01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Dodds, K. (2019). Geopolitics: A Very Short Introduction (3rd ed.). Oxford University Press. Very Short Introductions.
章の要約
第3版は6つの章と短い後記から成り、本文は約145ページで、そのあとに参考文献、読書案内、索引が続く。著者はロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の地政学教授である。出版社の紹介文は「地政学はつかみどころのない言葉だ」という一文で始まり、本書の立場を示す。地政学とは、河川や山脈や気候が政治に与える影響をはるかに超えるものであり、地理は重要だが、評論家や大統領たちが考えるような仕方で重要だとは限らない、というものである。最初の2章は用語を定義し、その問題含みの歴史をたどる。続く4章は、権力のアーキテクチャ、大衆文化、アイデンティティ、モノを通して地政学を検討する。出版社によれば、この版では新たにポピュリズムと経済ナショナリズムについての節が加えられ、「アメリカを再び偉大に」、「一帯一路」、ブレグジットが、政治的プロジェクトのための領土的な枠づけの例として取り上げられている。
第1章:地政学とは何か
冒頭の章は地政学の三つの性質を示す。空間と領土に対する影響力と権力への関心、世界の出来事を理解するための地理的な枠組みの使用、そして未来志向である。最後の点は、資源、領土、人口に対する国家の基本的な利益は変わらないという前提に立って予測を示すことを指す。さらに、この語を理解する二つの大きな仕方を区別する。国家権力、領土的利益、地理的環境の関係を中心に据える古典地政学と、言説とイデオロギーに注目する批判地政学である。
第2章:知的な毒?
約30ページと最も長いこの章は、第二次世界大戦前から現在までの地政学の歴史、すなわちその起源、展開、受容をたどる。そこには、地政学が知的に欺瞞的で、イデオロギー的に疑わしく、ナチズムやファシズムとの結びつきによって汚されているという非難も含まれる。続いて批判地政学を紹介し、大統領や評論家たちが危険、脅威、権力を示し未来を予測するために、この語をいかに好んで使うかに触れる。
第3章:アーキテクチャ
この章は「地政学的アーキテクチャ」という概念を紹介する。それは、国家やその他の組織が領土とフローの交わりにアクセスし、管理し、規制し、それによって内と外、市民と外国人、国内と国際の境界を引くやり方である。二つの主題が検討される。一つは主権と、それが領域国家とその国境において果たす役割、もう一つは、国家が無秩序あるいは統治されていないと判断した空間を統制しようとする20世紀と21世紀のアーキテクチャである。
第4章:大衆地政学
ここでの焦点は大衆文化と地政学のつながりであり、とりわけ画像と音の力が強調される。映画とテレビは地政学的な文化の形成において重要なものとして扱われる。既存のニュースメディアは依然として重要だが、インターネット、ソーシャルメディア、ブログ、ポッドキャストは地政学の論争的で感情的な側面を増幅しうるため、ますます注目を必要とするだろうと本章は論じる。
第5章:アイデンティティ
地政学は、本質的に自己と他者の違いを想像し言葉にすることだと示される。本章は、その過程における感情と情動の役割、恐怖、不安、希望、平和といった感情がメディアや指導者によってどのように煽られ操作されうるか、そしてアイデンティティの物語が個人や国家より下のレベルから、汎地域的、さらには地球規模に至るまでさまざまなスケールでどのように作用するかを検討する。
第6章:モノ
最後の章は、地政学はモノを通して想像されるだけでなく、モノによって行使されもすると論じる。旗、パイプライン、地図、廃棄物、アクションフィギュアなどが、地政学的な関係を形づくり、国家の権威を表現し、地政学の人間的要素と非人間的要素を結びつけるものとして論じられる。
後記
2ページの短い締めくくりの節である。
主要概念
第1〜2章:定義と歴史
- 地政学:空間と領土に対する権力への関心、世界の出来事を解釈するための地理的枠組みの使用、そして予測を行う習慣。
- 古典地政学:国家権力、領土的利益、地理的環境の関係の研究。
- 批判地政学:世界政治を語る際に地理がどのように使われるかを、言説とイデオロギーに注目して研究するアプローチ。
- 地政学の論争的な歴史:この語とナチズムやファシズムとの結びつき、そしてその後の復活。
第3〜4章:アーキテクチャと大衆文化
- 地政学的アーキテクチャ:国家やその他の主体が領土とフローを規制し、内と外の境界を引くための仕組み。
- 主権:領域国家がその空間と国境に対してもつ権威。
