01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Borgnakke, C., & Sonntag, R. E. (2022). Fundamentals of Thermodynamics (10th ed., international adaptation, SI units). Wiley.
章の要約
出版社の目次によれば、本書は約736ページで13章からなる。各章の末尾には要約と練習問題があり、多くの章に「工学への応用」の節がある。この国際版はSI単位を用い、構成にいくらかの変更が加えられていると説明されている。
第1章:序論と予備事項(Introduction and Preliminaries)
用語の枠組みを整える。熱力学系と検査体積、巨視的見方と微視的見方、性質、状態、過程とサイクル、単位、比体積と密度、圧力、エネルギー、温度、熱力学第0法則を扱い、工学への応用で終わる。
第2章:純物質の性質(Properties of a Pure Substance)
相境界とP-v-T曲面、2相・液体・固体・過熱状態の性質表の使い方、理想気体モデル、圧縮係数、状態方程式を扱う。
第3章:エネルギー式と熱力学第1法則(Energy Equation and First Law of Thermodynamics)
エネルギー式と第1法則を、仕事(移動境界仕事を含む)、熱と伝熱の形態、内部エネルギー、エンタルピー、比熱、理想気体のエネルギー変化とともに導入する。問題の分析と解法の技法を扱う節があり、不均一な状態や非定常の伝熱過程も扱われる。
第4章:検査体積のエネルギー解析(Energy Analysis for a Control Volume)
質量保存とエネルギー式を検査体積に適用する。定常過程、定常装置の例、複数の流れをもつ装置、非定常流れを扱う。
第5〜6章:熱力学第2法則、エントロピー(The Second Law of Thermodynamics; Entropy)
第5章は、熱機関・冷凍機・ヒートポンプ、第2法則、可逆性と不可逆性、カルノーサイクル、熱力学的温度目盛と理想気体温度目盛、クラウジウスの不等式を展開する。第6章は、エントロピーを系の性質として定義し、物質・固体・液体・理想気体のエントロピー変化を求め、可逆ポリトロープ過程、エントロピー生成、エントロピー増大の原理を扱い、エントロピーとカオスについての所見で終わる。
第7〜8章:検査体積のエントロピー解析、エクセルギー(Entropy Analysis for a Control Volume; Exergy)
第7章はエントロピー収支を検査体積に広げ、定常・非定常過程と装置の効率を含める。第8章は、エクセルギー、可逆仕事と不可逆性、エクセルギー収支、第2法則効率を扱う。
第9〜10章:ガス動力・冷凍システム、蒸気動力・冷凍システム(Gas Power and Refrigeration Systems; Vapor Power and Refrigeration Systems)
第9章は空気標準サイクルを扱う。スターリングとエリクソン、オットー、ディーゼル、複合(デュアル)、アトキンソンとミラー、再生器付きブレイトン、ガスタービンの各構成、ジェット推進、空気標準冷凍サイクルである。第10章は、ランキンサイクルとその再熱・再生の形、実際のサイクルと理想サイクルのずれ、熱電併給、蒸気圧縮冷凍とその作動流体、吸収式サイクル、サイクルのエクセルギー解析、複合サイクルシステムを扱う。
第11〜12章:気体混合物、熱力学的関係式(Gas Mixtures; Thermodynamic Relations)
第11章は、理想気体の混合物と気体・蒸気の混合物を扱い、断熱飽和、湿球温度と乾球温度、湿り空気線図を含む。第12章は、クラペイロンの式、マクスウェルの関係式、エンタルピー・内部エネルギー・エントロピーに関する関係式、圧縮率と膨張率、状態方程式と一般化線図、混合物の性質の関係式をまとめている。
第13章:化学反応(Chemical Reactions)
燃料と燃焼、生成エンタルピー、反応系のエネルギー解析、発熱量、断熱火炎温度、第3法則と絶対エントロピー、反応系の第2法則解析、燃料電池を扱う。
主要概念
第1〜4章:基礎、性質、第1法則
- 検査体積:物質が出入りできる空間領域。第1章で導入され、第4章で解析される。
- 圧縮係数:理想気体の挙動からのずれを測る補正。
- エンタルピーと比熱:第1法則の各章で使われる性質と熱容量の概念。
第5〜8章:第2法則、エントロピー、エクセルギー
- カルノーサイクルとクラウジウスの不等式:基準となるサイクルと、エントロピーの展開の出発点となる不等式。
- エントロピー生成:エントロピー収支で不可逆性を測る量。
