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生体医工学原理 cover

生体医工学

生体医工学

生体医工学原理

Arthur B. Ritter; Vikki Hazelwood; Antonio Valdevit; Alfred N. Ascione

英語原題: Biomedical Engineering Principles

生体医工学の基本原理を扱う入門的な教科書で、生物システムに適用される定量分析と工学設計を重視している。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
工学原理定量分析生物システム医療技術工学設計生理学的モデリング生体工学システム分析

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Ritter, A. B., Hazelwood, V., Valdevit, A., & Ascione, A. N. (2011). Biomedical Engineering Principles (2nd ed.). CRC Press.

章の要約

第2版は18章からなり、4つの部分に分かれている(カタログにより約520〜540ページ)。出版社の紹介文は、本書を入門的で学際的な教科書と位置づけ、分子生物学、生理学、生化学、信号処理についてはざっと知っている程度で足りるとし、学生の背景や関心に合わせた授業を組み立てやすい構成だと述べている。公開されている目次は番号なしの章題だけで、部の区切りも示されていないため、以下では主題ごとに、題名の並び順に従い、紹介文が挙げる4つの領域(モデル化と生理学、信号処理、生体力学、キャップストーン設計)に対応させて分けた。

モデル化と生理学

冒頭の題名は、Introduction: Modeling of Physiological Processes(序論:生理的過程のモデル化)、Cell Physiology and Transport(細胞生理学と輸送)、Principles and Biomedical Applications of Hemodynamics(血行力学の原理と生体医工学への応用)、A Systems Approach to Physiology(生理学へのシステム的アプローチ)、The Cardiovascular System(心血管系)である。出版社によれば、本書の最初の部分は、システム解析、生物学的データ、実験計画におけるモデル化とシミュレーションを扱い、拡散、促進輸送、能動輸送を応用する。題名はモデル化の方法から細胞レベルの輸送、そして循環系へと進んでいく。

生体信号処理

続く4章は、Biomedical Signal Processing(生体信号処理)、Signal Acquisition and Processing(信号の取得と処理)、Techniques for Physiological Signal Processing(生理信号処理の技法)、Examples of Physiological Signal Processing(生理信号処理の例)である。出版社は、信号処理の部分が周波数、周期関数、フーリエ級数、信号の取得と処理技法を復習するとしている。最後の題名は、生理信号から取った例を扱う章であることを示している。

生体力学と生体材料

次は Principles of Biomechanics(生体力学の原理)、Practical Applications of Biomechanics(生体力学の実際的応用)、Biomaterials(生体材料)である。出版社は、生体力学の部分を、骨、筋骨格、結合組織の力学的・構造的性質を、関節の可動域、荷重支持能力、電気刺激との関連で扱うものと説明している。生体材料の章がどの部分に属するかは、公開された目次からは分からない。

キャップストーン設計と分野の将来

残る題名は、Principles of Biomedical Capstone Design(生体医工学キャップストーン設計の原理)、Unmet Clinical Needs(満たされていない臨床ニーズ)、Entrepreneurship: Reasons why Most Good Designs Never Get to Market(起業:良い設計の大半が市場に出ない理由)、An Engineering Solution in Search of a Biomedical Problem to Solve(解くべき生体医学的問題を探す工学的解決策)、Tissue Engineering(組織工学)、Future Trends in BME(生体医工学の将来動向)である。出版社は、設計の部分が生物系と非生物系の設計の視点、FDAの役割、着想から概念実証までのプロジェクトの時間軸を論じると述べている。米国議会図書館の記録には出版社による要約があり、そこでは人工心臓、心室補助装置、除細動器、ペースメーカー、ステント、低侵襲手術やロボット手術も論じられる技術として挙げられている。

主要概念

モデル化と生理学

  • 生理的過程のモデル化:序論の主題で、生理学へのシステム的アプローチによって発展する。
  • 輸送:出版社が挙げる拡散、促進輸送、能動輸送。
  • 血行力学:血流の原理と生体医工学への応用。心血管系には別の章がある。

