01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
American Chemical Society, Fahlman, B. D., Purvis-Roberts, K., Bouvier-Brown, N., Kirk, J. S., Sloan, C. C., Kelly, R. M., Daubenmire, P. L., & Ryan, S. (2024). Chemistry in Context: Applying Chemistry to Society (2024 release). McGraw-Hill Education.
章の要約
Chemistry in Context は1993年から続くアメリカ化学会(ACS)のプロジェクトで、2024年リリースは約650ページ、全14章からなる。出版社は本書の目標を、非理系の学生のために化学の原理を「必要に応じて」示し、学生が自分の生活や、気候変動、再生可能エネルギー、代替燃料、栄養、遺伝子工学といった問題を通じて化学を学べるようにすることだと述べている。そのため各章は化学の分野名ではなく話題の名で呼ばれ、化学はその話題が必要とするところで導入される。章内の「Your Turn」問題の解答は付録にあり、章末問題の一部(本文中で青色で示されたもの)の解答も付録にある。ほかの付録では、メートル法の接頭語・換算係数・定数、指数(「The Power of Exponents」)、対数(「Clearing the Logjam」)を扱い、用語集もある。本書はMcGraw Hillの「Evergreen」方式で刊行されており、内容は番号付きの版ではなく日付の付いたリリースとして更新される。
第1章:携帯型電子機器:手のひらの中の周期表
最初の章は携帯型電子機器を文脈とし、その題名は周期表を機器の中の材料と結びつけている。
第2–4章:私たちが吸う空気、太陽からの放射、気候変動
大気に関する3つの章で、空気の組成と質、太陽から地球に届く放射、気候変動を扱う。本書の中で環境化学の授業に最も直接対応するのはこの部分である。
第5章:どこにでもある水:最も貴重な資源
資源としての水を扱い、これが本書における水と水溶液の扱いの文脈となる。
第6–8章:燃焼によるエネルギー、原子力エネルギーとその他の代替エネルギー源、エネルギー貯蔵
エネルギーに関する3つの章で、燃料の燃焼、原子力とその他の代替エネルギー源、エネルギーの貯蔵を扱う。
第9章:ポリマーとプラスチックの世界
ポリマーとプラスチックを扱う。出版社の紹介文が、化学に依存する身近な製品の例として挙げている材料である。
第10–13章:醸造と咀嚼、栄養、健康と医療、遺伝子と生命
本書の後半は食べ物と生物学に向かう。飲食物の化学、栄養、健康と医療、遺伝学である。
第14章:Dr. Thompsonを殺したのは誰か?法科学のミステリー
最終章は法科学の事件という枠組みで構成されている。
主要概念
第1–5章:材料、大気、水
- 周期表:元素の体系で、第1章ではこれを身近な機器と結びつける。
- 大気質:空気の組成と、その質を損なう物質。第2章の話題である。
- 太陽放射:太陽から地球に届くエネルギー。第4章の気候変動の前に第3章で扱われる。
- 資源としての水:入手可能性と利用という枠組みで捉えた水の化学。
第6–9章:エネルギーと材料
- 燃焼:エネルギー源としての燃料の燃焼。
- 代替エネルギー源:第7章でまとめて扱われる原子力とその他のエネルギー源。
- エネルギー貯蔵:エネルギーを蓄える方法。第8章の主題である。
- ポリマー:繰り返し単位からなる巨大分子で、プラスチックの基礎となる。
第10–14章:食べ物、健康、生命
- 栄養:体が利用する食べ物中の物質の化学。
- 遺伝子工学:出版社が挙げる問題の一つで、遺伝子と生命の章に関わる。
- 法科学:犯罪捜査に応用される化学で、最終章の枠組みとなる。
批判的分析
長所
- ふだん化学を学ばない学生のための設計。 出版社は本書を非理系の学生向けとしており、章立ては学生がすでに関心を持っている話題に沿っている。カタログの紹介文に引用された本書冒頭の言葉は、ほとんどの化学教科書が実社会での応用をあまり詳しく扱わないと述べ、Chemistry in Context をその代わりとなる本として示している。
- 学会が支える長期のプロジェクト。 本書は1993年からアメリカ化学会のもとで開発されてきたもので、2024年リリースも以前の版の文脈重視の枠組みを引き継いでいる。
- 自己チェックの仕組み。 章内の「Your Turn」問題の解答は付録4に、章末問題の一部の解答は付録5にあるので、学生は自分で進度を確かめられる。指数と対数の付録は、数学の力が落ちている学生の助けになる。
- 社会的な話題の幅広さ。 エネルギー、気候、水、材料、食べ物、医療、遺伝学がすべて登場し、科学リテラシーを目指す教養科目に向いている。
短所
- 体系的な化学の授業ではない。 原理は話題が必要とするところでしか導入されないため、一般化学を通常の順序で積み上げるわけではない。理系の専攻に進む学生には、やはり標準的な一般化学の教科書が必要である。
- 環境に関するのは一部だけ。 大気、気候、水、エネルギーを扱うのはおよそ半分の章(第2–8章)で、第10–14章は食べ物、健康、遺伝学、法科学に移る。環境化学の授業では後半の章は任意となる。
- 定量的な深さは限られる。 「必要に応じて」という方針と、指数や対数の付録があることから、数学のレベルは控えめだと考えられる。理系学生向けの環境化学の授業が求めるような、濃度、フラックス、寿命の計算のための本ではない。
コースにおける位置づけ
本書は理系の素養のない読者にとってのこのコースの入口であり、リストの中で唯一非理系の学生向けに書かれた本である。理系の学生にとって自然な次の一冊は、Jonathan RaffとRonald Hitesの Elements of Environmental Chemistry である。これは短く定量的な問題解決型の入門書で、第2–5章の話題(大気、オゾン、気候、水)を計算問題に変える。Stanley Manahanの Environmental Chemistry は、一般化学を学んだ学生向けに化学の原理を大気、水、土壌、生物系に応用する本格的な教科書である。Mike Lancasterの Green Chemistry: An Introductory Text は害の少ない化学製品と化学プロセスの設計を扱うが、Chemistry in Context ではこの話題にはエネルギーと材料の章で触れるだけである。
リストにある大学院レベルの教科書、SeinfeldとPandisの Atmospheric Chemistry and Physics と、Schwarzenbach、Gschwend、Imbodenの Environmental Organic Chemistry は本書から何段階も先にあり、間に化学の本格的な課程を挟まずに続けて読むのは現実的ではない。
本書の使い方
本書は教養科目としての科学の授業、高校以来化学を学んでいない1年生、技術的な授業の前に問題中心の概観を得たい理系の学生に向いている。高校レベルの代数と理科で足り、最もよく必要になる数学の道具は指数と対数の付録で補える。
実践的な計画:
- 環境に焦点を当てる場合: 第1–8章を順に読む。第1章は携帯型電子機器を通じて周期表を導入し、第2–4章が大気と気候、第5章が水、第6–8章がエネルギーを扱う。
- より幅広いリテラシーの授業の場合: ポリマーの第9章を加え、学生の関心(食べ物と栄養、医療、遺伝学、法科学)に応じて第10–14章から選ぶ。
- 演習: 「Your Turn」問題は出てくるたびに解いて付録4で確かめる。章末問題は、付録5に解答のある青色の問題から始めるとよい。
本書を予備知識として使う理系の学生は、定量的な環境問題の解き方を学ぶためにRaffとHitesに、原理を体系的に学ぶために標準的な一般化学の教科書に進むとよい。内容はリリースごとに更新されるので、手元のリリースが授業で指定されたものと一致しているか確認すること。
