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バイオメカニクス:原理と応用 cover

生体医工学

生体医工学

バイオメカニクス:原理と応用

Donald R. Peterson; Joseph D. Bronzino

英語原題: Biomechanics: Principles and Applications

生体組織の力学と人間の運動解析を扱う、バイオメカニクスの原理の包括的な解説書。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
バイオメカニクス組織力学人間運動整形外科工学リハビリテーション工学スポーツ医学力学解析生体工学

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Peterson, D. R., & Bronzino, J. D. (Eds.). (2008). Biomechanics: Principles and Applications (2nd ed.). CRC Press.

章の要約

本書は約350ページの編集書で、各章は名前の挙がった専門家が執筆した20章からなる。出版社によれば、各章は The Biomedical Engineering Handbook 第3版から取られ、大幅な更新と改訂を加えたもので、細胞バイオメカニクスのモデリングに関する新しい1章が加わっている。以下では、出版社の目次の順序に従い、章を主題ごとにまとめる。

筋骨格系の力学:硬組織の力学/筋骨格系の軟組織力学/関節面の運動/関節の潤滑/歩行の解析

本書は筋骨格系から始まり、硬組織(J. L. Katz)、筋骨格系の軟組織(R. L. Lieber と T. J. Burkholder)、関節面の運動(K. R. Kaufman と K. N. An)、関節の潤滑(M. J. Furey)、歩行の解析(R. B. Davis、S. Õunpuu、P. A. DeLuca)を扱う。出版社は、この部分を硬組織・軟組織・関節の力学と、それらの人間の機能への応用を扱うものと説明している。

衝撃バイオメカニクス:頭頸部の力学/胸部・腹部への衝撃のバイオメカニクス

A. I. King と D. C. Viano による2章が、頭頸部の力学と、胸部・腹部への衝撃を扱う。

心血管バイオメカニクス:心臓のバイオメカニクス/心臓弁のダイナミクス/動脈の大循環の血行力学/血管の力学/静脈系

これらの章は循環系をたどる。心臓(A. D. McCulloch)と心臓弁(A. P. Yoganathan、J. D. Lemmon、J. T. Ellis)から、大動脈系の血行力学(B. B. Lieber)と血管の力学(T. R. Canfield と P. B. Dobrin)を経て、静脈系(A. A. Shoukas と C. F. Rothe)に至る。出版社はこれらを、本書の生体流体力学と循環動態の扱いに含めている。

微小循環と物質輸送:微小循環における力学・分子輸送・調節/血球の力学と変形能/組織・リンパ輸送の力学

これらの章は小さなスケールへ移る。微小循環(A. S. Pope と R. N. Pittman)、血球の変形能(R. E. Waugh と R. M. Hochmuth)、組織とリンパの輸送(G. W. Schmid-Schönbein と A. R. Hargens)である。出版社は、血球の力学と輸送を循環系の扱いの一部として挙げている。

細胞のモデリング:細胞バイオメカニクスにおけるモデリング

A. A. Spector と R. Tran-Son-Tay が執筆したこの章は、出版社がこの版の新章としているもので、細胞の力学をモデル化する現在の方法と戦略を紹介する。バイオメカニクスは全身のシステムだけでなく、組織、細胞、分子も調べるようになったという出版社の指摘を反映している。

聴覚・平衡・運動:蝸牛の力学/前庭の力学/運動生理学/人体の機械的仕事に影響する因子

最後の4章は、蝸牛の力学(C. R. Steele ほか)、前庭の力学(W. Grant)、運動生理学(A. T. Johnson と C. R. Dooly)、そして人体の機械的仕事に影響する因子(B. F. Hurley と A. T. Johnson)を扱う。出版社は、これらを人間の耳の力学的機能とその意義、そして運動や負荷時の身体の性能特性を扱うものと説明している。

主要概念

筋骨格系と衝撃の力学

  • 硬組織と軟組織の力学:硬組織と筋骨格系の軟組織の力学的挙動。最初の2章で扱われる。
  • 関節の力学:関節面の運動と関節の潤滑。
  • 歩行解析:歩行の測定と解釈。
  • 衝撃バイオメカニクス:頭、頸、胸、腹が衝撃を受けたときの力学。

