01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Coe, N. M., Kelly, P. F., & Yeung, H. W. C. (2020). Economic Geography: A Contemporary Introduction (3rd ed.). Wiley-Blackwell.
章の要約
本書は15章を5部に分け、全576ページである。各章の題は問いの形をとり、各章は番号付きの節に分かれ、冒頭に導入、末尾にまとめが置かれる。出版社によれば、各章には学習目標、囲み記事、論述問題、まとめ、さらなる読書が備わっている。見本の章はその型を示している。章の冒頭に短い「目標」があり、末尾には論述問題の例とさらなる学習のための資料がある。5つの部は、概念的基礎(第1–4章)、主要な経済主体(第5–8章)、経済の統治(第9–11章)、社会的・文化的側面(第12–14章)、結論(第15章)である。
第1章:地理学:空間的にどう考えるか
この章は、瓶入りの水という1つの事例を通じて、4つの地理学的な視点を導入する。空間的なパターン、場所の独自性、空間を超えたつながり、そして領域的な権力である。各節は、この商品をめぐる論争、立地とパターン、場所の独自性、ネットワーク、領域と進み、スケールについての囲み記事もある。著者は、この4つの視点が後のすべての章に通底すると述べている。
第2章:経済:それは何を意味するか
何を「経済」と数えるのかを問い、この観念の簡単な歴史をたどり、基本的な経済過程を概説したうえで、経済地理学が経済学とどう違うかを説明する。
第3章:資本主義のダイナミクス:なぜ経済成長はこれほど不均等か
不均等発展、資本主義体制の基本、不均等な地理的発展の空間とスケール、そして場所や地域が自らの将来を描けるのかどうかを扱う。
第4章:ネットワーク:世界経済はどのようにつながっているか
遠く離れた場所をつなぐ生産ネットワーク、商品を集める物流革命、そして生産ネットワークはどこで終わるのかを扱う。廃棄物が再び商品になる過程も含まれる。
第5章:多国籍企業:どのようにしてすべてをまとめ上げているか
多国籍企業が企業内関係と企業間関係を通じてどのように組織されているか、またグローバルな展開に伴うリスクを検討する。
第6章:労働:移民労働者は新しい標準か
移民労働者を、類型、定住先と出身地、組織化のされ方、そして移民産業という観点から考察する。
第7章:消費者:私たちが買うものは誰が決めるか
消費を社会文化的な過程として扱い、小売、消費の不均等な地理、旅行と観光についての節がある。
第8章:金融:資本はなぜこれほど強力になったか
実体経済がどのように資金調達されるか、規制緩和とグローバル金融の台頭、金融化、そして主流とは異なる金融のあり方を説明する。
第9章:国家:誰が経済を動かしているか
新自由主義的グローバル化が国家の終わりをもたらすという主張、国民経済の設計者としての国家、資本主義の多様性と国家、段階的主権を検討する。
第10章:国際機関:それらはどのように世界の発展を統治し促進するか
世界経済がどのように統治されるか、グローバル・サウスの発展がどのように促されるかを扱い、コミュニティに基づく開発も含まれる。
第11章:環境:地球規模の気候変動はすべてを変えるか
気候変動の原因、影響、コスト、排出の規制、グリーン経済の地理を述べる。
第12章:クラスター:なぜ近接が重要か
産業立地論から出発し、集積の経済、地域の生産文化、クラスターは一時的なものでありうるという見方へと進む。
第13章:アイデンティティ:経済にはジェンダーや人種の偏りがあるか
労働市場と職場におけるジェンダーと人種、エスニックなクラスターとネットワーク、重なり合うアイデンティティを考察する。
第14章:オルタナティブ:多様な経済をつくれるか
資本主義を中心に据えた経済観を超えて、もう1つの市場、企業、働き方、所有、そして多様な経済の限界を論じる。
第15章:経済地理学:知的な旅路と将来の展望
この分野がどのように変わってきたか、そしてそれが研究する世界がどのように変わってきたかを振り返る。
主要概念
第1–4章:基礎
- 場所、ネットワーク、領域:第1章で導入される4つの空間的視点のうちの3つ。残る1つは立地のパターンである。
- スケール:局所から世界までのどのレベルで経済過程を検討するかという概念。第1章に専用の囲み記事がある。
- 不均等発展:経済成長が場所や地域のあいだで不均等に分布すること。
- 生産ネットワーク:ある商品をつくるために遠く離れた場所を結びつける、企業と活動の連鎖。
第5–11章:主体と統治
- 企業内関係と企業間関係:多国籍企業が活動を組織する2つの方法。
- 金融化:経済生活における金融市場と金融上の動機の役割の拡大。
