01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Meyers, M. A., & Chawla, K. K. (2025). Mechanical Behavior of Materials (3rd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
本書は約960ページ、16章からなる。第3版の序文によれば、根本的なテーマは、さまざまな環境条件のもとで異なる材料の力学的性質を生み出す機構であり、金属、高分子、セラミックス、複合材料、生体材料、電子材料に対して統一的に示される。根底にあるのは、マイクロまたはナノメートルスケールの構造が性質を支配するという考え方である。著者らは、本書が主に機械工学および材料科学・工学の上級および大学院の科目向けであり、数学はごく簡単に保たれ、第1章が必要な材料の背景を与えると述べている。また、実務の技術者や研究者のための参考書でもあり、1学期の科目で扱える以上の内容を含むとしている。
第1章:材料:構造、性質、性能
本書のテーマへの導入である。単一材料、複合材料、階層構造材料と、結晶、金属、セラミックス、ガラス、高分子、液晶、生体材料とバイオマテリアル、多孔質・セル状材料、能動材料、電子材料、ナノテクノロジーの構造を扱い、実在材料の強度で終わる。著者らは、この章を参照用の章として、また自習用の資料として使うよう勧めている。
第2章:弾性と粘弾性
応力とひずみ、ひずみエネルギー、ポアソン比、複雑な応力状態とモールの円、テンソル形式での異方性の剛性とコンプライアンス、多結晶体の弾性的性質、各種材料や繊維複合材料の弾性的性質、粘弾性、ゴム弾性、生体材料と電子材料の弾性的性質、弾性定数と結合の関係。
第3章:塑性
引張と圧縮での塑性変形、バウシンガー効果、高分子とガラスの塑性変形、流動・降伏・破壊の基準(トレスカとフォン・ミーゼスを含む)、硬さとナノインデンテーションを含む押込み試験、成形性、座屈、筋力、いくつかの生体材料の力学的性質。
第4–5章:欠陥:点欠陥と線欠陥;欠陥:界面欠陥と体積欠陥
第4章は理論せん断強度から始め、点欠陥と線欠陥を詳しく扱う。転位の挙動、応力場、エネルギー、発生源、相互作用、パイエルス・ナバロ応力などである。第5章は結晶粒界、双晶、結晶粒微細化強化(ホール・ペッチ則やその他の理論)、ナノ結晶材料、体積欠陥、高分子の欠陥、マイクロピラー圧縮試験を扱う。
第6章:変形の幾何学と加工硬化
すべりの幾何学、ステレオ投影、すべりに必要な応力、多結晶体の加工硬化とテイラー、ゼーガー、クールマン・ヴィルスドルフの理論、軟化機構、集合組織強化。
第7–9章:破壊:巨視的側面;破壊:微視的側面;破壊試験
第7章は理論引張強度、応力集中、グリフィスの基準、線形破壊力学、破壊靱性のパラメータ(き裂進展力、き裂開口変位、J積分、R曲線)、破壊強度の統計解析を扱う。第8章は金属、セラミックス、高分子、生体材料の破壊機構と破壊機構図を扱う。第9章は衝撃試験、破壊靱性試験、曲げ試験などの破壊試験を述べる。
第10–12章:固溶、析出、分散強化;マルテンサイト変態;特殊材料:金属間化合物とフォーム
微細合金鋼や先進鋼の析出硬化を含む合金の強化機構。マルテンサイトの構造、強度、形状記憶効果。規則化した金属間化合物とセル状材料。
第13–14章:クリープと超塑性;疲労
拡散クリープ、べき乗則クリープ、変形機構図、クリープ破壊、超塑性を含む時間依存変形。S–N曲線と累積損傷から、き裂の発生と伝播、疲労に適用した破壊力学、疲労試験までの疲労。
第15–16章:複合材料;環境の影響
複合材料の種類、界面、性質、荷重伝達、破壊、応用。金属、高分子、セラミックスに対する腐食、酸化、環境助長割れ、水素損傷などの環境の影響。
主要概念
第1–3章:構造、弾性、塑性
- 階層構造:ナノからマクロまでの構造が性質を支配するしくみ。
- 異方性弾性:剛性が方向に依存する材料に対する、テンソル形式のフックの法則。
- 降伏基準:トレスカとフォン・ミーゼス、および脆性材料と複合材料の基準。
第4–6章:欠陥と変形機構
- 転位:その運動が塑性変形を生む線欠陥。
