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International Political Economy(国際政治経済学) cover

政治学

政治学

International Political Economy(国際政治経済学)

Thomas Oatley

英語原題: International Political Economy

政治が世界経済をどう形づくるかを、国際貿易体制、国際通貨・金融体制、経済発展の三つの柱に沿って学ぶ入門教科書。オートリーは基本的な経済モデルと、利益と制度に注目する政治分析を組み合わせ、グローバル化で誰が得をし誰が損をするのか、各国政府がなぜその政策を選ぶのかを説明する。

前提知識: 経済学の予備知識は不要で、用いる貿易や為替のモデルは本文で説明される。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
international political economytradeglobalizationinternational financedevelopment教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Oatley, T. (2023). International Political Economy (7th ed.). Routledge.

章の要約

第7版は全16章、約430ページで、用語集、参考文献、索引が付く。出版社は、本書が世界経済を勝者と敗者を生む政治的競争として捉え、国家と非国家主体が富と権力を追求する際の利益と制度を概観すると説明している。章題には繰り返される構成が見える。各主題について制度や歴史を扱う章があり、その後に政策選択の背後にある政治を説明する「社会中心」と「国家中心」の章が続く。出版社によれば、今版の新しい内容は、パンデミックの影響、気候変動とグリーン産業政策、大国間競争と「武器化された相互依存」、ロシアのウクライナ侵攻がグローバル化に与える影響である。

第1章:国際政治経済学

導入の章。この分野が何を研究するのかを示し、全体の枠組みを定める。出版社によれば、その枠組みは基本的な経済概念と、国内政治と国際政治の相互作用の説明を組み合わせたものである。

第2〜3章:WTOと世界貿易体制;国際貿易協力の政治経済学

最初のまとまりは貿易である。第2章は世界貿易機関と貿易体制を、第3章は貿易をめぐる国家間協力の政治経済学を扱う。

第4〜5章:貿易政治への社会中心アプローチ;貿易政治への国家中心アプローチ

貿易政策について対抗する二つの説明を示す章。前者は社会内の集団の利益から、後者は国家から出発する。章題から、本書がこの二つのアプローチを対にして読者に比較させようとしていることがわかる。

第6〜7章:貿易と開発I:輸入代替工業化;貿易と開発II:新自由主義と制度主義

途上国の貿易政策。第6章は輸入代替工業化を、第7章はその後に現れた新自由主義的アプローチと制度主義的アプローチを扱う。

第8〜9章:世界経済における多国籍企業;多国籍企業の政治

多国籍企業についての2章。一方は世界経済での役割を、他方はそれをめぐる政治を扱う。

第10〜11章:国際通貨システム;現代の国際通貨システムにおける協力・対立・危機

通貨と金融への移行。第10章は国際通貨システムを紹介し、第11章は現代のシステムにおける協力、対立、危機を論じる。

第12〜13章:通貨・為替政策への社会中心アプローチ;通貨・為替政策への国家中心アプローチ

貿易の部分と同じ対の構成が通貨・為替政策でも繰り返される。一方は社会内の集団の利益から、他方は国家から出発する。

第14〜15章:途上国と国際金融I:ラテンアメリカ債務危機;途上国と国際金融II:グローバルな資本フローの循環

途上国と国際金融についての2章。最初はラテンアメリカ債務危機を、次は資本フローの世界的な循環を軸にしている。

第16章:グローバル資本主義経済の成果と課題

結論の章で、グローバル資本主義経済が達成したことと直面する課題を評価する。

主要概念

第1〜5章:貿易

  • 勝者と敗者:世界経済を政治的競争とみなす出版社の説明。
  • 社会中心アプローチと国家中心アプローチ:政策を説明する二つの方法で、一方は社会集団から、他方は国家から出発し、第4〜5章で貿易に適用される。
  • WTOと貿易体制:貿易協力の制度的な場。

