01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Holt, J. (2023). Systems Engineering Demystified (2nd ed.). Packt Publishing.
章の要約
第2版は4部・全13章からなり、印刷版で約530ページある。全体をまとめる考え方はモデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)で、表記法としてSystems Modeling Language(SysML)を用い、第3〜8章はそれぞれ「Defining the Framework」という節で終わる。この節で、その章の概念がモデルのビューの集合に加えられていく。ほぼすべての章が要約、自己評価課題、参考文献で締めくくられる。Packtの紹介によれば、この版ではMBSEの新しいアプローチと、「Trinity」アプローチによるその導入を扱い、著者の30年にわたる経験に基づく効果的なアプローチについての新しい節で終わる。
第1章:システムズエンジニアリング入門
第I部「システムズエンジニアリング入門」は、システムズエンジニアリングの簡単な歴史、その定義、そしてなぜそれが必要なのかという論拠から始まる。Packtはその動機を、複雑さ、あいまいなコミュニケーション、理解の欠如という「三つの悪」として示している。
第2章:モデルベースシステムズエンジニアリング
MBSEとその発展、そして実際にモデル化するとはどういうことかを紹介する。2つの言語が区別される。モデルの「話し言葉」としてのSysMLと、モデルの用語の意味を定めるドメイン固有の言語としてのオントロジーである。
第3章:システムとインタフェース
第II部「システムズエンジニアリングの概念」は、システムの定義とシステム間のインタフェースの記述から始まり、最初の「Defining the Framework」の節で終わる。
第4章:ライフサイクル
ライフサイクルとライフサイクルモデル、すなわちシステムが経る段階と、それらの段階の配置の仕方を紹介する。
第5章:システムズエンジニアリングのプロセス
プロセスの基礎と概念、プロセスのモデル化、そして組織が規格への適合を示せるよう、プロセスモデルを使って規格を表現することを扱う。
第6章:ニーズと要求
第III部「システムズエンジニアリングの技法」は、ニーズと要求、それをさまざまなSysMLの図でどう可視化するか、そしてそれらがライフサイクルとプロセスのどこに位置するかから始まる。
第7章:設計のモデル化
設計とアーキテクチャ設計を定義し、設計のモデル化をベストプラクティスのプロセスと関連づける。
第8章:検証と妥当性確認のモデル化
テストの概念を定義し、検証と妥当性確認のためのモデルのビューの作り方を示す。ここでもベストプラクティスのプロセスと結びつけている。
第9章:方法論
方法論一般と、特にSAFeとOOSEMの2つを紹介し、方法論とMBSEの関係を論じる。
第10章:システムズエンジニアリングのマネジメント
マネジメントのプロセスを概観する。プロジェクト計画、意思決定管理、プロジェクトの評価と統制、リスク管理、情報管理、構成管理、測定、品質保証である。
第11章:MBSEの導入
第IV部「次の段階」は、組織にMBSEを導入するためのTrinityアプローチを紹介する。MBSEの能力と成熟度の定義、その両方をとらえる技法、そしてMBSE戦略の定義である。
第12章:モデル化の技
MBSEの哲学について述べる。モデルとモデル化という行為の違い、実践的なモデル化の戦略、そしてモデルを信頼に足るものにする方法である。
第13章:ベストプラクティス
主要な規格、主要なガイドライン、システムズエンジニアリングに関わる組織を紹介して締めくくる。
主要概念
第I部(第1〜2章)
- 三つの悪:複雑さ、あいまいなコミュニケーション、理解の欠如。システムズエンジニアリングが取り組む問題である。
- モデルベースシステムズエンジニアリング:別々の文書ではなく一貫したモデルを通じてシステムズエンジニアリングを実践すること。
- SysML:本書全体で使われる汎用の視覚的モデリング言語。
- オントロジー:モデルの要素に一貫した意味を与える、ドメインの概念と関係の定められた集合。
第II部(第3〜5章)
- インタフェース:システムやその要素が相互作用する接続。
- ライフサイクルモデル:システムが経る段階の配置。
- プロセスのモデル化:規格に含まれるものを含め、プロセスをモデルとして表すこと。
- フレームワーク:章ごとに積み上げられ、システムモデルを構造化するビューの集合。
第III部(第6〜10章)
- ニーズと要求:ステークホルダーが必要とするものと、それをシステムに対してどう記述するか。
