01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hall, C. (2014). Materials: A Very Short Introduction. Oxford University Press.
章の要約
本書はオックスフォード大学出版局の「Very Short Introductions」シリーズの一冊で、各15〜20ページほどの6章(本文約120ページ)に、参考文献案内と索引が続く小型本である。エディンバラ大学で最初の材料学教授となったクリストファー・ホールは、従来の教科書の順序ではなく、いくつかの印象的なイメージを軸に本書を組み立てている。章題は内容を直接説明するものではなく、暗示的である。
第1章:金、砂、糸
本書は、あらゆる材料の源としての周期表から始まり、三つの身近な物質を三つの大きな資源の族の代表とする。金は金属、砂は無機材料、糸は有機材料である。その途中で、金・銀・鉄・銅の原子構造と、それらからつくられる合金(青銅、黄銅、鋼)、ガラスとセメントのもとになる鉱物としての石英と方解石、そして綿・木材・紙の中心にある鎖状高分子のセルロースを説明する。
第2章:詳しく調べる
内部構造の理解こそが材料科学の核心であり、それなしには材料のふるまいを説明することも改善することもできない、と論じる章である。その理解がどのように得られてきたかを、フックとレーウェンフックの顕微鏡から、X線回折と原子分解能の電子顕微鏡までたどり、最後に二次元のグラフェンと一次元のカーボンナノチューブを取り上げる。
第3章:強靭だが滑りやすい
物理的特性の章で、密度(航空宇宙技術者と油井掘削技術者の対照的な要求を例に)、熱膨張率、比熱、熱伝導率を扱う。続いて力学的特性(剛性、強度、硬さ、脆さ、靭性)に移り、降伏と塑性を金属の最も重要な特性として取り上げ、さらに高分子鎖の弾性と流体の粘性も扱う。
第4章:エレクトリック・ブルー
電気的・光学的なふるまい、つまり材料がなぜ電気を通したり妨げたりするのか、なぜ透明・不透明・光沢のある・色のついたものになるのかを扱う。ファラデー、ジーメンス、ヘルツ、エジソンから始め、固体中の電子の量子論が伝導を説明し、半導体技術を支えていることを示す。さらに超伝導体、磁性、多くのスケールにわたる「仮想材料」のコンピュータモデルも扱う。
第5章:材料をつくり、ものをつくる
加工の章。ガラス、シリコン、ニッケル基超合金、繊維と織物、プラスチックが段階を追ってどうつくられ、それらがほかの製品の製造にどう使われるかを扱う。陶器、れんが、タイルは対照的な例で、材料と製品が一度の焼成でつくられる。章の最後では分野の将来を展望する。
第6章:これほどの量の砂
最終章は持続可能性を扱う。世界の材料システムにおける三つの問題(二酸化炭素の排出、エネルギー供給、有限な資源)を挙げ、材料の流れの規模の大きさを示したうえで、修理・再使用・リサイクルによる循環経済と、材料が経済を通過する速度を下げることを主張する。
主要概念
第1〜2章:資源と構造
- 金属、無機材料、有機材料:金、砂、糸が代表する三つの資源の族。
- 合金:青銅、黄銅、鋼のように、成分単独にはない特性をもつ金属の混合物。
- 内部構造:ふるまいを決める原子と結晶の配列。よりよい材料をつくるにはこれを設計し直す必要がある。
- 回折と顕微鏡法:原子スケールの構造を見えるようにした実験手法。
第3〜4章:特性
- 剛性、強度、靭性:それぞれ荷重に対する異なる応答を表す、別々の力学的特性。
- 降伏と塑性:弾性域を超えた永久変形。本書は金属の最も価値ある力学的ふるまいとして扱う。
- 固体中の電子:ある材料は電気を通し、ある材料は絶縁し、ある材料は半導体になる理由を説明する量子論的な説明。
第5〜6章:製造と持続可能性
- 加工:原料を工学材料に、さらに製品に変える一連の工程。
- 材料の流れ:世界で採取され、使われ、捨てられる材料の量。
