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Elements of Environmental Chemistry(環境化学の基礎) cover

化学

化学

Elements of Environmental Chemistry(環境化学の基礎)

Jonathan D. Raff; Ronald A. Hites

英語原題: Elements of Environmental Chemistry

問題を解くことを軸に組み立てた、短く定量的な環境化学の入門書。単位換算、物質収支、反応速度論から出発して濃度・寿命・フラックスの見積もり方を示し、大気化学、オゾン、気候変動、二酸化炭素の平衡、有機汚染物質の行方に応用し、最後に有害物質の章を置く。

前提知識: 一般化学と基本的な代数。反応速度論では少しの微積分が役立つ。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
environmental chemistryatmospheric chemistrywater chemistrypollutantsproblem solving

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Raff, J. D., & Hites, R. A. (2020). Elements of Environmental Chemistry (3rd ed.). Wiley.

章の要約

第3版は約290ページ、全7章の短い本で、出版社は環境化学の基礎と、それを応用するための道具一式を与える簡潔で実践的な本だと説明している。最初の6章はそれぞれ問題集で終わり、出版社によれば問題は全部で130問を超え、その一部はExcelで解ける。第1–6章の問題集の解答は付録にある。公開されているサンプル章を見ると、短い説明の後に、計算の前に方針を示す例題が続き、くだけた語り口で書かれている。付録には有機化合物の構造と名称の入門、周期表、定数表がある。この版で著者たちは本書を全面的に改訂・再構成した。道具の章に熱力学と測定が加わり、分配の章は有機化合物の運命を扱う章に拡張され、有害物質に関する内容は最終章にまとめられた。

第1章:簡単な道具の技能

環境科学者が繰り返し出会う作業:単位換算、見積もり、理想気体の法則、化学量論、熱力学的考察(エンタルピー、エントロピー、ギブズ自由エネルギー)、測定上の問題。例題は単位換算を省略せずに書き出すこと、結果を妥当な有効数字で報告すること(著者によれば、環境のたいていの場合は2桁で足りる)を強く求める。測定の節では、正確さ、精密さ、そして分析の速さと質のトレードオフを論じる。

第2章:物質収支と反応速度論

中核となる定量的な章。定常状態の物質収支を、流れ、ストック、滞留時間から組み立て、複数の流れの足し合わせや、「フラックスは流れではない」という区別も扱う。続いて非定常状態の物質収支を、増加曲線と減少曲線、実データの扱いを通じて学び、さらに一次反応、二次反応、ミカエリス–メンテン型の速度論へ進む。

第3章:大気化学

大気の構造、光と光化学、大気中の酸化剤、そして擬定常状態の例とアレニウスの式による大気反応の速度論。成層圏オゾンはその生成と消失の機構、チャップマン反応の速度論を通じて扱われ、章はスモッグで締めくくられる。

第4章:気候変動

歴史的な経緯から始め、黒体放射と地球の温度、赤外線の吸収、温室効果を扱う。地球の放射収支は温室効果ガス、アルベド、太陽定数、それらの複合効果に分けて論じられ、続いてエアロゾルと雲、放射強制力、地球温暖化係数が扱われる。

第5章:二酸化炭素の平衡

pHと平衡定数を水中の二酸化炭素に適用する:清浄な雨と汚染された雨のpH、酸性雨の化学とその影響の補足、地表水、海洋酸性化。

第6章:有機化合物の運命

問題を伴う章の中で最も長い章である。分子間の相互作用(電気陰性度、双極子と四極子、弱い相互作用の種類)から出発し、それを用いて蒸気圧、液体・固体・気体の水溶解度、有機相への分配と生物への分配(生物濃縮、生物蓄積、生物増幅)、吸着、水–大気間の移動を説明する。最後に有機汚染物質の反応による運命を扱い、分配と残留性を総合する節で締めくくる。出版社によれば、構造から化学物質の運命を予測する「化学的直感」を養うことに重点が置かれている。

第7章:有害物質:水銀、鉛、農薬、ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシン、難燃剤

主に記述的な章で、物質と事例をもとに構成されている。水銀、鉛、農薬の歴史、過去に使われた農薬と現在使われている除草剤・殺虫剤・燻蒸剤・殺菌剤、PCBの命名法・生産・用途(ハドソン川、インディアナ州ブルーミントン、油症と台湾油症の事例研究を含む)、ダイオキシンの命名法(ひな浮腫病、枯葉剤、タイムズビーチ、セベソ、燃焼源、米国のダイオキシン再評価を含む)、臭素系およびその他の難燃剤。章は「学んだ教訓」で終わり、ほかの章と違って問題集はない。

主要概念

第1–2章:道具

  • 見積もり:結果が妥当かどうかを確かめるための、桁の大きさをつかむ素早い計算。
  • 滞留時間:ある貯留層中の物質のストックを、そこを通る流れで割ったもの。
  • フラックスと流れ:フラックスは単位面積あたりの流れであり、本書は両者を混同してはならないと強調する。
  • 非定常状態の物質収支:流入と流出が等しくないときに、貯留層中の量が時間とともにどう増減するかを記述すること。