第6〜9章:開発と多国籍企業

  • 輸入代替工業化:第6章で検討される開発戦略。
  • 新自由主義と制度主義:第7章で扱われる貿易と開発へのアプローチ。
  • 多国籍企業:経済面と政治面の両方から扱われる。

第10〜16章:通貨、金融、危機

  • 国際通貨システム:為替と通貨協力の制度的枠組み。
  • 通貨・為替政策:社会中心と国家中心の二つの視点から再び説明される。
  • 債務危機と資本フロー:第14〜15章の事例、すなわちラテンアメリカ債務危機と資本フローの世界的循環。

批判的分析

長所

  • 一貫した分析の道具。 社会中心と国家中心の対が貿易にも通貨政策にも適用されるので、読者は一つの考え方を身につけて二度使える。
  • 経済学が本文中で説明される。 出版社は、政治理論、歴史、経済学の予備知識が限られた学生を想定し、基本的な経済概念を重視していると述べており、先に経済学を履修する必要はない。
  • 三つの領域に明確に分かれる。 目次は貿易、開発と多国籍企業、通貨と金融の順に進むので、一部だけを課題にしたり学んだりしやすい。
  • 近年の出来事を反映。 出版社によれば、第7版はパンデミック、気候政策、大国間競争、ウクライナ戦争を加え、フルカラーで33点のカラー図版を含む。

短所

  • 公表された批評が限られる。 出版社のページにある評は教員による推薦文で、独立した学術誌の書評は見つからなかった。そのため教育効果についての記述はこれらの推薦文に依拠する。
  • 主な視角は二つ。 構成上、読者に示されるのは社会中心と国家中心のアプローチで、批判理論、マルクス主義、フェミニズムなどの視角の章は目次にない。それらを知りたい読者は補う読書が必要になる。
  • 分量。 16章、約430ページで、1学期分の教科書であり、手早い概観には向かない。

コースにおける位置づけ

政治経済学の書目の中で、Oatley の本はこの分野の国際的な側面を扱う教科書である。Fulcher の Capitalism: A Very Short Introduction のような短い総論の次に読む本として自然である。Fulcher は資本主義とは何か、どう発展したかを問うが、貿易や為替の分析は教えない。Ben Clift の Comparative Political Economy は補完的で、各国の資本主義がどう異なり変化するかに着目するのに対し、Oatley は各国をつなぐ世界の貿易・通貨・開発の体制に着目する。

Hall と Soskice の Varieties of Capitalism と Olson の The Logic of Collective Action は教科書ではなく独創的な研究である。前者は自由市場経済と調整市場経済を区別し、後者は共通の利益をもつ集団がなぜ組織化しにくいかを説明する。利益と組織化をめぐる議論の出どころを知りたければ、Oatley の後に読むとよい。Persson と Tabellini の Political Economics は形式的な経済理論を用いる大学院向けの教科書で、Oatley の前ではなく後に読むべきである。

本書の使い方

本書は、国際政治経済学を体系的に学び始めたい政治学・国際関係論・経済学の学部生に向く。出版社は、政治理論、歴史、経済学の強い予備知識は想定していないと述べている。

1学期の実際的な進め方は次のとおり。

  • 出発点。 第1章をよく読む。以後の枠組みはここで決まる。
  • 中核。 貿易の章(第2〜5章)と通貨の章(第10〜13章)を順に読み、社会中心の章の直後に対になる国家中心の章を読む。各対の意味は二つの比較にある。
  • 選択。 開発の章(第6〜7章、第14〜15章)と多国籍企業の章(第8〜9章)は、授業に応じて課題にも省略にもできる。第16章は全体の振り返りとして最後に読むとよい。
  • 併読の仕方。 用語集で語句を確認し、一対の章を読み終えるごとに、関税や為替といった現在の政策論争について二つのアプローチがそれぞれ何を予測するかを短くまとめ、本書の推論と照らし合わせる。
  • 版。 パンデミック、気候政策、大国間競争など2020年以降の内容が必要なら第7版を使う。