信号処理

  • 周波数、周期関数、フーリエ級数:出版社の紹介文にある信号処理の基礎。
  • 信号の取得と処理:例の章の前にある技法の章。

生体力学と設計

  • 組織の力学的・構造的性質:骨、筋骨格、結合組織。
  • キャップストーン設計:生物系・非生物系の設計の視点、FDAの関与、概念実証への道筋。
  • 満たされていない臨床ニーズと起業:設計プロジェクトの両端にあたる章の主題で、プロジェクトの出発点となるニーズと、良い設計が市場に出ない理由。

批判的分析

長所

  • 1冊で複数の分野を扱う。 目次は生理学と輸送、信号処理、生体力学と生体材料、キャップストーン設計を結び付けており、この分野の複数の側面にふれる入門的な授業を1冊で支えられる。
  • モジュール式の構成。 出版社は、学生の経験と関心に合わせて授業を組み立てやすい構成だと述べており、学生の背景が大きく異なる分野では意義が大きい。
  • 設計と起業が含まれている。 満たされていない臨床ニーズ、良い設計が市場に出ない理由、FDAの役割に関する章が、本書を実務に結び付けている。
  • 前版の書評による裏づけ。 出版社が第1版について引用する書評は、概観と、数理モデル・式・定量データに支えられた選択された主題の深い分析の両方を提供していると述べる(Biomedical Engineering Online、2005年)。Richard C. Fries(IEEE Engineering in Medicine and Biology Magazine、2006年12月)は、多数の例、図、参考文献案内、章末問題があると評価し、G. Ya. Wiederschain(モスクワ国立大学)は、図解が豊富で、生化学者、生物物理学者、細胞生物学と医学の専門家に役立つとした。これらの書評は以前の版についてのもので、この版のすべての細部に当てはまるとは限らない。

短所

  • 記述によって難易度が一様でない。 出版社は本書を入門的で、ざっと知っていれば足りるとしている。一方、Wiederschain は第1版を科学的水準がかなり高く、数学、物理、化学、熱力学を用いていると評した。定量的な要求は実際にあると考えておくべきである。
  • 各分野は入門的な深さにとどまる。 信号処理は4章、生体力学は2章であり、本書は出発点である。各分野にはさらに学ぶための専門書がある。
  • 公開されている目次の情報が少ない。 目次は章題のみで節見出しはなく、書評は前の版のものである。特定の主題が重要なら、サンプル章を確認すること。

コースにおける位置づけ

Ritter らは、工学的解析によってこの分野に入る道をとる。まずモデル化と生理学、次に信号、力学、材料、設計である。Saltzman の Biomedical Engineering: Bridging Medicine and Technology は、分子・細胞・生理学の生物学から出発して各分野を概観するので、生物学を学ぶ必要がある学生に向いている。Saterbak、San、McIntire の Bioengineering Fundamentals は保存則を軸に最初のコースを組み立て、Enderle らの Introduction to Biomedical Engineering は包括的な概説書である。

さらに進むには、Hobbie と Roth の Intermediate Physics for Medicine and Biology が物理学を生理学と医学物理に応用し、Wittrup らの Quantitative Fundamentals of Molecular and Cellular Bioengineering が結合、速度論、遺伝子発現、細胞の挙動の定量的モデルを展開している。Ritter の信号処理と設計の部分は、それぞれの主題の専門書で補うことができる。

本書の使い方

本書は、最初の生体医工学の授業を受ける学部生、特にモデル化、信号、力学、設計をまとめて扱う授業に向いている。また、Fries が前版の書評で指摘したように、生体医学の背景を持たない現役のエンジニアにも向く。微積分と大学レベルの物理・化学が妥当な基礎であり、出版社によれば生理学と信号処理は事前に知っていなくてよい。

出版社が本書をモジュール式と説明しているので、授業に合わせて部分を選ぶ。モデル化と生理学の章はどの使い方でも土台となり、信号処理の章は信号を重視する授業、生体力学の章は力学、設計の章はキャップストーンや設計の授業に使う。生理的過程のモデル化を扱う冒頭の章から始めるとよい。出版社が述べるアプローチがここで紹介される。本書のために作られた問題と討論課題を使い、設計の章では、満たされていない臨床ニーズから出発して実際のプロジェクトに適用する。