01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Odden, D. (2013). Introducing Phonology (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
第2版は9つの章に用語集、参考文献、言語索引と事項索引が付き、約350ページで、Cambridge Introductions to Language and Linguistics シリーズの1冊である。出版社は演習を65題と数え、この版には60を超える演習があり、さまざまな言語から取った新しい問題セット14組が含まれると説明している。各章はプレビューと重要用語の一覧で始まり、章は積み上がっていく。初めの章が基本的な分析の技法を導入し、中ほどの章がそれを応用し拡張し、最後の3章が、よい分析とは何か、音韻理論はどう変わるのかという問いに一歩引いて取り組む。
第1章:音韻論とは何か(What Is Phonology?)
この章は、音韻論を言語の音体系の研究として導入し、物理的な音と、言語の離散的な要素としての「ひとつの音」を区別する。音を表すときの正確さと有用性のトレードオフを論じ、認知的な記号としての音という考え方を導入し、音韻論の音声学的な基盤を示し、音韻規則という概念を持ち込む。重要用語には、転写、文法、発話の連続的な性質がある。
第2章:異音関係(Allophonic Relations)
ここから音韻過程の分析が始まる。tick と stick における有気音と無気音の [t] のような、英語の基本的な音の予測可能な変異から出発し、音素と異音の概念を導入し、他の言語にも同様の関係があることを示し、知らない言語のデータから音韻規則を導く一般的な技法と、規則の書き方を教える。重要用語は、異音、音素、相補分布、対立である。
第3章:素性理論(Feature Theory)
この章は、分節音は原子的なのか、それともより小さな部分からできているのかを問う。音は固定された普遍的な素性の集合によって定義され、それぞれに音声学的な定義があるとして示される。素性値を分節音に割り当てる方法、規則を素性で形式化する方法、そして素性が人間言語で可能な音や規則についてどのような予測を行うかが示される。自然類は重要用語のひとつである。
第4章:基底表示(Underlying Representations)
基底形の扱いを深める章である。対立を中和する規則を導入し、予測できない情報が基底形の一部でなければならないことを示し、基底表示を立てる際にもっとも重要な要因と、基底形が発音された語とどう違うかを論じる。交替、中和、予測可能性、構造保存が重要用語である。
第5章:相互作用する過程(Interacting Processes)
音韻体系は、孤立した規則の集まりではない。この章は、同じ形に適用される異なる規則の効果を切り分けることで、一見複雑な交替のパターンに単純な説明を与えられること、また規則を異なる順序で適用すると、基底形が表層形に写像される仕方が変わることを示す。
第6章:分析をする(Doing an Analysis)
多数の言語の音韻体系の一部を使って、音韻の問題を解くときの推論を明示的に示す章である。最初の分析は推論を意図的に詳しく述べ、場合によっては最初に誤った分析の道をたどり、学生がそれに気づき正しい道に戻れるようにする。仮説の形成、検証、修正と、競合する仮説が中心となる。
第7章:音韻類型論と自然さ(Phonological Typology and Naturalness)
言語間に見られる一般的なパターンとまれなパターン、そして分析を選ぶときに自然さがどう使われるかを見る章である。分節音の目録と有標性の考え方を扱い、[p t k] は一般的で、口蓋垂音の [q] はそれほどではないという例を挙げ、機能的説明の問題にも触れる。世界の約7000の言語のうち、音韻類型論に役立つほど十分に研究されているのはごく一部にすぎないと指摘する。
第8章:抽象性と心理的実在性(Abstractness and Psychological Reality)
基底形と表層形はどれほど異なりうるか、抽象性に対するどんな制約が成り立つか、これらの問いを経験的にどう扱うかを問う章である。中心の問いは、音韻分析の証拠となるのは何かということである。絶対的中和、心理的実在性、外的証拠が重要用語である。
第9章:非線形表示(Nonlinear Representations)
最後の章は、音の表示の別のモデルを導入する。その動機は、声調が線形理論にもたらした問題である。自律分節理論による声調の扱いを示し、浮遊声調、声調の安定性、素性幾何学、音節を扱う。理論がどのように、なぜ変わるのかを示すこともねらいである。
主要概念
第1–3章:音韻論とは何かから素性理論まで
