01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Knudson, D. (2021). Fundamentals of Biomechanics (3rd ed.). Springer.
章の要約
第3版は約250ページの短い本である。3部に分かれた10章(約185ページ)のあとに、5つの付録(バイオメカニクス用語集、換算係数、奇数番号の復習問題の解答例、直角三角形の三角法の復習、バイオメカニクスの原理を定性的に評価するための書式)と12の実習活動が続く。各章は「キークエスチョン」(始めるために何を知っている必要があるか、なぜそれを知る必要があるか、中心となる考えは何か)で始まり、要約、復習問題、推奨文献、インターネット上の資料で終わる。出版社は、実際の人間の動きを示す160点を超える図と、実際の技術を検討したケーススタディを挙げており、序文は、バイオメカニクスの応用を示すボックスと、他のスポーツ科学との関係を示す学際的問題のボックスに触れている。
第I部(第1~3章)
第1章:人間の運動のバイオメカニクス入門。 バイオメカニクスとキネシオロジーを定義し、専門職がバイオメカニクスを必要とする理由を説明し、ケーススタディからメタアナリシスまでの研究デザインの階層を含め、実務家が利用できる研究上の根拠を紹介する。
第2章:解剖学的記述とその限界。 方向を示す用語、関節運動、筋の構造を復習したうえで、肉眼解剖学の知識だけでは、筋が実際にどのように運動を生み出し制御しているかを説明できないと論じる。
第3章:バイオメカニクスの基礎と運動の定性的診断。 本書の残りを組み立てるバイオメカニクスの9つの原理(力と運動、力と時間、慣性、可動域、バランス、協調の連続体、分節間の相互作用、最適な投射、スピン)を導入し、そのいくつかがニュートンの法則に由来することを示し、それらが運動技術の定性的診断にどう生かされるかを示す。
第II部(第4~8章)
本書のこの部の導入によれば、第II部は生体組織の主要な力学的性質、運動学、運動力学、流体を扱い、関連する実習活動では定性的分析と定量的分析の両方を行う。
第4章:筋骨格系の力学。 組織と筋の力学的なふるまい、すなわち組織が負荷にどう応答するか、そして張力の立ち上がり、力と時間の関係、伸張–短縮サイクルを含む筋の力学的特性を扱う。
第5章:並進と回転の運動学。 運動の記述を扱う。距離と変位、速さと速度、加速度、およびそれらの角度の対応量を、時間間隔にわたって代数で計算する。この章は筋骨格系の解剖学と代数の知識を前提とする。
第6章:並進の運動力学。 並進運動の原因を扱う。ニュートンの法則、力とその時間的な効果、そして力学的な仕事、エネルギー、パワーで、運動の例を用いて説明する。
第7章:回転の運動力学。 トルクと回転の原因、持ち上げ動作に応用される静的平衡、そして身体の重心の計算を扱う。
第8章:流体力学。 空気と水が運動にどう影響するかを扱い、抗力や、野球の投球のような回転するボールに働くマグヌス効果を含む。
第III部:運動の定性的診断におけるバイオメカニクスの応用(第9~10章)
第9章:指導とコーチングへのバイオメカニクスの応用。 キックから始まる、スポーツ技能の定性的診断の手引き付きの例で、9つの原理を他のスポーツ科学と組み合わせる。
第10章:運動とリハビリテーションへのバイオメカニクスの応用。 ストレングス&コンディショニングと、アスレティックトレーニング、理学療法、作業療法などの医療関連職のための、同様の手引き付きの例を示す。
主要概念
第I部:基礎
- 運動の定性的診断:技術を体系的に観察・評価し、パフォーマンスの低さやけがのリスクの原因を見つけて修正すること。
- 機能解剖学の限界:付着部から筋の作用を名づけるやり方が、実際の運動で筋が果たす役割をしばしば誤って記述する理由。
- バイオメカニクスの9つの原理:力と運動からスピンまで、力学を実践に応用するために本書全体で使われる一般的な規則。
第II部:生物学的・力学的基礎
- 組織への負荷:生体組織が加えられた力にどう応答するか。
- 伸張–短縮サイクル:筋が短縮する直前に引き伸ばされると、より大きな力が生じること。
- 運動学と運動力学:運動を記述することと、運動を引き起こす力やトルクを説明することの違い。
- 仕事、エネルギー、パワー:力が身体や負荷の運動をどのように変えるかを表す力学的な尺度。
- 流体力:空気中や水中を動く身体や投射物に働く抗力とマグヌス効果。
第III部:応用
- エビデンスに基づく実践:競技者やクライアントに助言する際に、原理を研究上の根拠や他のキネシオロジー分野と組み合わせること。
