01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Combes, P.-P., Mayer, T., & Thisse, J.-F. (2008). Economic Geography: The Integration of Regions and Nations. Princeton University Press.
章の要約
本書は約400ページの空間経済学の教科書で、著者らの2006年のフランス語の著作を翻訳したものである。出版社は、上級の学部生、大学院生、そして経済地理学、地域・都市経済学、国際貿易、応用計量経済学の研究者に向けた、完全で最新の入門書として位置づけている。財・思想・人の移動性が高まっているにもかかわらず経済活動が不均等に集中し続けるのはなぜかを説明する理論と、集積の実証研究についての詳細な議論を組み合わせている。公表されている目次は章題のみで節見出しはない。章題は、背景、理論モデル、実証研究の3つに大別できる。
経済思想における空間
目次の最初の章は、この分野の歴史と背景(出版社が本書の扱う内容の一つとして挙げている)を提供し、以後のモデルの思想的な文脈を設定する。
独占的競争
最初のモデル構築の章である。差別化された品種と価格指数をもつ独占的競争は、本書の後のモデル(貿易と集積)が土台とする市場構造である。索引語には弾力性や品種の数が含まれる。
地域間貿易と市場規模/重力と貿易費用
地域間の貿易を扱う2つの章である。前者は地域間貿易を市場規模と結びつけ、後者は、本書の残りを貫く、距離と経済的相互作用との結びつきである重力と貿易費用を取り上げる。
中心―周辺構造
新経済地理学のもっともよく知られたモデルである、中心―周辺構造を論じる章。クルーグマン・モデルの議論を含み、索引語には対称均衡とその安定性が挙がっている。
中間財と地域格差の進展/空間的発展のベル型曲線
中心―周辺の枠組みに続く2つの章である。前者は地域格差の説明に中間財を導入し、後者は空間的発展のベル型曲線を扱って、線形の中心―周辺モデルと、ベル型曲線がいつ現れるかについての節をもつ。
空間的競争
企業間の空間をまたぐ競争を論じる章で、索引語にはナッシュ均衡が挙がる。
空間的集中の測定/空間的集中と地域生産性の決定要因
実証の部分がここから始まる。前者は空間的集中の測定を扱い、索引語にはジニ係数、タイル指数、ローレンツ曲線が挙がる。後者は空間的集中と地域生産性の決定要因に目を向ける。
経済地理学の実証分析/数値を伴う理論
理論をデータに突き合わせる2つの章である。出版社は、本書が空間的集中の測定から経済地理モデルの構造推定に至る、集積の実証分析を扱うと述べている。索引語には固定効果、説明変数、市場ポテンシャルが挙がる。
結びの言葉
最後の章。出版社によれば、本書は空間経済の進展が将来に及ぼす含意を検討し、他の主要な社会的・経済的傾向と関連づける。
主要概念
背景と基礎
- 独占的競争:差別化された財をもつ市場構造で、後のモデルの土台となる。
- 重力と貿易費用:貿易量と距離および取引費用との関係で、章題にもなっている。
中核のモデル
- 中心―周辺構造:経済活動が中心に集中するパターンで、1章の主題。
- 空間的発展のベル型曲線:章題に現れる、空間的発展と経済統合との関係。
- 集積力と分散力:両者のバランスが、活動が集中するか分散するかを決める対抗的な力(索引に「分散力」がある)。
測定と推定
- 空間的集中の指標:活動の集中度を記述する指数(ジニ、タイル)。
- 構造推定:理論モデルをデータに当てはめること。出版社の説明に挙がっている。
批判的分析
長所
- 理論と証拠の両立。 出版社は、理論分析が実証の議論で補われ、理論と実証研究を組み合わせていると強調している。章の並びもこれを裏づけ、モデルの7章に測定と推定の4章が続く。
- 歴史から推定までの道筋。 「経済思想における空間」から「数値を伴う理論」への並びにより、モデルがどのように検証可能になるかが学生に見える。
- 範囲の広さ。 本書は集積を貿易、地域格差、国家の統合と結びつけ、将来の含意についての結びの章もある。
短所
- 形式的で経済学中心。 章題と索引語は、形式的なミクロ経済モデル(均衡、弾力性、推定)と計量経済学を指しており、多くの地理学科で教えられる政治経済学の伝統ではなく、経済学者が実践する経済地理学である。
- 前提知識の水準が高い。 対象は上級の学部生と大学院生であり、中級の経済学と多少の微積分を知らない読者は追うのに苦労する。
- 刊行時期。 2008年刊のため、その後の定量的な空間モデルの発展は含まれていない。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースでモデルに基づく形式的な扱いをする一冊である。『Economic Geography』は経済活動の空間パターンの総合的な概説、MacKinnonとCumbersの『Introduction to Economic Geography』はグローバル化、不均等発展、場所を通じて主題に迫る本、『Key Concepts in Economic Geography』は概念ごとの短い論考集であり、いずれも地理学の入門書で、先に読むのに向く。『Global Shift』は多国籍企業と産業を通じたグローバル化を詳しく記述した本で、本書のモデルに対する有益な実証面の対照となる。『The Geography of Transport Systems』は、貿易費用の背後にある輸送ネットワークを扱う。
本書の使い方
経済学や計量地理学の大学院生と上級の学部生、また新経済地理学とその実証的検証を1冊で読みたい研究者に向く。現実的な前提知識は、中級ミクロ経済学と基礎的な微積分・統計である。
妥当な順序は、まず「経済思想における空間」で背景をつかみ、次に独占的競争、貿易と重力、中心―周辺構造の各章を読むことである。これらは本書の前半にあり、以後の内容の土台になる。そのあとは目的に応じて選ぶ。地域格差ならベル型曲線と中間財の章、実証研究なら測定と推定の章である。人文地理学から来た読者は、数式に入る前に、中心―周辺の章と結びの言葉を先に読んで論点をつかむとよい。