- 音韻規則:ある文脈での音の予測可能な発音の記述。英語の無声閉鎖音の有気音化など。
- 音素と異音:心的な単位としての音と、その予測可能な変異。相補分布と対立によって見分けられる。
- 素性と自然類:分節音を構成する普遍的な性質と、規則が同じように扱う音のグループ。
第4–6章:基底表示から分析をするまで
- 基底表示:発音の導出元となる語の記憶された形。予測できない情報を含まなければならない。
- 中和:規則によってある文脈で対立が失われること。
- 規則順序:規則を異なる順序で適用したときの表層形への効果。
- 仮説検証:データセットに対する競合する分析を立て、検証し、修正すること。
第7–9章:類型論から非線形表示まで
- 有標性と自然さ:言語間でより一般的で、したがってより予想されやすい分節音や規則があるという考え方。
- 抽象性と外的証拠:基底形が表層形からどこまで異なりうるか、分析を裏づける証拠は何か。
- 自律分節音韻論:声調などの素性を分節音から独立したものとして扱う非線形のモデル。浮遊声調、素性幾何学、音節を含む。
批判的分析
長所
- 実際にやって分析を学ぶ。 出版社によれば、本書は学生に、なじみのない言語のデータを分析し、仮説を立てて検証し、データを批判的に考えることを教える。第6章は誤った道も含めて推論を示し、本書にはさまざまな言語の問題セットを含む60を超える演習がある。
- 明確な学習の足場。 各章はプレビュー、目標、重要用語で始まり、流れを追い、復習しやすい。
- 理論の変化への目配り。 最後の数章は何が証拠となるか、理論はなぜ変わるのかを問う。第9章は声調の難しさを新しいモデルの動機に用い、学生は理論がデータに応えるものだと理解できる。
- 評価。 出版社のページに引用された推薦文には、B. Elan Dresher(トロント大学)の、本書は音韻論のやり方と音韻論者のように考える方法を示すという評、また Bert Vaux(ケンブリッジ大学)の、詳細な議論の重視、中級の難易度、なじみのない言語からの十分に練られた例の多さを挙げる評が含まれる。
短所
- 枠組みの範囲。 章題は規則に基づく分析、素性理論、非線形表示を中心としており、目次には制約に基づくアプローチの章はないため、それらについては別の資料が必要である。
- 転写の独立した章がない。 第1版には「Phonetic transcriptions」という章があったが、第2版の目次にはない。第1章は音韻論の音声学的な基盤を示し、出版社は更新された転写体系と音声記号の参照表に言及しているが、音声学に不慣れな学生は別の音声学の教科書を使うべきである。
- 問題中心の構成。 本書はデータセットと演習を通じて教えるため、分析の練習よりも音韻理論の論述的な概観を求める読者には合わないかもしれない。
- 解答は限定されている。 出版社によれば、教授上の提案と解答は認証された教員に限られているので、独習の学生は公式の解答で答え合わせができない。
コースにおける位置づけ
Odden の本は、このコースにおける音韻論の分析と理論の教科書である。Ladefoged と Johnson の A Course in Phonetics は、音声の産出と音響的性質、実践的な転写を教え、Odden の初めの章の前、あるいは並行して読む通常の相棒である。Clark らの An Introduction to Phonetics and Phonology は両分野を1冊にまとめているので、両方を1冊で求めるコースに向いている。Carley、Mees、Collins の Practical English Phonetics and Phonology は英語に焦点を当てたワークブックである。
Johnson の Acoustic and Auditory Phonetics と Ladefoged の Elements of Acoustic Phonetics は、物理的な信号をさらに深く知りたい読者向けの専門的な音声学の本であり、Odden が扱う音韻分析の代わりにはならない。
本書の使い方
本書は、言語学の基礎知識しかない学部生と、大学院の初年次の学生のためのものである。音声記号と調音の用語に多少なじんでいると助けになる。第1章は音韻論の音声学的な基盤を扱う。
進め方の例を挙げる。第1章から第5章を順に読む。それぞれが前の章に依存するからである。次に進む前に各章の演習をやり、それを本書の中核とみなす。第6章は、分析の作業全体を練習するのに最適な箇所で、そこにあるモデルを順にたどる。第7章と第8章は理論と証拠の側面を求めるコースに向いており、第9章は自律分節音韻論や声調に進む学生にとって自然な終点である。転写になじみがなければ、初めの章を音声学の教科書と組み合わせ、コースが制約に基づく音韻論を扱うなら、あとでその教科書と組み合わせる。
