01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Lancaster, M. (2025). Green Chemistry: An Introductory Text (4th ed.). Royal Society of Chemistry.
章の要約
出版社の説明によれば、第4版もグリーンケミストリーの中核となる原則を中心に据えつつ、グリーンケミストリーが社会の直面する環境問題の解決にどう役立つかを新たに強調している。エネルギーの脱炭素化と気候変動に関する新しい章や、国連の持続可能な開発目標についての議論も含まれる。以下に、目次に挙げられている章題を順に示す(番号はその順序による。章題のみで、節の見出しは得られていない)。
第1〜3章:Principles and Concepts of Green Chemistry(グリーンケミストリーの原則と概念);Production Problems and Prevention(生産上の問題と予防);Measuring and Controlling Environmental Performance(環境性能の測定と制御)
第1章は、説明が本書の中核と呼ぶ原則と概念を示す。続く二つの章は、生産上の問題とその予防、および環境性能の測定と制御を扱い、原則を工程や製品に関する根拠と結びつける。
第4〜5章:Catalysis and Green Chemistry(触媒とグリーンケミストリー);Environmentally Benign Solutions(環境にやさしい解決策)
触媒に独立した章が充てられ、続いて「Environmentally Benign Solutions」と題する章が置かれている。
第6〜7章:Renewable Resources(再生可能資源);Emerging Greener Technologies and Alternative Energy Sources(新たに登場するより環境にやさしい技術と代替エネルギー)
再生可能資源に関する章と、新しいより環境にやさしい技術と代替エネルギー源に関する章。
第8〜9章:Designing Greener Processes(より環境にやさしい工程の設計);Energy Decarbonisation and Climate Change(エネルギーの脱炭素化と気候変動)
第8章は、より環境にやさしい工程の設計を扱う。第9章は今回の版で新設された章で、出版社によれば、持続可能なエネルギーの解決策と化石燃料に頼らない化学産業の可能性をまとめ、グリーンケミストリーが輸送や発電といった部門のネットゼロ達成にどう役立つかを示す。
第10〜11章:Industrial Case Studies(産業界の事例研究);An Integrated Approach to a Greener Chemical(より環境にやさしい化学への統合的アプローチ)
最後の二つの章は原則から実践へと移り、産業界の事例研究と、統合的なアプローチを扱う。出版社は、本書が基礎に加えて、初版以来発展してきた実用的な解決策も取り上げていると述べている。
主要概念
第1〜3章:原則と性能
- グリーンケミストリーの原則と概念:害と廃棄物を減らす製品や工程を設計するための中心的な考え方(第1章)。
- 生産上の問題と予防:問題を事後に処理するのではなく、発生源で防ぐこと(第2章)。
- 環境性能:その測定と制御(第3章)。
第4〜7章:手段と原料
- 触媒:よりグリーンな化学における役割(第4章)。
- 環境にやさしい解決策:同名の章の主題(第5章)。
- 再生可能資源と代替エネルギー:再生可能な原料と新たな技術(第6〜7章)。
第8〜11章:工程、気候、実践
- よりグリーンな工程設計:工程を全体として設計すること(第8章)。
- エネルギーの脱炭素化と気候変動:持続可能なエネルギーと化石燃料に頼らない化学産業(第9章)。
- 産業界の事例と統合:原則が組み合わされて適用される様子を見ること(第10〜11章)。
批判的分析
長所
- 教育の現場に根ざしている。 出版社は、本書がもともとヨーク大学のクリーンテクノロジー(Clean Technology)の修士課程と関連する学部の科目のために作られたと述べており、授業での使用から生まれたものである。
- 産業界の視点。 著者は最近、英国化学工業協会(Chemical Industries Association)を退職し、化学産業での約20年の経験をもち、王立化学会のグリーンケミストリー・ネットワークを設立した。目次は産業界の事例研究と統合的なアプローチで終わる。
- 現在の課題に即した枠組み。 第4版は、エネルギーの脱炭素化と気候変動に関する章を加え、グリーンケミストリーを国連の持続可能な開発目標と結びつけており、この分野を実験室での実践だけでなく、現在の政策とも関連づけている。
- 幅広い読者。 出版社は、本書が学部生、大学院生、およびより持続可能な製品や工程を開発する新しい考え方を求める産業界の人々に適していると述べている。
短所
- 環境化学の教科書ではない。 各章は製品と工程の設計を扱っており、空気、水、土壌中での汚染物質の挙動を主題とする見出しはないため、その面では環境化学の教科書と組み合わせる必要がある。
- 版による違いがある。 エネルギーの脱炭素化と気候変動に関する新章や、持続可能な開発目標の議論は第4版のものであり、以前の版とは内容が異なる。
- 章題の水準の情報しかない。 出版社のページには章の見出しはあるが節の構成はないため、各章がどれだけ化学的な詳細に踏み込んでいるかは、実物で確かめる必要がある。
コースにおける位置づけ
Lancaster の本は、このコースで、化学を設計する一つのやり方としてのグリーンケミストリーを専門に扱う本である。Manahan の Environmental Chemistry は環境の各圏を幅広く概観するもので、人間圏、産業エコロジー、グリーンケミストリーの章が Lancaster の主題と重なる。先に Manahan を読めば、Lancaster の原則が応答している環境問題の背景がわかる。Raff と Hites の Elements of Environmental Chemistry は、環境中での運命を見積もるのに使う定量的な技能(物質収支、速度論、寿命)を発展させる。Chemistry in Context は、社会的な課題を軸にしたやさしい入門書で、持続可能性とグリーンケミストリーが繰り返し現れる。
関連する分野を深めるには、Seinfeld と Pandis の Atmospheric Chemistry and Physics が Lancaster の脱炭素化の章の背後にある気候と大気汚染の科学を扱い、Schwarzenbach、Gschwend、Imboden の Environmental Organic Chemistry が有機化学物質の環境中での分配と変化を説明する。これは、危険性を製品の設計段階から取り除く理由にほかならない。
本書の使い方
学部生、大学院生、産業界の人々を対象とする。出版社は正式な前提条件を示していない。一般化学の授業が妥当な最低限であり、触媒と再生可能資源の章では有機化学の知識が助けになる。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1〜3章を順に読み、原則、生産上の問題、環境性能を学ぶ。
- 関心に応じて選ぶ: 第4〜7章(触媒、環境にやさしい解決策、再生可能資源、新たな技術)。授業のプロジェクトに合うものを読む。
- システムの水準: 原則を理解したあとで、工程設計と脱炭素化を扱う第8〜9章を読む。
- まとめ: 第10〜11章(産業界の事例研究と統合的アプローチ)。前の章に慣れてから読み、そこでの原則を事例に当てはめるのがよい。
身近な製品や工程を一つ選び、第1章の原則と第3章の測定の考え方で評価し、その結果を第10章の事例と比べてみるのは有用な練習である。