- 大衆地政学:映画、テレビ、ニュース、ソーシャルメディアを通じた地政学的な考えの形成。
第5〜6章:アイデンティティとモノ
- 自己と他者:地政学的な物語が依拠する、集団間の想像された違い。
- 感情と情動:アイデンティティと地政学を結びつけ、操作されうる恐怖や希望などの感情。
- 地政学的なモノ:旗からパイプラインまで、地政学がそれを通じて想像され行使される物質的なもの。
批判的分析
長所
- 用語のつかみどころのなさに真剣に向き合う。 第1章は単一の定義を与える代わりに、地政学を三つの性質と二つの伝統に分解し、第2章は批判地政学を紹介する前に、この語の信用を失った過去に向き合う。ニュースでこの語に出会う読者は、それがどのように使われているかを問うための道具を得られる。
- 国家を超えて。 出版社は、地政学が政府だけでなく市民、企業、国際機関、社会運動にも影響することを強調しており、後半の章はそれを実際に追い、大衆文化、アイデンティティ、日常のモノを地政学の場として扱っている。
- 刊行時点で新しい。 第3版はポピュリズムと経済ナショナリズムについての内容を加えており、第4章は映画やテレビと並んでソーシャルメディアやポッドキャストを取り上げている。
- 具体的な入口。 第6章が旗、パイプライン、地図、廃棄物、玩具といったモノを選んでいることは、レポートやゼミの議論のための手に取れる出発点を学生に与える。
短所
- 地域別ではなくテーマ別。 本書は世界の地域や紛争ではなく概念によって構成されている。出版社は地域的な事例研究を用いていると述べているものの、特定の地政学的対立の概観を求める読者は他の文献が必要になる。
- 古典理論は圧縮されている。 本書の語彙にハルフォード・マッキンダーやハウスホーファーといった名が現れる古典的伝統は歴史の章の中で扱われ、本書の残りはアーキテクチャ、大衆文化、アイデンティティ、モノを追う。古典的な理論家を詳しく学ぶ必要のある学生は、別の文献で読む必要がある。
- 出来事による古さ。 2019年刊行のため、COVID-19のパンデミック、2022年のロシアによるウクライナへの全面侵攻、その他のその後の展開より前の本である。
- 薄い結論。 後記は2ページしかなく、本書はテーマを本格的に総合することなく終わる。
コースにおける位置づけ
政治地理学のリストの中で、本書は最も簡潔な入門書であり、とくに地政学について最初に読むのに自然な一冊である。Sara Smithの Political Geography: A Critical Introduction は分野全体についての入門的な教科書で、世界秩序から身体や日常生活に至るあらゆるスケールにおける空間の中の権力を扱う。Doddsの大衆地政学、アイデンティティ、モノの章は、同書のフェミニズム的・批判的アプローチへのよい準備になる。FlintとTaylorの Political Geography: World-Economy, Nation-State, and Locality は地政学を世界システム論の枠組みの中で扱っており、Doddsの文化的な重点に対する構造的な対応物となる。
PainterとJeffreyの Political Geography は、国家、領土、市民権、ナショナリズム、地政学を軸に構成された理論志向のテキストで、概念を深く展開したい学生がDoddsのあとに読むのに適している。Eldenの The Birth of Territory は領土という概念についての学術的な歴史書であり、Doddsの第3章は主権と国境を通じてその概念に触れている。de Blijの Why Geography Matters More Than Ever は、場所、距離、環境が世界政治においてなお力をもつと論じており、地理は重要だが評論家が考えるような仕方でとは限らない、というDoddsの警告と突き合わせて読むことができる。
本書の使い方
時事問題への関心以外に予備知識は必要ない。地理学、政治学、国際関係論の1年生や、この語がどのように使われ、また誤用されているかを理解したい一般読者に適している。
読み方の提案:
- まず第1〜2章を順に読む。 三つの性質、二つの伝統、そして歴史が、残りの部分の概念的な土台となる。
- 次に第3章を、国家と国境をめぐる古典的な関心と批判的アプローチとの橋渡しとして読む。
- 第4〜6章は関心や授業のテーマに応じてどの順でもよい。メディア、アイデンティティ、物質文化についてのゼミの文献としてよく機能する。
能動的に読むとよい。「地政学」という語を使っている最近のニュース記事を一つ取り上げて第1章の三つの性質で分析する、あるいは第6章にならってモノを一つ選び、それが体現する関係をたどってみる。この版は2019年のものなので、最近の出来事は最新の資料で補い、参考文献と読書案内を使ってコースのより長い文献へと進むとよい。
