01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hayt, W. H., & Buck, J. A. (2018). Engineering Electromagnetics (9th ed.). McGraw Hill.
章の要約
本書は14章と6つの付録からなる。章の順序は工学系の電磁場の授業で伝統的なもので、静電界、静磁界、時間変化する場とマクスウェル方程式、そして伝送線路、波動、放射へと進む。出版社は、基本概念と問題解決を重視し、多くの図、類推、例題、演習問題を備えた教科書だと説明している。
第1章:ベクトル解析
冒頭の章は、以後の各章が依拠するベクトルの道具立てを用意する。同じく「ベクトル解析」と題する付録Aが巻末に置かれている。
第2–4章:クーロンの法則と電界の強さ;電束密度、ガウスの法則と発散;エネルギーと電位
3つの章で静電気学を展開する。クーロンの法則と電界から、電束密度、ガウスの法則、発散へ進み、続いてエネルギーと電位を扱う。
第5–6章:導体と誘電体;静電容量
ここで静電界に物質が登場する。導体と誘電体、続いて静電容量である。
第7–8章:定常磁界;磁気力、磁性体とインダクタンス
静電気の流れに対応する磁気の側の展開である。まず定常磁界、次に磁気力、磁性体、インダクタンスを扱う。
第9章:時間変化する場とマクスウェル方程式
時間変化する場から、マクスウェル方程式の全体へ至る。
第10–13章:伝送線路;一様平面波;平面波の反射と分散;導波
本書の順序では、伝送線路が平面波に先行する。一様平面波のあとに反射と分散が続き、さらに導波が扱われる。
第14章:電磁放射とアンテナ
出版社がとくに取り上げる章で、放射の基本原理、線状アンテナ、簡単なアレイ、送受信システムを扱う。
付録
付録は、ベクトル解析、単位、物質定数、一意性定理を扱い、奇数番号の問題の解答を収めている。
主要概念
第1–6章:静電界
- ベクトル解析:本書全体で使うベクトルの道具で、第1章と付録Aに示されている。
- クーロンの法則とガウスの法則:電界と電束密度に至る二つの道筋。
- エネルギーと電位:静電界のスカラーによる記述。
- 導体、誘電体、静電容量:物質が静電界をどう変えるか。
第7–9章:磁界と時間変化する場
- 定常磁界:定常電流がつくる磁界。
- 磁気力、磁性体、インダクタンス:電流に働く力、磁性体、インダクタンス。
- マクスウェル方程式:第9章で導入される時間変化する場の方程式。
第10–14章:線路、波動、放射
- 伝送線路:第10章の主題。
- 一様平面波、反射と分散:第11章と第12章の波の伝搬。
- 導波:第13章。
- 放射とアンテナ:第14章。
批判的分析
長所
- 基本概念が先。 出版社は、本書が基本概念と問題解決を重んじ、分かりやすく読みやすく説明していると述べており、章の並びもそれを反映している。ベクトルの道具、静的な場、時間変化する場と波の順である。
- 独習への配慮。 出版社は、難しい概念を理解しやすくする多数の図と類推、そして多くの例題と演習問題を挙げている。付録Fに奇数番号の問題の解答があるので、教員なしでも自分の解答を確かめられる。
- 場からアンテナまでの通し。 1冊で、ベクトル解析から放射とアンテナまでを扱い、その間に伝送線路と導波がある。
短所
- 波の登場が遅い。 14章のうち10章が一様平面波(第11章)より前にあり、導波とアンテナは最後の2章である。1学期の授業では届かない場合があり、波を早く扱いたい授業では先へ飛ばす必要がある。
- 数学から始まる。 第1章と付録Aはベクトル解析に充てられ、静電気学の各章は最初からそれに依拠する。読み始める前にベクトル解析に慣れておく必要がある。
- 解答は奇数番号のみ。 自己採点できるのは問題の半分に限られる。
コースにおける位置づけ
この回路・電子工学コースの書目のなかで、電磁界そのものを扱うのは本書だけで、ほかは回路解析、電子デバイス、デジタルハードウェアに重点を置いている。回路解析にはStoreyの Electronics: A Systems Approach と Fundamentals of Electric Circuits が先に来て、AgarwalとLangの Foundations of Analog and Digital Electronic Circuits と Microelectronics: An Integrated Approach が回路と半導体デバイスを展開する。HaytとBuckはそれらにない電磁気学の基礎を与え、伝送線路の章は回路理論から波動への自然な橋渡しになる。Practical Electronics for Inventors は実践的な併読書、Computer Organization and Design はコースのデジタルハードウェア側に属する。
本書の使い方
電磁気学を含む微積分ベースの物理を修め、多変数微積分、ベクトル解析、基本的な微分方程式に通じている学生に向く。少なくとも第9章までは、各章が前の章に依拠するので順に読む。第1〜4章が静電気学の核心で、第5・6章と第7・8章は、静的な理論をそれぞれ物質と磁気へ広げる。
回路の科目を並行して履修している学生は、伝送線路の第10章を早めに読むとよい。第12〜14章は授業に合わせて選べる。波の挙動なら反射と分散、導波管なら導波、通信ならば放射とアンテナである。まず奇数番号の問題を解き、付録Fで確かめる。付録B(単位)と付録C(物質定数)は手元の参照表として使い、静電気学の章に入る前に、第1章と付録Aをベクトル解析の復習に使うとよい。