- アーキテクチャ設計:システムの解決策の上位レベルの構造。
- 検証と妥当性確認:システムが正しく作られているか、そしてそれが正しいシステムであるかを確かめること。
- 方法論:SAFeやOOSEMのような、定められた仕事の進め方。
- マネジメントのプロセス:計画、意思決定、リスク、構成、測定、品質。
第IV部(第11〜13章)
- Trinityアプローチ:能力と成熟度を評価し戦略を定めることでMBSEを導入すること。
- モデルとモデル化:成果物と、それを生み出す活動との区別。
批判的分析
長所
- 本全体を貫く一つのモデル。 第3〜8章はそれぞれ共通のフレームワークを拡張して終わるので、読者はニーズ、設計、検証、プロセスが別々のトピックとしてではなく、一つのモデルの中でどう組み合わさるかを見ることができる。
- 独習向けの作り。 Packtは本書を、説明、実践的な例、自己評価テストに満ちた本と紹介しており、目次からもほぼすべての章の終わりに自己評価課題と参考文献があることが確認できる。
- 表記法を超えた実践的な範囲。 方法論、マネジメントのプロセス、組織へのMBSEの導入、モデル化の技についての章は、図の描き方だけでなく、初心者が職場で出会う疑問に答えている。
- 経験の裏付け。 出版社によれば、この版には著者のシステムズエンジニアリングにおける30年の経験に基づく効果的なアプローチについての節が加わっている。
短所
- 特定のアプローチ。 本書はMBSE、SysML、そしてTrinityのような著者独自のフレームワークを通じてシステムズエンジニアリングを教える。システムのライフサイクルを方法に偏らず広く概観したい読者や、定量的な分析を求める読者には別の本が必要になる。
- 定量的な分析は少ない。 目次には、トレードオフ分析、信頼性、コストのモデル化の章が見当たらない。これらはライフサイクルを軸とするシステムズエンジニアリングの教科書が詳しく扱うトピックである。
- ツールに依存しないが表記は重い。 目次には特定のモデリングツールの名前はない。第II部と第III部についていくにはSysMLの図に習熟する必要があり、ソフトウェアやモデル化の経験がない人にはハードルになりうる。
コースにおける位置づけ
Holtはこのシステムズエンジニアリングのコースへの最もやさしい入口であり、最もモデル化に焦点を当てた本である。Kossiakoffらの Systems Engineering Principles and Practice とBlanchardとFabryckyの Systems Engineering and Analysis はライフサイクルの教科書で、ニーズ分析から開発、生産、運用までシステムを追い、BlanchardとFabryckyは代替案を比較するための定量的な道具を提供する。まずHoltで用語とモデル化の習慣を身につけ、その後でどちらかによってライフサイクル全体の学問としてのシステムズエンジニアリングを学ぶとよい。
BuedeとMillerの The Engineering Design of Systems は、MBSEそのものについての自然な次の一歩で、要求、機能アーキテクチャと物理アーキテクチャ、適格性確認をより深く扱う。Crawley、Cameron、Selvaの System Architecture は、Holtの第7章が導入するアーキテクチャ上の意思決定を大学院レベルで扱う。Dymらの Engineering Design: A Project-Based Introduction はプロジェクトを軸にした設計方法論と問題解決の入門書で、まだ工学設計に触れたことのない学生にはHoltと並行して役立つ。
本書の使い方
本書は、複雑なシステムがどのように仕様化され、設計され、検証され、管理されるのかを理解する必要のある初心者を対象としており、Packtは読者自身のシステムやプロジェクトに現代的なMBSEの技法を適用するための道筋として紹介している。システムズエンジニアリングの正式な予備知識は前提とされないが、工学やソフトウェアのプロジェクトの経験があると例に親しみやすくなる。
実践的な計画:
- 中核: 第1〜8章を順に。第2章は他のすべての章が使うモデル化のアプローチを導入し、第3〜8章はフレームワークを一歩ずつ組み立てていく。
- 組織で働く実務者向け: 方法論、マネジメントのプロセス、MBSEの導入を扱う第9〜11章。
- 振り返りのために: 第12〜13章。ある程度モデル化を実践した後に読むのがよい。
自己評価課題に取り組み、読み進めながら、職場の製品や学生のプロジェクトなど自分のよく知るシステムについてフレームワークのビューを作っていくとよい。オントロジーの用語の用語集を作っておくこと。規格やSysMLについてさらに詳しく知るには、各章の参考文献をたどるとよい。
