01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Ladefoged, P. (1995). Elements of Acoustic Phonetics (2nd ed.). University of Chicago Press.
章の要約
本書は約220ページ、線画122点を収めた短い本で、物理学や数学の予備知識のない読者を、音とは何かという話から、音声研究室で使われるデジタル技術まで導く。第2版は11章からなり、初版は7章だった。新しい4章はコンピュータによって可能になった実験的手法を扱っており、出版社が新しい内容として挙げる話題(声道の共鳴、デジタル音声処理、フーリエ解析、線形予測符号化)は第8–11章に対応する。第1–7章は、音波の基本的性質から聴覚と音声の産出へと進む。
第1–2章:音波;音の大きさと高さ
最初の2章は、音波とは何か、その物理的性質の変化が聞き手には音の大きさ(ラウドネス)と高さ(ピッチ)としてどのように聞こえるかを述べる。以後のすべての土台となる部分である。
第3–4章:音質;波の分析
第3章は、音の大きさや高さと並ぶ、音声の音質を扱い、第4章は波の分析を扱う。Karen Steffen Chungは Language 誌の書評で、本書が、音とは何かという最も基本的な記述から、複合波、フーリエ解析、デシベル尺度へと読者を導くと述べている。
第5–7章:共鳴;聴覚;音声の産出
第5章は共鳴を導入する。Chungは、声道に多数ある共鳴器の複雑さが、単純化された図による類比を通じて徐々に組み立てられていくと述べている。聴覚と音声産出の章は、その物理学を聞き手の耳と話し手の発声器官に結びつける。
第8章:声道の共鳴
声道の章は、共鳴についてのそれまでの考え方を音声に適用する。出版社は、この部分がフォルマントと声道のさまざまな空洞との関係を説明していると述べている。
第9–11章:デジタル音声処理;フーリエ解析;デジタルフィルターとLPC分析
最後の3章は、音波がコンピュータでどのように保存・処理されるか、フーリエ解析の数学、そしてデジタルフィルターと線形予測符号化(LPC)を扱う。LPCについて出版社は、音声の分析で最も頻繁に使われる式だとしている。Chungは、デジタル音声処理の扱いが、8ビットと16ビットの量子化の範囲の違い、信号ごとに必要な標本化周波数、フィルターの用途など、より広く応用できる考え方を明確にしている点を挙げている。
主要概念
第1–4章:音とその性質
- 音波:第1章で性質が述べられる物理的信号。
- 音の大きさと高さ:波の振幅と周波数に関係する聴覚上の印象。
- 音質と波の分析:第3章と第4章の主題である、音声の音質と波の分析。
第5–8章:共鳴、聴覚、声道
- 共鳴:第5章の主題で、第8章で声道へと拡張される。
- フォルマントと空洞:声道の共鳴とそのさまざまな空洞との関係。
第9–11章:コンピュータによる分析
- デジタル音声処理:量子化や標本化を含む、音波をコンピュータに保存すること。
- フーリエ解析:波を周波数成分に分解すること。
- 線形予測符号化:デジタルフィルターとともに音声を分析するために使われる手法。
批判的分析
長所
- **理系の背景がない読者向けに書かれている。**出版社は、物理学や数学の予備知識を前提としないと述べており、Chungは、Ladefogedが数式の部分で読者の手を引くようにして導き、数に弱い人にも分かるようにすべてを丁寧に説明していると指摘する。
- **段階を追って理解を築く。**書評は、声道にある多数の共鳴器の姿が、単純化された図による類比によってゆっくり組み立てられていくと述べ、70.7%がなぜ特別な数なのか、放射係数とは何か、減衰共鳴器と非減衰共鳴器がどう振る舞うかといった点がはっきり理解できるようになるとしている。
- **現在の研究室の実践まで拡張されている。**第2版はコンピュータを用いた方法についての4章を追加している。Chungはデジタル音声処理の扱いを優れていると評し、コンピュータによる音声処理の文献に進む読者は、本書の情報を確かなものと感じるだろうと述べている。
- **コンパクト。**約220ページで、表13点と線画122点を含む。
短所
- **拾い読みには向かない。**Chungは、すでに概念をよく知っている場合を除き、ざっと読むより丁寧に読み、読み返すのに適した、何よりも内容の濃い本だとしている。
- **終盤の計算が重い。**最後の章では、原理的には難しくないものの、計算がやや長くなり、圧倒されるとChungは述べている。
- **技術面が古い。**デジタルの章は1995年時点のコンピュータ音声処理を反映している。原理は今も有用だが、現在のソフトウェアや実践は扱われない。
- **音響に特化している。**音声産出の1章を除けば内容は音響であり、調音や音声表記については一般的な音声学の授業や教科書が別に必要である。
コースにおける位置づけ
音声学・音韻論のコースのなかで、本書は音声の物理学への簡潔な入口である。LadefogedとJohnsonの A Course in Phonetics は、音声の産出と音響的性質を、表記の練習とともに実践的に学ぶ入門書で、最初に読む本として自然であり、本書は音響学をより丁寧に基礎から学びたい読者がそのあとに読む。Johnsonの Acoustic and Auditory Phonetics は音声の物理的信号とそれを解釈する知覚系を扱っており、Ladefogedの音声信号と聴覚の扱いと重なるので、比較しながら、あるいは続けて読むことができる。
Clarkらの An Introduction to Phonetics and Phonology は、調音音声学・音響音声学と音韻理論を組み合わせ、より広い文脈を与える。Oddenの Introducing Phonology と、Carley、Mees、Collinsの Practical English Phonetics and Phonology は音のパターンと英語に集中しており、Ladefogedが扱う波、スペクトル、デジタル分析の代わりにはならない。
本書の使い方
本書は、音声学の入門科目を履修し、研究室で使うスペクトログラムや分析ツールが何をしているのかを理解したい学生、および音響学の入門書を必要とする音声科学の学生に向いている。物理学や微積分は不要である。
実践的な進め方は次のとおり。第1–4章を順番にゆっくり読み、各説明を理解してから先へ進む。言語学者にとっての中心は第5–8章で、共鳴をフォルマントと声道の空洞に結びつけている。第9–11章は技術的な部分である。第9章はデジタル化の実際上の帰結(標本化周波数、量子化)を知るために読み、後半の数学を飛ばしてもよい。第10–11章は、プロジェクトでフーリエ解析やLPCが必要になった時点で戻って読む。読むときは音声分析用の録音とソフトウェアを併用し、後の章が前の章に言及する箇所では前の章を読み返す。
