01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Sompayrac, L. M. (2022). How the Immune System Works (7th ed.). Wiley-Blackwell.
章の要約
本書は約175ページと短く、直接語りかける会話調の17の「講義」で構成されている。「本書の使い方」で著者は、本書は網羅的な教科書でも試験対策の本でもなく、大部の教科書にある専門用語や細部を抜きにして、免疫系がどのように組み合わさっているかを示すための概観だとはっきり述べている。各講義は議論の要点を示す「Heads up!」の囲みから始まり、出版社によれば各講義の終わりには、系の各部分がどう相互作用するかを積み上げていく拡張式のまとめの図が置かれている。著者は、まず第1–10講をひとまとまりとして素早く読み、それからゆっくり読み返すよう勧めている。第11–17講は、学んだことを実例に当てはめる部分である。
第1講:概観
アメリカンフットボールのチームにたとえて系全体を「ターボ」で巡る。1人の選手だけを見ていてもプレー全体を見なければ意味がわからない、というわけである。講義は物理的障壁、自然免疫系、獲得免疫系を紹介し、既製品の靴屋と注文靴の職人というイメージで自然免疫と獲得免疫を比較し、最後に自然免疫系が「コーチ」として危険を評価し、獲得免疫系に何をすべきかを伝えていると論じる。
第2講:自然免疫系
ヒトに日常的に感染する病原体を認識するよう進化してきた、あらかじめ組み込まれた防御で、身近な侵入者に素早く反応する。
第3講:B細胞と抗体
B細胞とそれがつくる抗体を、ありふれた病原体からまれな病原体まで防ぐ獲得免疫系の一部として扱う。
第4–6講:抗原提示の魔法/T細胞の活性化/働くT細胞
T細胞の物語を3段階で描く。T細胞は専門の抗原提示細胞によって適切に提示された抗原しか認識しない。働く前に活性化されなければならず、これが役に立つ武器だけを動員する助けとなる。活性化されると、ヘルパーT細胞が応答を指揮し、キラーT細胞が感染細胞を破壊する。
第7講:二次リンパ器官とリンパ球の移動
B細胞とT細胞が侵入者を探して二次リンパ器官を巡回する仕組みと、そこで活性化された後、必要とされる体の部位へ送り出される仕組み。
第8–10講:免疫系の抑制/自己寛容とMHC拘束/免疫記憶
感染後に系をどう抑え、リセットするか。T細胞が適切に提示された抗原に集中するようどう「テスト」され、自己反応性のリンパ球がどう排除されるか。そして、長くヒトを襲ってきた病原体を「記憶」する自然免疫系と、2度目の攻撃により速く反応する記憶B細胞・記憶T細胞とで、記憶がどう異なるか。
第11講:腸管免疫系
腸に住む何兆もの微生物に免疫系がどう対処しているか。著者はこれをこの分野のホットな話題と呼んでいる。
第12–13講:誤作動する免疫系/免疫不全
系が誤りを犯す場合(例としてアレルギーと自己免疫)と、系が弱すぎる場合(主な事例としてHIV-1感染)に何が起こるか。
第14–16講:ワクチン/がんと免疫系/免疫療法
免疫系を準備させる、感染の安全な模倣としてのワクチン。自己への攻撃を避ける必要とがん細胞を破壊する必要とのあいだの、組み込まれた葛藤。そして免疫系自身の武器の医療への応用。
第17講:COVID-19と免疫系
この版で新設された講義。パンデミックを呼吸器ウイルスに対する免疫応答の自然の実験室としてとらえ、COVID-19ワクチン計画から生まれた、mRNAプラットフォームを含むワクチン設計の進歩を扱う。
主要概念
第1–3講:2つのチーム
- 自然免疫と獲得免疫:ありふれた病原体に対する速い既製の防御と、クローン選択によってつくられる遅い注文仕立ての応答。
- 意思決定者としての自然免疫系:自然免疫系が危険を判断し、獲得免疫系に「作戦」を与える。
- B細胞と抗体:きわめて多様な標的に対して抗体を産生する獲得免疫の部門。
第4–10講:獲得免疫応答の運営
- 抗原提示:T細胞は専門の提示細胞が示した抗原を見なければならないという条件。
- T細胞の活性化:役に立つT細胞だけが動員されるようにする安全装置。
- リンパ球の移動:B細胞とT細胞が二次リンパ器官を巡回し、感染部位へ送り出されること。
