01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Saltzman, W. M. (2015). Biomedical Engineering: Bridging Medicine and Technology (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
本書は3部16章からなり、付録の前の本文は約700ページである。生物学から工学へと上っていく階段のような構成で、第1部が分子・細胞の原理、第2部が生理学の原理、第3部がそれらを利用する生体医工学の各分野を扱う。出版社は、生体医工学者が働く文脈を学生が理解できるよう、必要な分子生物学、細胞生物学、人体生理学の背景が含まれていること、また例題、応用、生体医工学者のプロフィールを通じて、理論が人間の医療における現実の問題でどう使われるかを示していると説明している。
第1章:Introduction: What Is Biomedical Engineering?(序論:生体医工学とは何か)
約30ページの1章だけの序論で、この分野が何であるかを問う。出版社は、第2版では生体医工学のリーダーたちのプロフィールが拡充され、卒業生に開かれた幅広い進路を示していると述べている。
第1部 分子と細胞の原理:第2〜5章
この部は、Biomolecular Principles(生体分子の原理)、Biomolecular Principles: Nucleic Acids(生体分子の原理:核酸)、Biomolecular Principles: Proteins(生体分子の原理:タンパク質)、Cellular Principles(細胞の原理)と進む。最初の章は分子レベルの構成要素で、この部は細胞のレベルで終わる。ページ数では、核酸の章がこの4章の中で最も長い。
第2部 生理学の原理:第6〜9章
4つの章が細胞から身体全体へ進む。Communication Systems in the Body(体内の情報伝達系)、Engineering Balances: Respiration and Digestion(工学的収支:呼吸と消化)、Circulation(循環)、Removal of Molecules from the Body(体内からの分子の除去)である。第7章の題名は、収支を使って呼吸と消化を記述するという形で、定量的な工学が主要な道具になる最初の場所を示している。循環と分子の除去の章は、生理学的な設定の中で続く。
第3部 生体医工学:第10〜16章
最後の部は各分野の概観である。まず Biomechanics(生体力学)、Bioinstrumentation(生体計測)、Bioimaging(生体イメージング)(第10〜12章)、次に Biomolecular Engineering I: Biotechnology(生体分子工学 I:バイオテクノロジー)と Biomolecular Engineering II: Engineering of Immunity(生体分子工学 II:免疫の工学)(第13〜14章)、最後に Biomaterials and Artificial Organs(生体材料と人工臓器)と Biomedical Engineering and Cancer(生体医工学とがん)(第15〜16章)である。出版社は、イメージング技術、バイオセンサー、薬物送達システム、ナノメディシンをこの版で更新された主題に挙げている。章題からは薬物送達と組織工学がどの章にあるのかは分からないので、これらが必要な読者は完全な目次や索引を確認するとよい。
付録
3つの付録は、Physiological Parameters(生理学的パラメータ)、Chemical Parameters(化学的パラメータ)、Units and Conversion Factors(単位と換算係数)を提供し、定量的な演習のための参照資料となる。
主要概念
第1部:分子と細胞の原理
- 核酸とタンパク質:それぞれ独立した章を持つ2種類の生体分子。
- 細胞の原理:分子の章と生理学をつなぐ単位としての細胞。
第2部:生理学の原理
- 工学的収支:第7章で呼吸と消化に適用される定量的手法。
- 循環:生理学的システムとしての循環系。第8章。
- 体内からの分子の除去:物質が体を離れる仕組み。第9章。
第3部:生体医工学
- 生体計測と生体イメージング:身体の計測と画像化。
- 生体分子工学:バイオテクノロジーと免疫の工学。
- 生体材料と人工臓器:身体の機能を代替・補助する材料と装置。
批判的分析
長所
- 生物学を前提とせず含めている。 出版社は、生体医工学者の文脈を理解するのに必要な分子生物学、細胞生物学、人体生理学の背景が本書の一部だと述べており、第1部と第2部(第2〜9章)がその準備にあてられている。
- 数学を本筋から外している。 主な特徴として、数学的な取り扱いを本文から切り離すことで、気後れするような数学の使い方を避けているとされ、まだ十分な定量的道具を持たない1年生に向いている。
- 学生を支える工夫。 出版社が引用する評者は、各章末の Key Concepts and Definitions と Useful Links、概念的・定量的な問題集、各章の「Profiles in BME」のコラムを挙げている。出版社は、定量的・定性的な演習が200題を超え、その多くが新しく、解答集は教員限定だとしている。
- 読みやすいと評価されている。 出版社が掲載する推薦文は、フロリダ大学、コロラド鉱山大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、MITの教員によるもので、文章が明快で範囲が広いと述べている。ただしこれは宣伝用の引用であり、独立した書評ではない。
短所
- 深さより広さ。 16章で分野全体を概観するため、生体力学、生体計測、生体イメージングなどの主題はそれぞれ1章にとどまる。いずれかを深く学ぶ授業には専門書が必要である。
- 工学の授業としては生物学の比重が大きい。 16章のうち8章(第1部と第2部)は生物学と生理学である。工学の各分野に早く入りたい教員は、これらを飛ばすか圧縮する必要がある。
- 分量。 本書は779ページ(出版社のデータ)で、1学期の授業では全体を扱わず、章を選ぶことになる。
コースにおける位置づけ
Saltzman は生物学から始まる概観書である。Ritter らの Biomedical Engineering Principles は工学的解析のアプローチをとり、生理過程のモデル化から始めて、信号、生体力学、設計へと進む。工学の枠組みを先に得たいならこちらを選ぶとよい。Saterbak、San、McIntire の Bioengineering Fundamentals は、分野の概観ではなく保存則を軸にこの学問を組み立てる最初のコースの教科書である。Enderle らの Introduction to Biomedical Engineering は、生体医工学の授業向けの包括的な概説書である。
その後により厳密さを求める読者には、Hobbie と Roth の Intermediate Physics for Medicine and Biology が物理学を生理学と医学物理に応用しており、Wittrup らの Quantitative Fundamentals of Molecular and Cellular Bioengineering は結合、反応速度論、遺伝子発現、細胞の挙動の定量的モデルを展開する。これらの主題は、Saltzman の第1部とより定量的なレベルで重なっている。
本書の使い方
Saltzman は、1・2年生の工学・理学の学生、医学部進学課程の学生、そして生物学と工学の両方を1冊で得たい人に向いている。微積分と大学レベルの化学・物理が妥当な基礎で、本書は生物学を前提とせず、自ら提供するように作られている。
1学期の授業では、序論と第1〜2部を土台とし、クラスがすでに知っている生物学の部分は流し読みし、第3部から興味に応じて3〜4章を選ぶ。応用の章の前には、それが依拠する生物学の章を読む。核酸とタンパク質をバイオテクノロジーと免疫の前に、循環を生体計測とイメージングの前に読む。問題を解くときはパラメータと単位の付録を使い、進路の文脈を知るために「Profiles in BME」を読むとよい。生物学に慣れている読者は第3部から始め、第1〜2部を参照用に使ってもよい。