- エクセルギーと第2法則効率:利用可能な仕事と、それに基づく効率。
第9〜13章:サイクル、混合物、関係式、反応
- 空気標準サイクル:理想化されたガス動力サイクル(オットー、ディーゼル、ブレイトンなど)と冷凍サイクル。
- ランキンサイクル:再熱と再生を伴う基本的な蒸気動力サイクル。
- 湿り空気線図:気体・蒸気の混合物のための線図で、湿球温度・乾球温度と結びつく。
- マクスウェルの関係式:熱力学的性質を結びつける恒等式。
- 断熱火炎温度:熱損失なしに燃焼が起こるときに達する温度。
批判的分析
長所
- 明快で体系的な順序。 目次は、性質から、閉じた系と検査体積に対する第1法則、第2法則、閉じた系と検査体積に対するエントロピー、エクセルギーへと進み、その後に応用の章が来る。検査体積の解析(第4章)が第2法則の前に置かれているので、両方の法則が早い段階で開いた系に適用される。
- エントロピーとエクセルギーに十分な紙幅。 エントロピーは2章(第6章と第7章)を占め、エクセルギーは独立した章をもち、第10章にはサイクルのエクセルギー解析もある。第2法則解析を実用的な道具として学びたい学生に向いている。
- 一貫した教育的構成。 各章は要約と練習問題で終わり、多くの章に「工学への応用」の節があり、第3章には問題の分析と解法の技法の節がある。
- 応用の範囲が広い。 サイクルの章には、アトキンソンサイクルやミラーサイクル、ジェット推進、吸収式冷凍、複合サイクルなどの変形が含まれる。第13章には燃料電池がある。
短所
- 相平衡・化学平衡・圧縮性流れの章がない。 この国際版の13章は化学反応で終わる。平衡や圧縮性流れが必要な読者は、別の本を探す必要がある。
- 改編された版。 出版社は、これをSI単位の国際版で、構成にいくらかの変更を加えたものと説明しているので、章番号や内容の一部が本書の他の版と異なる可能性がある。手元の版でシラバスを確認すること。
- 応用が少数の章に詰め込まれている。 混合物と湿り空気(第11章)、熱力学的関係式(第12章)、反応系(第13章)にはそれぞれ1章しかないため、燃焼や空調に多くの時間を割く科目では補足資料が必要になる。
コースにおける位置づけ
BorgnakkeとSonntagの本は、1年次または2年次の工学熱力学の科目向けの本格的な主教科書である。Çengel、Boles、Kanoğluの Thermodynamics: An Engineering Approach は直接の代替で、第10版は18章からなり、この国際版と違って、化学平衡・相平衡と圧縮性流れの章を含む。同書もエントロピーに2章(EntropyとEntropy Analysis)を充てている。Moran、Shapiro、Boettner、Baileyの Fundamentals of Engineering Thermodynamics は、範囲の近いもう1冊の体系的な主教科書である。TurnsとPauleyの Thermodynamics: Concepts and Applications は、より平易で例題中心の入門書で、第2版は第2法則を2章に分け、混合物、湿り空気、化学平衡、燃焼を加えている。
Peter Atkinsの The Laws of Thermodynamics: A Very Short Introduction は、4つの法則の簡潔な概念的予習になる。このコースの書籍リストにある物理寄りの本のうち、Schroederの An Introduction to Thermal Physics は微視的状態の数え上げによって温度とエントロピーを定義し、BlundellとBlundellの Concepts in Thermal Physics は確率と温度の意味から法則を組み立てる。Bejanの Advanced Engineering Thermodynamics は大学院レベルの続編で、エクセルギーとエントロピー生成を設計の道具として使う。
本書の使い方
本書は、1年次の微積分と入門物理を学び、最初または2番目の熱力学の科目を取っている工学系の学生向けである。第1〜4章は順に読むこと。以降のすべてが性質とエネルギー式に依存するからである。第2章以降は性質表を手元に置いて進める。
- 核心: 第1〜8章がこの分野の中心である。第4章は飛ばさず、第5〜8章には時間をかける。第2法則、エントロピー、エクセルギーを担う章である。
- サイクル: 第9章と第10章は前の章の応用である。科目に合ったガスタービンとランキンの部分を選び、アトキンソン/ミラーサイクルや吸収式冷凍などの変形は任意として扱う。
- 必要に応じて: 湿り空気と空調は第11章、熱力学的関係式は第12章、燃焼と反応系は第13章。
各例題を一歩ずつたどってから、章末の練習問題に取り組む。問題に取りかかる前に、章の要約で復習するとよい。