第3–4章:大気と気候

  • 擬定常状態近似:寿命の短い化学種の濃度を一定とみなして速度論を簡単にする方法。
  • チャップマン反応:成層圏オゾンの生成と消失の基本的な反応機構。
  • 放射強制力:温室効果ガスの増加などの変化によって生じる地球のエネルギー収支の変化。
  • 地球温暖化係数:ある気体の温暖化効果を二酸化炭素と比較した値。

第5章:二酸化炭素の平衡

  • 炭酸平衡:溶けた二酸化炭素の反応で、雨や自然水のpHを決める。
  • 海洋酸性化:海洋が二酸化炭素を吸収することによる海水のpHの低下。

第6–7章:有機化合物と有害物質

  • 分配:化合物が大気、水、有機相、生物の間でどう分布するか。
  • 生物増幅:食物連鎖の上位ほど汚染物質の濃度が高くなること。
  • 残留性:化合物が変化を受けるまで環境中にどれだけ長くとどまるか。
  • 同族体の命名法:個々のPCBやダイオキシンを命名する体系。

批判的分析

長所

  • 最初のページから定量的。 本書は環境化学を計算として教える。第1章と第2章で少数の道具(単位換算、見積もり、物質収支、反応速度論)を組み立て、それを大気、気候、水に適用する。単位換算を書き出すことや現実的な有効数字を重視する姿勢は、授業を超えて役立つ実践的な訓練である。
  • 解答付きの問題。 一部はExcel向けの130問以上の問題があり、第1–6章の問題集の解答が巻末にあるので、独習にも使える。
  • 短く焦点が明確。 300ページ足らずなので1学期で読み通すことができ、第3版の再構成によって各章の役割がはっきりしている。
  • 事例に基づく有害物質の扱い。 第7章は農薬、PCB、ダイオキシン、難燃剤を具体的な事件や場所に結びつけて扱い、出版社によればこの部分には文献への参照が増えている。

短所

  • 扱う範囲が選択的。 土壌化学、水処理、グリーンケミストリーの章はなく、本書は分野全体の概観というより、選ばれた道具と問題への入門である。
  • 第7章は定量的ではない。 最終章には問題集がなく、本書の他の部分の計算中心のアプローチから外れている。
  • ある程度の化学が前提。 第6章と第7章に必要な有機化学は短い付録の入門にまとめられ、第1章の熱力学も簡単な復習にとどまるので、一般化学を学んでいない学生には進み方が速く感じられるだろう。

コースにおける位置づけ

RaffとHitesは、このコースにおける理系学生向けの定量的な入門書である。アメリカ化学会による非理系学生向けの Chemistry in Context は同じ問題(大気、気候、水、エネルギー)を計算をほとんど使わずに紹介しており、化学の素養のない読者は先にそちらを読むとよい。Stanley Manahanの Environmental Chemistry は大気、水、土壌、生物系、グリーンケミストリーを扱うはるかに幅広い教科書で、RaffとHitesが扱わない話題を補う併読書になり、RaffとHitesは問題演習を提供する。Mike Lancasterの Green Chemistry: An Introductory Text は、本書が扱わないよりクリーンな化学プロセスの設計を扱う。

2冊の大学院レベルの教科書は、特定の章をさらに深める。Schwarzenbach、Gschwend、Imbodenの Environmental Organic Chemistry は第6章の分配と変換の過程を完全に定量的に展開し、SeinfeldとPandisの Atmospheric Chemistry and Physics は第3–4章の大気反応速度論、オゾン、気候の内容について同じことをする。RaffとHitesはどちらに対してもよい準備になる。

本書の使い方

本書は化学・環境科学の学生と専門家向けに書かれている。前提となるのは一般化学と代数への慣れで、必要な熱力学と反応速度論は第1–2章で復習され、後で使う有機化合物の構造と名称は付録Aで扱われる。

1学期の実践的な計画:

  • 第1章と第2章は飛ばさない。 以後のすべての章が単位換算、物質収支、反応速度論を使う。これらの章の問題集が残りの章への最良の準備になる。
  • 大気と気候: 第3章と第4章を順に読む。第3章の大気反応速度論は第2章を直接使う。
  • 水: 平衡定数を雨、地表水、海洋に適用する第5章。
  • 有機汚染物質: 第6章、続いて個々の物質と事例についての読み物として第7章。有機化合物の命名法になじみがなければ、先に付録Aを読むとよい。

例題は解答を隠して示された方針に従って解き、その後で問題集に取り組み、付録Dで確かめるとよい。Excel向きの問題は表計算ソフトで解いてみるとよく、非定常状態の物質収支を扱う2.2.3節のように実データを当てはめる作業が手始めにふさわしい。環境化学をさらに学ぶ学生は、有機化合物についてはSchwarzenbachらに、大気についてはSeinfeldとPandisに進むことができる。