想溶液で単純な濃度に代わって用いられる有効濃度。

第8–10章:反応速度、光、表面

  • 積分形速度式:ある反応次数について、濃度を時間の関数として与える式。
  • 活性化エネルギーと触媒作用:反応のエネルギー障壁と、触媒が速度を変える仕組み。
  • 選択則:どの分光学的・光化学的遷移が許容されるかを決める規則。
  • ミセル:溶液中で界面活性剤分子がつくる集合体。最終章の会合コロイドにあたる。

批判的分析

長所

  • 理論より先に応用。 出版社が掲げる方針は、実生活の例と応用を先に示し、理論はその後に、短く独立した章で展開するというものである。抽象的な導出に抵抗のある学生にとって、この順序は式が出てくる前に各テーマを学ぶ理由を与えてくれる。
  • 書評が認める読みやすさ。 出版社が引用する書評の抜粋は、本書を面白く、読みやすく、内容が理解しやすいと評し(Journal of Chemical Education、2006年5月)、著者がこの分野の「厄介な問題」を不必要な神秘化なしに扱っていると評価し(Clinical Chemistry、2005年6月)、その取り組みを独創的で新鮮だと述べている(Chemistry and Industry、2004年9月)。
  • 自己テストの仕組み。 巻末に解答のある自己評価問題によって、別冊の解答集がなくても節ごとに理解を確かめられる。
  • 中核に実践的な化学。 滴定、緩衝液、指示薬、電池、コロイド、ミセルがそれぞれ節として立てられており、理論先行の教科書よりも物理化学を実験室や身近な物質に結びつけている。

短所

  • 量子化学と統計熱力学がない。 目次には量子力学、原子構造、統計力学の章がない。結合は第2章の中で、分光法は光化学と共有する一つの章で扱われるだけである。これらを含む授業では別の教科書が必要になる。
  • 2004年の一版のみ。 改訂されていないため、バッテリーの節などの応用は2000年代初めの技術とデータを反映している。
  • 深さより幅。 気体からコロイドまで、最初の授業の範囲全体を10章で扱うので、各テーマは入門的な扱いにとどまる。物理化学をさらに学ぶ学生は、導出や難しい問題のためにより本格的な教科書を必要とする。

コースにおける位置づけ

このコースの文献リストの中で、Monkは最もやさしい本格的な教科書である。Peter Atkinsの Physical Chemistry: A Very Short Introduction は、この分野の中心的な考え方を数式をほとんど使わずに簡潔にたどる本で、先に読めば全体の見取り図が得られる。そのうえでMonkが実際に使う式とSAQによる演習を提供する。Raymond Changの Physical Chemistry for the Chemical and Biological Sciences は化学と生物学にまたがる学生向けの取り組みやすい教科書で、量子論の考え方と分子構造も扱うため、Monkが扱わない話題に進む自然な次の一冊になる。

Atkins、de Paula、Keelerの Physical Chemistry は、量子力学と統計力学を含め、物理化学の全課程をカバーする網羅的で数学的にも要求の高い主教科書である。Monkはその熱力学、平衡、電気化学、反応速度論の章に対する予習用あるいは併読用としてよく機能する。McQuarrieとSimonの Molecular Thermodynamics は統計力学を通じて分子の側から熱力学に迫る本で、Monkの第3–5章の古典熱力学が身についた後、ずっと後の段階で読むべきものである。

本書の使い方

出版社は本書を、物理化学の最初の授業を受ける学部生向けとし、基本原理から出発する本だと説明している。化学専攻の1年生、物理化学を一科目だけ必要とする隣接分野(生物学、環境科学、材料、薬学)の学生、そして身近な状況に結びついた説明を求めて物理化学に戻ってくる人に向いている。出版社が基本原理から出発すると述べている以上、学び始めるには高校までの化学と数学で足りるはずである。

実践的な計画:

  • 中核の順序: 第1、3、4、5章を順に読む。これらが以後のすべての土台となる熱力学(エネルギー、エンタルピー、エントロピー、ギブズ関数)を築く。第4章の圧力、温度、反応進行度の節は平衡への橋渡しである。
  • 次に: 第8章の反応速度論。最後の節が活性化エネルギーと絶対反応速度を通じて速度を熱力学に結びつけるので、第4章の後に読む。
  • 授業の重点に応じて: 溶液平衡と電気化学を含む授業なら第6章と第7章、分光法と光化学への導入には第9章、材料・製剤・薬学系の学生には第10章。
  • 第2章 は一般化学からの橋渡しとして早めに読んでもよく、結合について最近学んだ学生は飛ばしてもよい。

SAQは章末にまとめてではなく出てきたその場で解き、巻末の解答で確かめるとよい。本書は量子化学と統計力学の手前で終わるので、授業がそれらに進むときはChangやAtkins、de Paula、Keelerと組み合わせ、より難しい演習にはそれらの章末問題を使うとよい。