01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Sheppard, E., Porter, P. W., Faust, D. R., & Nagar, R. (2009). A World of Difference: Encountering and Contesting Development (2nd ed.). Guilford Press.
章の要約
本書は3部・全24章、約665ページからなる。第2版では、初版の著者であるEric SheppardとPhilip Porterに、David FaustとRicha Nagarの2人が加わり、初版の政治経済学に並べてフェミニズムとポストコロニアルの視点が導入された。著者らは、本書がグローバルな資本主義的開発のうち排除されてきた空間、主体、スケールから出発し、そのあとで支配的なものへ向かうこと、また章の間に流れや順序を常に押しつけてはいないことを述べている。
第1章:Introduction(序論)
冒頭の章は、ケニアのある村への想像上の訪問から始まる。大学に通った経験があり、携帯電話で姉と話す若者の姿が、地域の状況が純粋に地域的ではないことを示す。続いて「第一世界」「第三世界」というラベルを問い、啓蒙主義とその批判者を対置し(Yi-Fu Tuanの「コスモス」と「ハース(炉辺)」の対による)、ポストコロニアル思想と、不平等な立場から文化を表象することの問題へ進む。「熱帯性(tropicality)」の節は貧困を気候だけで説明することに反対し、「情愛飢餓(affect hunger)」の節は文化が人間関係からどう生まれるかを論じる。章は、4人の著者がどのように共同作業をしたか、そして本書が身体・共同体・地球という枠組みでどう組み立てられているかの説明で締めくくられる。
第2〜5章:Differentiated Ways of Knowing(差異化された知の方法、第I部の残り)
第2章「Measuring, Describing, and Mapping Difference and Development」は、差異と開発がどのように数値化され地図化されるかを扱う。第3章「Knowing the Third World: Colonial Encounters」と第4章「Knowing the Third World: The Development Decades」は、第三世界が、まず植民地主義によって、次いで国家主導の開発によって、認識可能な存在として構築されてきた経緯をたどる。第5章「The Third World and Neoliberal Globalization」は、その叙述を現在にまで導く。著者らによれば、序論を含む第I部の5章は、第三世界が認識可能な存在としていかに構築されるかについての、歴史的に特定された説明を示している。
第II部 第6〜12章:Differentiated Livelihoods and the Nonhuman World(差異化された生計と人間以外の世界)
この部は社会関係と生物物理的過程を結びつける。第6章「Geographies of Population: Discourse and Politics」と第7章「Contested Environments: The Entanglements of Environment, Development, and Globalization」は、人口と環境を争われる観念として扱う。第8章「Disease and Health」は健康に向かう。第9〜11章「Uncertain Rains: The Atmospheric Energy Cycle and the Hydrologic Cycle」「Other Challenges to Rural Livelihood: Soils, Vegetation, and Pests」「Nature as Latitudinal Trickster: The Carbon Cycle and Plant Growth」は、熱帯の農村の生計に関わる気候、水、土壌、植物の成長を説明する。第12章「The Management of Tropical and Subtropical Ecosystems: The Pokot of West Central Kenya—An Indigenous Knowledge System」は、在地の知の事例を示す。序論は第8〜12章を熱帯環境の特殊性と結びつけながら、熱帯だけが低開発の原因だという考えを退けている。
第III部 第13〜24章:Differentiated Social Relations Encountering Global Strategies(差異化された社会関係とグローバルな戦略との遭遇)
最も長い部は、世界経済の大規模な過程を順にたどる。第13〜15章は植民地主義を扱う。「The Historical Geography of Colonialism and the Slave Trade」「Colonialism as Spatial and Labor Control System」「The End of Colonialism and the Promise of Free Trade」。第16〜18章は資源と生産を扱う。「Trading Primary Commodities」「Peripheral Industrialization: Paths and Strategies」「The Earth's Crust as Resource」。第19章「Urbanization, Migration, and Spatial Polarization」は都市と移動を取り上げる。第20〜21章「Transnational Production」と「Foreign Branch Plants and Economic Growth」は多国籍企業を論じる。第22〜23章「Money and Global Finance Markets」と「Borrowing Money: Aid, Debt, and Dependence」は、いずれもBongman Seoとの共著で、金融、援助、債務を扱う。第24章「Toward Different Worlds」が本書を締めくくる。出版社は、持続可能な開発の約束と落とし穴に関する章を、第2版での追加として挙げている。