- 循環経済:採取・製造・使用・廃棄の代わりに、修理・再使用・リサイクルによって輪を閉じること。
批判的分析
長所
- 短い本で分野全体の地図を示す。 6章で、原子と資源から構造、特性、加工を経て、世界規模の材料利用までを扱う。持続可能性と資源の流れは付け足しではなく最終章全体を占めており、オックスフォードの紹介文もこの点を強調している。
- 具体的な手がかり。 抽象的な分類が手に取れる例によって支えられている。材料の族には金・砂・糸、密度には掘削泥水に使う重晶石、加工にはガラス・シリコン・超合金・陶器である。初学者はそれぞれの考え方を身近なものに結びつけることができる。
- 歴史の文脈のなかの科学。 構造の章と電気的ふるまいの章は、初期の顕微鏡から回折や量子論まで、考え方がどう発展してきたかを語っており、現代の説明がなぜ信頼されているのかを理解する助けになる。
- 初学者向けに書かれている。 オックスフォードはこのシリーズを、新しい分野にすばやく入りたい読者に向けており、紹介文も本書を授業ではなく、鋼・木材・ゴムから金・シリコン・グラフェンまでをめぐる案内として示している。
短所
- 教科書ではない。 目次は6章から参考文献案内と索引へとそのまま続き、演習問題やデータの付録はない。分野が何を扱うかは説明するが、材料の授業で問われる計算は教えない。
- 意図的に偏った扱い。 各章は約20ページで幅広い話題を扱うため、状態図、疲労、腐食など最初の材料の授業で中心となる話題は、オックスフォードの章の要旨には現れない。本書をシラバスの代わりと考えるべきではない。
- 暗示的な章題。 「エレクトリック・ブルー」や「強靭だが滑りやすい」といった章題は内容をあまり示さないため、特定の話題を調べるより通読に向いている。この点は索引が補ってくれる。
コースにおける位置づけ
材料のコースの書目のなかで、本書は最も短く技術的でない本であり、最初に読むのに自然な一冊である。本格的な教科書を使う授業の前か、授業の最初の数週間に読むのが最も効果的である。アシュビー、シャークリフ、セボンの Introduction to Materials Science and Engineering: A Design-Led Approach は設計が材料に何を求めるかから出発し、キャリスターとレズウィッシュの Materials Science and Engineering: An Introduction は原子間結合と結晶構造から積み上げていく。ホールの各章は両者のどちらにも対応する。第2章は構造の章、第3章は力学的・熱的特性、第4章は電気的・磁気的・光学的特性、第5章は加工、第6章は持続可能性の内容の予習になる。
書目にある専門書、すなわち相変態についてのポーター、イースターリング、シェリフや、力学的ふるまいについてのマイヤーズとチャウラは、本書のはるか先にある。ホールが与えてくれるのは、それらに近づきやすくする語彙と動機だけである。
本書の使い方
本書は、材料学や関連する工学の学位に進むかを考えている高校卒業生、細部に入る前に全体像を知りたい1年生、そして材料科学が何を扱うかを知る必要のある物理・化学・デザイン分野の学生に向いている。初学者向けのシリーズであり、高校の理科の知識があれば十分である。
- 通読する。 本文は約120ページで、2〜3回で読み終えられる。章は互いに積み重なっており、構造(第2章)が特性(第3〜4章)を説明し、加工(第5章)が材料と製品のつくられ方を示す。
- 目的をもって読む。 読みながら、登場する材料とそれが属する族を書き留めるとよい。金属、セラミックスと無機材料、高分子と天然材料について、それぞれひとつの特性を添えた表をつくれば、最初の講義への橋渡しになる。
- 後で読み返す。 最初の授業の終わりに第6章を読み返す価値がある。その間に得た特性と加工の知識を、材料の流れについての議論と結びつけられるからである。
- 参考文献案内を使う。 巻末の一覧は、特定の章についてさらに知りたい読者に次の読み物を示している。