心血管と輸送の力学

  • 血行力学:動脈の流れ、血管の力学、静脈系。
  • 心臓と弁の力学:心臓のバイオメカニクスと心臓弁のダイナミクス。
  • 微小循環と血球:小さなスケールでの輸送と変形能。
  • 組織・リンパの輸送:組織内での液体や分子の移動。

細胞・感覚・運動

  • 細胞バイオメカニクスのモデリング:細胞の力学のモデル。
  • 蝸牛と前庭の力学:内耳の力学的機能。
  • 人体の機械的仕事:運動生理学と、仕事量を制限する因子。

批判的分析

長所

  • 短い1冊での幅広さ。 約350ページで、内容は骨と関節から循環系を経て、細胞、耳、運動にまで及ぶ。目次には、衝撃バイオメカニクス、蝸牛と前庭の力学、リンパ輸送といった話題が含まれる。
  • 専門家による執筆。 各章は1〜2名の研究者の名前で示されており、特定の話題の扱いが必要な読者は、その分野で活動する人の書いた記述に出会える。
  • システムのモデルと下位システムのモデルの両立。 出版社は、システムレベルのモデルと、組織・細胞・分子のモデルを組み合わせていることを強調しており、新たに加わった細胞モデリングの章はこの狙いを反映している。
  • 図表と定量的な支え。 出版社は、140点を超える図、60の表、バイオメカニクスの挙動をモデル化するためのさまざまな式があると述べている。

短所

  • コース教科書というより参考書。 出版社は「完全で簡潔な参考書」と呼び、初学者向けの入門にもなるとしている。各章はハンドブック由来で独立に書かれているため、記法、深さ、前提知識は章ごとに異なるであろう。また目次には、基礎力学の導入的な章がない。
  • 演習問題が確認できない。 出版社の説明は図、表、式に触れているが、章末問題には触れていない。演習に頼るコースで採用する前には、実物を確認すること。
  • 運動の扱いは限られている。 人間の運動は、歩行解析の1章と運動に関する2章で代表されている。出版社の説明は医療機器の設計には触れていないので、それを求める読者は他書に当たるべきである。

コースにおける位置づけ

本書は、最初のコース用ではなく、幅広い概観的な参考書である。Özkaya らの Fundamentals of Biomechanics は、工学の背景のない読者のために、静力学、動力学、変形体の力学を基本原理から組み立てており、Knudson の Fundamentals of Biomechanics は代数レベルの計算で人間の運動を中心に据えている。どちらもより取り組みやすい出発点である。Ethier と Simmons の Introductory Biomechanics: From Cells to Organisms は、工学の背景をもつ学生向けの一貫したコース教科書で、循環系、筋肉、運動など本書と一部重なる分野を、各章を関連する解剖学と生理学から始める教科書の形で扱う。

さらに深く学ぶには、Humphrey と O'Rourke の An Introduction to Biomechanics が固体と流体の連続体力学を完全に展開しており、Fung の Biomechanics: Mechanical Properties of Living Tissues は生体材料の構成的挙動に関する古典的な専門書である。Peterson と Bronzino の本は、これらの本が扱っていない話題(頭頸部の損傷力学や蝸牛の力学など)について概観が必要なときに、併用すると役立つ。

本書の使い方

選択的に読むとよい。バイオメカニクスの最初のコースを終えたあと、プロジェクトに合う章のまとまりを選ぶ。最初の5章は筋骨格系、続く2章は損傷の力学、心血管と微小循環の各章は血流と血管の力学、細胞モデリングの章は細胞力学の出発点、最後の4章は聴覚・平衡・運動に対応する。

各章は別々に書かれているため、厳密な順序で読むのではなく、章ごとにまず前提知識を確かめてから読み始めるのがよい。章の執筆者の名前は、各分野の一次文献を探す手がかりにもなる。講義と演習の構造化された順序を必要とする学生は、本書を上記のコース教科書のいずれかと組み合わせ、さらに読むための資料源として使うとよい。