- 結晶粒微細化強化:ホール・ペッチの関係とその他の理論。
- 加工硬化:変形中の強化。第6章に挙げられた理論を伴う。
第7–9章:破壊
- グリフィスの基準と線形破壊力学:き裂の成長のエネルギーと応力拡大係数による記述。
- 破壊靱性:その測定と、材料の性質としての利用。
第10–16章:強化、時間依存性、環境
- 析出硬化と分散硬化:微細な第二相粒子による合金の強化。
- クリープと疲労:持続荷重または繰返し荷重のもとでの破壊。
- 複合材料の荷重伝達:母材と繊維が荷重を分担するしくみ。
- 環境助長破壊:応力腐食割れと水素損傷。
批判的分析
長所
- 材料の種類を横断する、機構に基づく単一の枠組み。 著者らは、金属、セラミックス、高分子、複合材料、生体材料、電子材料を、材料別の章に分けるのではなく、微視的・ナノ構造が性質を支配するというテーマで結んで一緒に示す。
- モデルの前に機構。 欠陥と変形を扱う第4–6章、強化、クリープ、疲労を扱う第10–14章は、転位、結晶粒界、微細組織から性質を説明する。
- 理論と並ぶ試験方法。 第9章は破壊試験にあてられ、第3、5、14章は硬さとナノインデンテーション、マイクロピラー圧縮、疲労試験を扱う。
- 各章末の演習と推薦文献。 すべての章に推薦文献と演習があり、著者らは第3版で例題と演習が新しくなったと述べている。
- 第3版での更新。 序文は、生体材料、アルツ七面体、ハイエントロピー合金、マイクロピラー試験、EBSDと一致格子点、生体材料の破壊靱性についての新しい内容を挙げている。
短所
- 1学期には多すぎる。 著者らは、本書が通常の1学期の科目で扱える以上の内容を含むことを認めており、教員は選択しなければならない。
- ある程度の予備知識を前提とする。 著者らは数学をごく簡単だと述べているが、本書は上級の読者を対象とし、第1章が材料レベルの背景を与えるよう意図されている。第2章の異方性弾性のテンソルによる扱いと第7章の破壊力学は、基本的な材料力学を超えている。材料に不慣れな読者は第1章に大きく頼ることになる。
- 材料の種類を横断する構成は、一つの材料を分散させる。 章が材料別ではなく現象別に組まれているため、金属だけ、高分子だけを学ぶ場合でも、多くの章を渡り歩くことになる。
コースにおける位置づけ
この材料科学コースの中で、MeyersとChawlaは力学的挙動に特化した教科書である。Ashby、Shercliff、Cebonの設計主導の入門書と、CallisterとRethwischの Materials Science and Engineering: An Introduction は、構造、プロセス、性質を結びつける最初の科目向けの教科書で、Callisterは原子の結合、結晶構造、力学的挙動にも至る。Hallの Materials: A Very Short Introduction は、身近な例を使った短い入門である。いずれも第1章の背景となる。
Porter、Easterling、Sherifの Phase Transformations in Metals and Alloys は、熱力学、拡散、界面がどのように形成される微細組織を支配するかを述べる上級の教科書である。MeyersとChawlaの強化とマルテンサイトに関する第10章と第11章を補う。Porterは微細組織がどのように形成されるかを、MeyersとChawlaはその微細組織が強度と破壊をどう決めるかを説明する。
本書の使い方
材料の最初の科目と基礎的な材料力学を学んだ、機械工学・材料科学の上級学部生と大学院生に適する。第1章が必要な構造の背景を与え、参照用に使える。
1学期の科目の実践的な進め方:
- 中核: 第2・3章(弾性と塑性)、第4・6章(転位と加工硬化)、第7・8章(破壊)、第14章(疲労)。
- 次に: 結晶粒界と強化の第5章、合金の強化の第10章、クリープの第13章。
- 重点に応じて: 複合材料は第15章、環境の影響は第16章、マルテンサイト、金属間化合物、フォームは第11・12章、試験実習は第9章。
各章末の演習で理解を確かめ、推薦文献で本文を超えて学ぶこと。後の章で知らない構造の用語が出たら、参照用の第1章に戻るとよい。