批判的分析
長所
- 実践のための少数の原理。 9つの原理は、工学の背景を持たない学生にも使える枠組みを与え、原理を評価するための付録の書式は、それを定性的分析のチェックリストに変える。
- 概念的で代数レベル。 数学は代数と直角三角形の三角法にとどまり、付録に三角法の復習がある。出版社が引用する第2版への推薦文(American Sports Medicine Institute の Glenn Fleisig と International Sports Engineering Association の Jani Macari Pallis による)は、その明快さと、生物学的側面と力学的側面を分けて扱う構成を評価している。
- アクティブラーニング。 少人数のグループ向けに設計された12の実習活動は、バイオメカニクスの資料の探し方や機能解剖学から、可動域の分析、力と運動の原理、重心の計算、投球におけるマグヌス効果、熟練者と初心者の比較、トレーニング方式の比較、歩行の診断にまで及ぶ。奇数番号の復習問題の解答例は独習を支える。
- キネシオロジーの専門職向けの構成。 第III部とケーススタディは、指導とコーチング、運動とリハビリテーションの場面で原理を応用しており、多くのキネシオロジー専攻の学生の進路に合っている。
短所
- 定量的分析が少ない。 微積分やベクトル代数は使われず、静的な分析も持ち上げ動作のような単純なモデルに限られる。生体医工学の学生が問題を解くには、定量的な教科書が必要になる。
- 短く、選択的。 本文は約185ページで、力学の各テーマに1章ずつしか割かれていない。第III部の応用も2つの職業場面に限られる。
- 人間の運動に限られた範囲。 本書はスポーツ、運動、リハビリテーションにおける動きを扱うものであり、細胞の力学、心臓血管系や呼吸器系のバイオメカニクス、インプラントの設計は扱わない。
コースにおける位置づけ
Knudson の本は、このコースへの概念的で代数レベルの入口である。Özkaya、Leger、Goldsheyder、Nordin の Fundamentals of Biomechanics: Equilibrium, Motion, and Deformation は、微積分を用い、静力学、動力学、材料力学をすべて扱って筋骨格系を論じており、力の問題を解く必要がある学生にとって自然な次の一歩である。Ethier と Simmons の Introductory Biomechanics: From Cells to Organisms は固体力学と流体力学を前提とする工学の教科書で、細胞から全身の運動までを扱う。
Humphrey と O'Rourke の An Introduction to Biomechanics は固体と流体の連続体力学を展開し、Y. C. Fung の Biomechanics: Mechanical Properties of Living Tissues は構成則についての大学院レベルのモノグラフである。どちらも Knudson の水準をはるかに超える。Peterson と Bronzino の Biomechanics: Principles and Applications は、特定のテーマを調べるための編著の参考書である。キネシオロジーや体育の学生は Knudson だけで足りるかもしれないが、工学系の学生は、Özkaya や Ethier と Simmons に進む前の手早い概念的入門として使うとよい。
本書の使い方
本書は、キネシオロジー、運動科学、体育、アスレティックトレーニング、理学療法の学部生や、人間の運動について概念的な入門を求める工学系の学生に向いている。学校で学ぶ代数と三角法に、第2章で復習される基礎的な解剖学の知識があれば十分である。
実践的な進め方:
- 第1~3章から始める。 第3章は9つの原理を導入する。以後のすべての章がこれを参照するので、何度も立ち返ること。
- 中核となる力学: 第4~7章を順に読む。第5~7章の計算を自分で確かめ、各章を対応する実習活動(たとえば重心を扱う実習7B)と組み合わせる。
- 任意、または関心に応じて: 水泳、投てき、球技に関心があれば流体を扱う第8章。
- 応用: 指導とコーチングなら第9章、運動とリハビリテーションなら第10章。自分の進路に合うほうを読み、そのあともう一方にも取り組むとよい。
各章冒頭の「キークエスチョン」で方向を確かめ、復習問題に答えて、奇数番号の問題は付録Cで確認すること。付録Eの書式を使って、実際の動きの映像で定性的診断を練習するとよい。工学に進む学生は、本書のあとに定量的な教科書を読むこと。
