01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Nash, K. (2010). Contemporary Political Sociology: Globalization, Politics, and Power (2nd ed.). Wiley-Blackwell.
章の要約
本書は5つの章に、用語集、参考文献、索引が付く構成で、出版社の表記では304ページである。全体は一つの議論を軸に組み立てられている。政治社会学は、国家中心で階級に基づく政治モデルから、あらゆる社会関係に政治の可能性があるという理解へ移ってきており、アイデンティティと社会構造をめぐる争いを表すには「文化政治」が最も適している、というものだ。出版社によれば、第2版ではグローバル・ガバナンス、人権、グローバルな社会運動、グローバル・メディアに関する内容が加わり、民主主義と民主化についての新たな議論が置かれ、コスモポリタニズム、帝国主義、ナショナリズムのどれを選ぶかで何が問われるのかがより明確に述べられている。
第1章:政治と権力の定義の変化(Changing Definitions of Politics and Power)
この章はバラク・オバマの当選から始まり、政治を文化から切り離せない理由を示す。続いて政治社会学の伝統を四つの見出しの下で振り返る。マルクス主義の伝統(新マルクス主義と、国家の三つのモデル、すなわち道具主義、調停者、機能主義を含む)、ヴェーバーの伝統(エリート理論と多元主義を含む)、デュルケームの伝統(新デュルケーム派の研究を含む)、そしてフーコー的な権力の定義(権力の分析論と統治性)である。最後の節「Cultural Politics」は本書自身の立場を示し、第2〜5章の予告で終わる。
第2章:小さな世界の政治(Politics in a Small World)
3つの節からなる。「Explaining Globalization」「State Transformation and Imperialism」「We are the World?」。この章は、政治が国民国家の内部で起こるとするモデルへの最も劇的な挑戦としてグローバル化を扱い、財、情報、権威が国境を越えて流れるなかで、国家や「社会」という観念がどう変わるかを問う。
第3章:社会運動(Social Movements)
節の構成は「Resource Mobilization Theory and Beyond」「New Social Movement Theory: Conflict and Culture」「Toward a Synthesis: the Definition of 'Social Movement'」「Global Social Movements」。第1章の予告にあるとおり、社会運動は、社会的行為者が意味に異議を唱え、新たな集合的アイデンティティをつくる仕方として描かれ、関心は社会システムから文化政治へと移る。
第4章:シティズンシップ(Citizenship)
最も長い章で、5つの節がある。「T. H. Marshall: Citizenship, Social Class, and the Nation-State」「Citizenship, Wealth, and Poverty」「Citizenship, Sex, and Sexuality」「Citizenship, Racialization, and Ethnicity」「Post-National Citizenship?」。この章はシティズンシップを、運動によるアイデンティティと差異をめぐる主張や、移民の時代にだれが市民としての権利を持つのかという問いと結びつける。
第5章:グローバル化と民主主義(Globalization and Democracy)
4つの節からなる。「Democracy in Crisis: Political Parties and Elections」「Democracy, Human Rights, and International Political Institutions」「Global Civil Society」「Democracy and Cultural Politics」。国際機関の民主化は国内レベルの民主主義の危機への対応となるのか、また社会運動の文化政治は民主的正統性にとって何を意味するのかを問う。
主要概念
第1章:政治と権力の定義の変化
- 国家と社会の関係を扱う政治社会学:従来の定義で、この章は社会が国家をどう形づくるかに集中してきたと論じる。
- マルクス主義の三つの国家モデル:道具主義、調停者、機能主義。
- 権力の分析論と統治性:フーコーのアプローチと、それに触発された研究。
- 文化政治:「政治の政治」、すなわち何が政治的とみなされるかそのものが可視化され、争われること。
第2・3章:グローバル化と社会運動
- 方法論的ナショナリズム:社会を国境の内側に収まるものとみなす扱いで、本書はグローバル化によって維持できなくなったと論じる。
- 資源動員論と新しい社会運動論:第3章の二つの主要なアプローチ。
- グローバルな社会運動:下からも、国際機関を通じても行動する運動。
第4・5章:シティズンシップと民主主義
- マーシャルのシティズンシップ論:市民権と階級・国民国家の関係。
- ポスト国民的シティズンシップ:領域的な国民国家から切り離されたシティズンシップ。
- グローバル市民社会:民主主義の章の一主題。
- 承認と再分配:第1章がシティズンシップの章に向けて予告する論争。
批判的分析
長所
- 明快な組織原理となる主張。 第1章が主張を述べ、古典的な伝統を見出し付きの節で整理し、以降の各章を予告するため、本書は項目の羅列ではなく一つの議論として読める。
- 理論と主題が結びついている。 後半の4章はそれぞれ一つの主題(グローバル化、運動、シティズンシップ、民主主義)を取り上げ、最初に整理された伝統の上に議論を重ねる。見本の章では、マルクス主義、ヴェーバー、デュルケーム、フーコーの各伝統に独立した節が与えられている。
- 学習の補助。 目次には用語集と各章内の番号付きの節が示され、第1章の終わりには以降の各章の予告がある。
短所
- 一部で古くなっている。 第2版は2010年のもので、見本の章はオバマの当選から始まるため、2010年前後以降の展開は当然ながら含まれない。
- 主張に導かれた選択。 各章は文化政治が中心だという著者の見方に沿って進む。国家形成、戦争、革命といった主題には独立した章がない。
- 短い。 本文約235ページ(用語集は237ページから)に5章という構成のため、各主題は簡潔に扱われる。分野の全体像や比較歴史研究を求める読者は他の本が必要になる。
コースにおける位置づけ
同じ書目の中では、オラムとデイルの『Political Sociology: Power and Participation in the Modern World』が最も近い。マルクス、ヴェーバー、デュルケームの古典的基礎を示し、その後の権力と国家の理論を概観し、シティズンシップ、社会運動、グローバル化、民主主義へ応用する入門教科書である。ナッシュの本も近い範囲を扱うが、文化政治についての一つの主張を軸に組み立てており、二冊は組み合わせて読むと有益である。エリザベス・S. クレメンスの『What Is Political Sociology?』は、この分野の中心的な問いを紹介する短い入門書で、ナッシュの前に読む軽い入口になる。
チャールズ・ティリーの『Coercion, Capital, and European States』とシーダ・スコッチポルの『States and Social Revolutions』は国家と革命についての比較歴史研究で、ナッシュが手薄に扱う主題である。アーリー・ラッセル・ホックシールドの『Strangers in Their Own Land』はアメリカの一つの地域社会における政治的感情のエスノグラフィーで、文化政治の各章と並べて読める。
本書の使い方
本書は、政治社会学、グローバル化、社会運動の授業を受ける学部生に向いている。政治社会学の予備知識は不要だが、社会学または政治学の入門科目を履修していると第1章の用語を理解しやすい。
実際的な読み方は次のとおり。
- **中核:**第1章を通して読む。理論的背景と主張の両方がここにあるからである。マルクス主義、ヴェーバー、デュルケームの各節は、授業ですでに扱っていれば速く読み、フーコーと文化政治の節に時間をかける。
- **主題で選ぶ:**グローバル化は第2章、社会運動は第3章、シティズンシップと民主主義は第4・5章。第1章のあとは個別に読める。
- **併用:**用語は用語集で確認し、本書が2010年までであることから、事例は新しい資料で補う。
第1章を読むときは、各伝統が用いる権力と政治の定義を一文で書き出し、後の章がそれをどう適用または修正しているかを確かめるとよい。