主要概念
第1章と第I部:知の方法
- 差異と知識:本書の中心となる対で、物質的な差異が、異なる知識によって生み出され正当化されるという考え方。
- 構築されたカテゴリーとしての「第一世界」「第三世界」:著者らが、問い直すためにあえて使い続けるラベル。
- コスモスとハース:普遍化する近代的プロジェクトと、ローカルなものを重んじる反動とのTuanによる対比。
- ポストコロニアルとフェミニズムの視点:第2版で加わった視点で、誰が誰のために語るのかを問う。
第II部:生計と人間以外の世界
- 熱帯性(tropicality):熱帯環境が貧困を引き起こすという主張で、本書は社会と環境が相互に構成し合うことを示してこれに異議を唱える。
- 先住民の知(indigenous knowledge):生態系を管理する在地の方法で、ケニアのポコット人が例として示される。
- 気候、水文、炭素の循環:農村の生計を形づくる物理的過程。
第III部:グローバルな戦略
- 空間と労働の統制システムとしての植民地主義:植民地体制が領土と労働をどう組織したか。
- 周辺部の工業化と多国籍生産:中核以外での工業成長の道筋と、多国籍企業の役割。
- 援助、債務、従属:富める国と貧しい国との金融関係。
批判的分析
長所
- 自然界と社会を1冊に。 第8〜12章は、病気、大気、水、土壌、植物の成長、熱帯の生態系を扱うので、学生は社会的な論点を手放さずに、開発の生物物理的な側面を見ることができる。
- 歴史的な奥行き。 最初の5章は、第三世界が植民地主義、開発の10年、新自由主義的グローバリゼーションを通じてどのように認識可能にされたかをたどり、そのあとの章で個別の過程に進む。
- 複数の理論的視角。 European Planning Studies誌の書評者は、加わった2人の著者が初版の政治経済学にフェミニズム的・ポストコロニアル的分析をもたらしたと述べ、Human Geography誌の書評者は、新版に通常期待される以上のものであり、具体例が豊富で、複雑な理論が平易に説明されていると書いた。
- 豊富な素材。 The Canadian Geographer誌は、本書を600ページを超える力作と呼び、50を超えるサイドバー、100を超える図表、50を超える表と地図を数えた。出版社は、多くの例が、グローバル・サウスの人々がグローバル化をどう経験し、どう争っているかを示すと付け加えている。
- 著者陣についての率直な記述。 第1章は4人の著者の間の緊張を説明しており、本書は読者に求める再帰性を自ら体現している。
短所
- 非常に長い。 約665ページで、24章すべてを扱う科目はないだろう。3つの部から取捨選択する必要がある。
- 意図的な不連続。 著者らは、常に流れや順序の感覚を押しつけているわけではなく、章やサイドバーが競合する議論を示すこともあると述べている。経験的な章を初期章の理論と突き合わせて読むよう読者に促しており、滑らかな教科書よりも読者に求めるものが多い。
- 自然科学の要求。 第9〜11章(大気のエネルギー循環と水文循環、土壌、炭素循環)は、社会科学系の学生になじみのない自然科学を持ち込む。
- 2009年刊行。 出版社は、この版を10年間の変化を反映して更新したものと説明しており、さらなる新版が予告されている。後半の章のデータ、たとえば金融や貿易に関するものは古くなっている。
コースにおける位置づけ
本書は、政治経済学とポストコロニアル・フェミニズムの批判に立脚した、充実した開発論の教科書である。PotterらのGeographies of Developmentは、開発理論を植民地史、グローバル化、不平等、制度、環境と結びつける地理学主導の入門で、最初の教科書に向く。WillisのTheories and Practices of Developmentは、近代化論から新自由主義、構造主義、草の根アプローチに至る主要な理論的伝統を簡潔に述べたもので、Sheppardらが批判的に扱う理論の短い入門として使える。SenのDevelopment as Freedomは、一般読者向けに書かれた、実質的な自由によって開発を判断すべきだという影響力のある議論であり、SachsのThe Age of Sustainable Developmentは経済学者による図解入りの入門書で、どちらも本書と突き合わせて読める視点を提供する。Dauncey、Desai、PotterのThe Companion to Development Studiesは、短い章からなる大部の参照書で、概念を調べるのに役立つ。
A World of Differenceは、批判的で政治経済学的、ポストコロニアルな見方をとる科目の主教材として、あるいは、より短い入門書で基本的な考え方にすでに触れた学生の2冊目として、最もよく機能する。
本書の使い方
本書は、地理学と開発学の上級学部生と大学院生向けで、開発についての入門課程を終えているのが望ましい。グローバル化と開発に関する科目の教科書として読める。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 序論と第2〜5章。残りが依拠する、差異と知識の枠組みを与える。
- テーマで選ぶ: 環境と生計なら第6〜12章、世界経済の歴史なら第13〜15章、生産、貿易、金融なら第16〜23章。第24章は議論をまとめる。
- 互いに突き合わせて読む: 著者らの提案に従い、第III部の経験的な章を第I部の理論的な章と組み合わせ、両者が食い違う点を記録する。
- サイドバーと図を活用する: 多くの例がそこにあり、ゼミでの議論やエッセイの出発点に適している。