- 自己寛容とMHC拘束:自己反応性リンパ球を除き、T細胞を提示された抗原に集中させる選別。
- 免疫記憶:以前に出会った病原体に対する、より速く効果的な応答。
第11–17講:健康と病気における免疫系
- 免疫病理:「誤作動」としてのアレルギーと自己免疫、弱すぎる状態としての免疫不全。
- ワクチンと免疫療法:病気の予防と治療に免疫応答を意図的に利用すること。
批判的分析
長所
- まず全体像。 著者が本書を書いたのは、分厚い教科書では全体像が細部に埋もれてしまうからである。第1講は個々の構成要素を調べる前に系全体を見渡し、講義ごとに成長するまとめの図がその見通しを読者の前に保ち続ける。
- 記憶に残る説明。 第1講がその方法をよく示している。スポーツや買い物のたとえによって、自然免疫と獲得免疫の分業がつかみやすくなる。「Heads up!」の囲みと強調された重要な箇所や用語のおかげで、各講義を素早く復習できる。
- 未解決の問題に正直。 著者はほとんどの講義の終わりで、免疫学者がまだ答えられない「既知の未知」をいくつか指摘しており、この分野がすでに完結しているかのような印象を打ち消している。
- 現代的な応用。 後半の講義は腸管免疫系、免疫療法、COVID-19を扱い、出版社の説明によれば、ワクチン、記憶、がんについての記述も更新されている。
短所
- 意図的に網羅していない。 著者自身が述べるとおり、本書は網羅的な教科書でも試験対策の本でもない。概念への入門であり、医学部の免疫学の授業で求められる分子的・臨床的な詳細は他の本から得る必要がある。
- 演習がない。 講義形式は概要、まとめの図、強調された用語を備えているが、目次には問題集や解答が見当たらず、第1講も演習ではなくエピローグで終わる。自己テストは別の教材に頼ることになる。
- くだけた語り口。 会話調とたとえは最初の通読には向いているが、本書が最小限にとどめている正式な用語は結局学ばなければならない。巻末の用語集と略語一覧がその助けになる。
コースにおける位置づけ
このコースで免疫学を始めるならこの本からである。Abbas、Lichtman、Pillaiの Basic Immunology より前に読むとよい。同書は短いながら本格的な教科書で、自然免疫と獲得免疫、抗原認識、リンパ球の活性化、エフェクター機構を扱い、それらを過敏症、自己免疫、免疫不全、移植、腫瘍免疫に応用している。2冊はおおむね同じ道筋をたどるので、各講義をAbbasの対応する部分の直前に読むことができる。
コースの感染症の側では、GillespieとBamfordの Medical Microbiology and Infection at a Glance が病原体と感染症を簡潔な図解で概観し、Mims' Medical Microbiology and Immunology が微生物学と免疫学を器官系ごとの教科書として統合している。Mims' Pathogenesis of Infectious Disease と Jawetz, Melnick & Adelberg's Medical Microbiology は、後で読むより詳しい本である。ワクチン、免疫不全、COVID-19についてのSompayracの講義は、それらの本への自然な橋渡しとなる。
本書の使い方
出版社は本書の読者として、医学、生命科学、獣医学、看護学の学生、手早く復習したい研究者、一般の読者を挙げている。実質的な前提は基本的な細胞生物学だけである。
著者自身の計画に従うとよい。まず第1–10講を、暗記しようとせず、2回ほどに分けて一気に読み通す。目的は系全体の感覚をつかむことである。次に同じ10講をゆっくり読み返し、「Heads up!」の囲みと強調箇所を使って各講義が何を確立しているかを確認し、積み上げ式のまとめの図を記憶から描き直してみる。そのうえで第11–17講を、実例として好きな順に読むか、講義の対応する話題と並行して読む。
1学期の授業では本書を副読本として使う。ある話題の一連の講義が始まる前に、対応するSompayracの講義を読み返し、細部が埋められていくあいだも全体像を見失わないようにする。用語集と略語一覧は手元に置いておくこと。本書には問題がないので、Basic Immunology のようなより本格的な教科書の復習問題で自分を試し、次へ進む前に各講義の議論を自分の言葉で声に出して説明してみるとよい。