- 資本主義の多様性と段階的主権:国家と経済の関係を比較するための見方。
- グリーン経済:気候や環境の目標に方向づけられた経済活動。
第12–15章:社会、オルタナティブ、学問分野
- 集積の経済と非取引的相互依存:企業をクラスターの中で結びつける利益と地域的な関係。
- 交差するアイデンティティ:ジェンダー、人種などのアイデンティティが経済生活に及ぼす複合的な影響。
- 多様な経済:もう1つの市場、企業、働き方、所有を含む、資本主義の主流の外にある経済的実践。
批判的分析
長所
- 一貫した組織原理。 第1章は空間的に考える4つの方法を示し、それらが各章に通底すると述べているので、本書は話題の寄せ集めではなく、ひとつの論述として読める。
- 冒頭の章に練り上げられた事例がある。 瓶入りの水の事例は第1章全体にわたって展開され、経済主体を扱う章に入る前に、抽象的な概念を具体的にする。
- 学派ではなく、問いと主体で構成されている。 章題は問いであり、第II部と第III部は主要な主体(企業、労働者、消費者、金融、国家、国際機関)に沿って進む。理論よりも問題から考えるほうが得意な学生に向く。
- 教育上の工夫。 出版社は学習目標、事例、囲み記事、論述問題、まとめ、さらなる読書を挙げており、見本の章の末尾にも論述問題の例と資料の一覧がある。
- 大幅な更新。 第3版は、国際開発とガバナンス、気候変動、オルタナティブな経済についての章を加え、労働移動、グローバル生産ネットワーク、進化経済地理学についての新しい内容を加えた。Wiley が転載する評者のコメントは、主要な話題を軸にした章の構成(Nancy Ettlinger、オハイオ州立大学)と、事例の国際的な幅広さ(Adam Tickell、サセックス大学)を評価している。
短所
- 分量。 576ページで、多くの章が30〜40ページあり、1学期の授業で使える量を超えている。教員は第II部から第IV部のあいだで取捨選択する必要がある。
- 形式的な立地理論は少ない。 産業立地論は第12章「クラスター」の中の1節にとどまり、目次には定量的な方法や空間経済モデルの章はない。
- 事例データが古くなる。 見本の章にある瓶入りの水の統計や企業データはおおむね2017年ごろまでのもので、読者はこうした数字を最新の資料と照らし合わせて確かめる必要がある。
コースにおける位置づけ
このコースの書目の中で、Coe、Kelly、Yeung は、経済地理学の包括的な入門書2冊のうちの1冊である。MacKinnon と Cumbers の An Introduction to Economic Geography は、グローバル化、不均等発展、場所という3つの主題から、似た範囲を扱う。第1章の見本は、これを分野へのさらなる入門書の1つに挙げており、著者自身が読者にこの本を勧めていることがわかる。Aoyama、Murphy、Hanson の Key Concepts in Economic Geography は、中心概念についての簡潔な論考集で、手早い参照用になる。
Peter Dicken の Global Shift は、多国籍企業、国家、労働、消費者、市民社会がグローバル生産ネットワークを通じてどのように相互作用するかを詳述しており、第4–7章と第9章と重なる。2つ目の授業に向く。Combes、Mayer、Thisse の Economic Geography: The Integration of Regions and Nations は、経済学者のための大学院レベルの教科書で、形式的なモデルの空白を埋める。Jean-Paul Rodrigue の The Geography of Transport Systems は、第4章が触れる輸送と物流の主題を掘り下げる。
本書の使い方
出版社は本書を、この分野に初めて触れる学生、確かな基礎を求める人、経済に関心のあるより広い読者に向けたものとして紹介しており、前提知識は示していない。第2章が「経済」という観念そのものから説き起こしているので、経済学の予備知識は想定されていないようである。
- 中核: 第I部(第1–4章)を順に読む。4つの視点と、不均等発展およびネットワークの考え方が繰り返し現れるからである。
- 授業に合わせて主体を選ぶ: 第5–11章はほぼどの順序でも読める。グローバル化と統治の授業なら第5、8、9章、仕事と消費の授業なら第6、7、13章、開発と環境の授業なら第10、11章を取る。
- 選択的に読む部分: 産業地区や地域開発を扱う授業なら第12章、市場経済に代わるものを知りたいなら第14章。
- 最後に第15章を読み、 分野全体を振り返る。
- 練習: 各章末の論述問題の例を使い、第1章の方法(パターン、場所、ネットワーク、領域)を自分で選んだ商品に当てはめてみる。
