01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Howe, R. T., & Sodini, C. G. (1996). Microelectronics: An Integrated Approach. Prentice Hall.
章の要約
Roger T. Howe と Charles G. Sodini による908ページの大部な学部向け教科書で、Prentice Hall の電子・VLSI シリーズの一冊である。出版社は、これを3年次レベルの電子工学・微細電子工学の入門書とし、現代の集積回路技術を背景にデバイス物理と回路設計を提示するものと説明している。目的は統合的な扱いにある。デバイスと回路を別々の科目として扱うのではなく、半導体デバイスの物理的な振る舞いを、回路モデル、解析、設計に結びつける。この科目を学びやすくする方法として挙げられているのは、デバイスと回路の理解に必要な概念に範囲を限った、簡潔で集中した叙述である。
半導体の物理とデバイスの挙動
第一の筋は半導体デバイスの物理である。デバイスがなぜそのように振る舞うのか、その挙動が材料と構造からどう生じるのかを扱う。目標は、読者がデバイスを回路図上の記号として扱う前に、その特性の由来を理解することである。デバイス物理は集積回路技術という背景のなかに置かれる。
デバイスのモデル
第二の筋は、物理的な挙動をモデルに変えることである。本書はデバイスの回路モデルを組み立て、回路理論の道具でその挙動を解析できるようにする。読者は、モデルのつくり方と、モデルがいつよい近似になるかの両方を学ぶ。
アナログ・デジタル回路の概念
そうしたモデルに基づいて、アナログとデジタルの回路の中核的な概念を導入し、デバイスから成る回路を解析する。重点は、デバイスの内部で起きていることと回路の働きを結びつけ、解析が物理的な理解から離れないようにすることにある。
電子回路設計
最後の筋は設計である。デバイス、モデル、解析を用いて、有用な働きをする電子回路をつくる。これは書名の「統合的」に対応しており、設計は物理的なデバイスの理解から導かれるべきものとされる。
主要概念
物理的な挙動とモデル
- 半導体デバイス:電気的な挙動が半導体材料の性質から生じる素子。
- デバイスモデル:デバイスを簡略化した回路表現で、回路内での挙動を予測するために使う。
回路と設計
- アナログ・デジタル回路の解析:デバイスのモデルを用いて、デバイスから成る回路の挙動を求めること。
- 集積回路技術:デバイス物理と回路設計が提示される技術的な背景。
- 統合的アプローチ:物理、モデル、解析、設計を一緒に学ぶべきだという本書の原則。
批判的分析
長所
- 物理と回路の統合。 デバイス物理、モデル、解析、設計を結びつけることが本書の明確な目標であり、回路素子の使い方だけでなく、なぜそのように振る舞うのかを知りたい学生に向く。
- 絞り込まれた範囲。 著者は、デバイスと回路の理解に必要な概念に範囲を限ったと述べている。これは、大きな分野を3年次レベルで扱いやすくするための設計上の選択である。
- 授業の教科書としての実績。 MIT OpenCourseWare の2005年秋学期版の学部科目「微細電子デバイスと回路」(6.012)は本書を必修の教科書としており、授業の読み物は本書から取られている。一学期を支えうることがわかる。
短所
- 古い。 1990年代の刊行であり、デバイス技術や設計の実践はその後進歩しているため、半導体デバイスの近年の発展は反映されていない。
- 難度が高い。 統合的なアプローチは、工学の学位水準の物理と数学に慣れていることを前提とする。本書を用いる MIT の科目は、信号とシステム(同時履修)、電磁気学、微分方程式を前提科目としている。
- 新品の入手が難しい。 1990年代の教科書であるため、図書館や古書で探す必要があるかもしれない。
コースにおける位置づけ
Howe と Sodini の本は、回路・電子工学の書目のなかでも上級の教科書で、すでに回路解析を学んだ学生に向く。Alexander と Sadiku の Fundamentals of Electric Circuits は包括的な回路解析の教科書で、先に読むとよい。Agarwal と Lang の Foundations of Analog and Digital Electronic Circuits は、回路解析からデジタルの抽象化、MOS デバイス、増幅器へと進む統一的な扱いで、橋渡しになる。
Storey の Electronics: A Systems Approach と Scherz・Monk の Practical Electronics for Inventors は、手を動かす入門やシステムの視点からの入門を好む読者に向く、やさしく応用寄りの道筋である。Hayt と Buck の Engineering Electromagnetics は電気工学全般で使われる場の理論を展開し、Patterson の Computer Organization and Design はプロセッサ設計とコンピュータ・アーキテクチャを扱う。微細電子の科目でのデジタル回路の内容は、その方向へつながっている。
本書の使い方
電気工学・計算機工学の2、3年生が、微細電子デバイスと回路の最初の科目として用いるのに向く。基礎的な回路解析、微積分、微分方程式、入門物理が既習であることが望ましい。
読み方の例:
- 授業の構成に従う。 MIT で本書に基づく一学期の科目は、半導体の基礎から始め、p-n 接合と MOS デバイスの挙動、MOSFET とデジタルインバータ、バイポーラトランジスタを経て、アナログ増幅器とその周波数応答へと進んだ。
- 問題を解く。 この科目は問題を解き、モデルを物理から回路へと運ぶことで身につく。受け身に読むのではなく、すべての話題で練習する。
- 回路シミュレータを使う。 MIT の科目には SPICE を必要とする回路設計課題がある。シミュレーションは、デバイスモデルを手計算と照らして確かめる良い方法である。
- 別の教科書と併用する。 MIT のシラバスは、Fonstad の Microelectronic Devices and Circuits、Sedra・Smith の Microelectronic Circuits、Pierret の Semiconductor Device Fundamentals を参考書に挙げており、別の説明が必要なときに役立つ。
- 版と年を確認する。 刊行年は一部の書誌では1996年、図書館や Google ブックスの記録では1997年とされているため、手元の版に従って引用する。
