01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Liebeck, M. W. (2015). A Concise Introduction to Pure Mathematics (4th ed.). CRC Press.
章の要約
背景と主旨
マーティン・リーベック(Martin Liebeck)はロンドンのインペリアル・カレッジに所属し、高校数学のしっかりした基礎をもつ学生に、大学数学を初めて垣間見せるために本書を書いた。出版社によれば、本書は純粋数学の最も基本的で美しい考えのいくつかを提示する。標準的な内容に加え、このレベルでは通常出会わない主題、すなわち三次方程式の解法、立体の頂点・辺・面の数に関するオイラーの公式と五つのプラトン立体、素数を用いた秘密情報の暗号化と復号、無限集合の大きさの比較、極限と連続関数の厳密な理論などを扱う。
第4版では、群論を通じて抽象代数を紹介する2章が加わり、不等式、数え上げの方法、包除原理、オイラーのφ関数に関する新しい内容と、多くの新しい演習問題が追加され、奇数番号の問題の解答が巻末に付く。全26の短い章からなるため、本書は一つの持続的な論証というより、比較的独立した数学のエピソードの連なりとなっている。
第1章:Sets and Proofs(集合と証明)
冒頭の章は、集合の言語と、数学的な議論を組み立てる基本的な方法を紹介する。本書の残りの部分はこれらを用いる。
第2~7章:数と方程式
第2章「数の体系」は、整数、有理数、実数とその性質を検討する。第3章「小数」は小数表示を扱い、循環小数と有理数の関係を含む。第4章は n 乗根と有理数べき、第5章は不等式、第6章は複素数、第7章は多項式方程式で、三次方程式の解法の理論は本書の特色である。
第8~9章:帰納法;オイラーの公式とプラトン立体
第8章は数学的帰納法を展開する。第9章は、立体の頂点・辺・面の数を関係づけるオイラーの公式を用いて、プラトン立体がちょうど五つであることを示す。
第10~15章:整数と秘密の暗号
第10章は整数とその整除性に戻る。第11・12章は素因数分解と素数に関するさらなる結果を扱い、第13・14章は整数の合同を扱う。第15章「秘密の暗号」は、素数と合同を秘密情報の暗号化と復号に応用する。
第16~21章:数え上げ、集合、関数、無限
第16章「数え上げと選択」は数え上げの方法を紹介する。第17章は集合に戻り、第18章は同値関係を導入する。第19章は関数、第20章は置換を扱う。第21章「無限」は、無限集合の大きさをどう比較するかを説明する。
第22~24章:解析
この3章は、解析の最初の厳密な扱いを与える。上界・下界(第22章)、極限(第23章)、連続性(第24章)である。
第25~26章:群
第4版で加わったこの2章は、群を通じて抽象代数を紹介し、抽象的な推論がどのように働くかを例で示す。
巻末
本書は、奇数番号の演習の解答、参考文献案内、記号索引で終わる。
主要概念
第1~9章
- 証明と集合:後続の章が依拠する言語と方法。
- 数の体系:整数、有理数、実数、複素数。
- 多項式方程式:三次方程式の解法を含む。
- 帰納法:すべての自然数についての命題の証明。
- オイラーの公式:頂点・辺・面の関係で、プラトン立体の可能な数を限定する。
第10~21章
- 素因数分解:整数を素数に分解すること。
- 合同:剰余による算術で、「秘密の暗号」の章で使われる。
- 数え上げ:配列と選択を数える方法で、包除原理を含む。
- 同値関係と関数:集合を整理する構造。
- 無限集合の比較:二つの無限集合が同じ大きさであるときを述べる方法。
第22~26章
- 界、極限、連続性:解析の基礎。
- 群:抽象代数の基本構造。
批判的分析
長所
- 入りやすい入口。 出版社は、本書が高校数学のしっかりした基礎をもつすべての学生に取り組みやすいと述べており、大学の純粋数学への移行に適している。
- 幅広い概観と珍しい主題。 一冊で、数、代数、幾何、数え上げ、無限、解析、群を扱い、三次方程式やプラトン立体など、このレベルでは通常見られない主題も含む。
- 短い章。 約320ページに26章、平均して一章あたり十数ページなので、読者は内容を小さな単位で、さまざまな順序で消化できる。
- 解答付きの演習。 第4版には多くの新しい演習があり、奇数番号の問題の解答が付くので、独学に向いている。
短所
- 深さより幅広さ。 一冊に多くの主題が入るため、どれも長くは論じられない。解析は3章、代数は2章で、そのどちらかを本格的に学びたい読者は別の本が必要になる。
- 証明法だけの本ではない。 第1章と、帰納法や集合の章が証明を紹介するが、本書は数学の主題を巡る旅であって、論理と証明技法の体系的な論考ではない。
- 応用は少ない。 秘密の暗号の章はあるが、主として数学そのもののための純粋数学である。
コースにおける位置づけ
論理・集合・証明の書目のなかで、リーベックの本は純粋数学の幅広い巡りにあたる。Hammack の Book of Proof は証明の方法への無料の入門書で、Velleman の How to Prove It は命題と量化子の論理、集合・関係・関数の言語を展開する。どちらも証明についてはリーベックより体系的であり、リーベックは証明を多様な主題の概観の中に置いている。Eccles の An Introduction to Mathematical Reasoning と Allenby の Numbers and Proofs も、数学的推論と数の体系を扱う本で、これらの主題をさらに深めるためにリーベックと併せて使える。
Leary と Kristiansen の A Friendly Introduction to Mathematical Logic と Enderton の A Mathematical Introduction to Logic は形式論理の本である。これらはリーベックの第1章を超えており、数学の証明に慣れたのちに論理そのものを学びたい読者向けである。
本書の使い方
本書は、大学1年生、および大学の純粋数学がどのようなものかを知りたい、高校数学のしっかりした基礎をもつ意欲的な学生に向けられている。奇数番号の演習の解答が付いているので、独学にも適している。
よい進め方は、証明、数、帰納法を準備する第1~9章を順に読み、その後は必要に応じて後半のまとまりから選ぶことである。第10~15章は整数論と暗号、第16~21章は数え上げ、関数、無限、第22~24章は解析、第25~26章は群である。最初の解析か代数の講義に進む読者は、講義が始まる前に該当のまとまりを読むとよい。
演習は読みながら解き、奇数番号の問題は解答と照合し、偶数番号の問題は助けなしで挑戦する。巻末の参考文献案内は、ある主題に興味をもったときの次の行き先を示している。
