01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Turns, S. R., & Pauley, L. L. (2020). Thermodynamics: Concepts and Applications (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
第2版は850ページを超える大判のフルカラー教科書で、13の章の後に九つの付録(歴史年表、蒸気表、空気・理想気体・その他の気体・液体・炭化水素燃料の物性表、湿り空気線図)が続く。初版(2006年)はスティーブン・ターンズが単独で執筆し、この版からローラ・ポーリーが加わった。序文は主な変更点を説明している。熱力学の授業の通常の順序に沿うよう構成を改めたこと、第二法則を二つの章に分けたこと、混合物、湿り空気、燃焼、平衡にそれぞれ独立した章を設けたこと、章末問題を899問から1,363問に増やし、節ごとに分類したことである。各章は学習目標と概観で始まり、まとめ、主要概念と定義のチェックリスト、設問と問題で終わる。蒸気発電所、火花点火機関、ジェットエンジンという三つの応用が、本書全体を貫くテーマとして繰り返し登場する。
第1章:はじめに
熱力学とは何かを、繰り返し登場する三つの応用を通して示す。閉じた系と開いた系(検査体積)、性質、状態、過程、サイクル、平衡と準平衡過程を定義し、次元と単位、問題解決の手順、復習すべき数学を扱う。
第2章:熱力学的性質、性質間の関係、過程
100ページを超える物性の章。状態原理、P–v–T状態方程式とカロリー状態方程式、理想気体とP–v–T空間での過程、非理想気体、液体–蒸気からなる物質と表の使い方、液体と固体の近似を扱う。序文によれば、第二法則に関わる性質は後の章に回されている。
第3章:質量保存
質量保存だけにあてられた章で、一般的な収支原理にもとづき、閉じた系、続いて定常流と非定常流の開いた系に適用し、流量と平均速度も扱う。初版の序文は、この章が通常は流体力学の本にある内容を意図的に含んでいると説明している。
第4章:エネルギーとエネルギー移動
系全体と微視的なレベルでのエネルギーの形態、境界を通しての熱と仕事、符号の約束と単位、そして伝導・対流・放射の速度法則を扱う。これらの法則は後の例題で使われる。
第5章:熱力学第一法則
閉じた系のエネルギー保存(微小変化、状態変化、ある瞬間について)、続いて定常流と非定常流の開いた系のエネルギー保存、そして開いた系への応用。
第6章:熱力学第二法則とその帰結
サイクルにもとづく第二法則への道筋。熱源、熱機関、熱効率と成績係数、可逆性、ケルビン–プランクの表現とその帰結(ケルビンの絶対温度目盛りとカルノー効率)、そして第二法則の別の表現を扱う。
第7章:エントロピーと有効エネルギー
原理を扱う章の中で最も長い。エントロピーは可逆等温伝熱から定義され、ギブズの関係式、理想気体の等エントロピー関係式、T–s線図とh–s線図、閉じた系と開いた系のエントロピー収支、タービン・ポンプ・圧縮機・ノズルの等エントロピー効率へと展開される。章は有効エネルギー(エクセルギー)と、エントロピーの分子論的解釈に関する付録で締めくくられる。序文によれば、この章の初めの節は第6章に依存しないので、授業は第二法則をここから始めることもできる。
第8章:定常流機器の熱流体解析
ノズルとディフューザー、絞り、ポンプ・圧縮機・ファン、タービン、熱交換器を、それぞれ分類し解析する。
第9章:発電、推進、加熱、冷却のためのシステム
第8章の機器を組み合わせたシステム。再熱・過熱・再生を伴うランキンサイクル(および原子力発電所)、ガスタービン機関、コージェネレーションとコンバインドサイクル発電所、ターボジェット機関と推進効率、オットーサイクルとディーゼルサイクル、蒸気圧縮式冷凍機とヒートポンプを扱う。
第10〜11章:理想気体混合物、空気–水蒸気混合物
混合物の組成の表し方と、理想気体混合物の状態・カロリー・第二法則の関係式、ギブズ自由エネルギー。続いて空調と加湿のための空気と水蒸気の混合物、すなわち絶対湿度、相対湿度、露点、断熱飽和、湿球温度と乾球温度、湿り空気線図を扱う。
第12〜13章:反応系、化学平衡と相平衡
原子収支と量論、標準化された性質、定圧燃焼と定容燃焼、発熱量、そしてエンジン燃焼器、ボイラー、発電所全体のエネルギー利用の定常流解析。第13章は第二法則から平衡を導き、一定温度・一定圧力での化学平衡、複数の反応、相平衡を扱う。序文は第10〜13章を、二つ目の授業で扱われそうな話題と位置づけている。
主要概念
第1〜5章:基礎と第一法則
- 閉じた系と開いた系:一定の質量と、境界を通って流れがある検査体積。全体を通じて使われる二つの枠組み。
- 状態原理と状態方程式:少数の性質が残りの性質をどのように決めるか。P–v–T関係とカロリー関係による。
- 一般的な収支原理:質量、エネルギー、のちにはエントロピーに適用される一つの収支の形。
- 開いた系と閉じた系の第一法則:微小変化、状態変化、時間率の形でのエネルギー保存。
第6〜9章:第二法則とその応用
- ケルビン–プランクの表現とカルノー効率:サイクルにもとづく第二法則と、それが熱機関に課す限界。
- エントロピー収支と等エントロピー効率:性質としてのエントロピーと、実際の機器が理想からどれだけ劣るかの尺度。
- 有効エネルギー(エクセルギー):周囲との関係で系から取り出せる最大の有効仕事。
- 動力サイクルと冷凍サイクル:ランキン、ガスタービン、ターボジェット、オットー、ディーゼル、蒸気圧縮の各サイクル。
第10〜13章:混合物と反応
- 湿り空気の熱力学:湿り空気の絶対湿度、相対湿度、露点。
- 量論と発熱量:燃焼の質量収支とエネルギー収支。
- 化学平衡:一定温度・一定圧力のもとで第二法則が定める平衡組成。
批判的分析
長所
- 第二法則への柔軟な入り方。 序文は、第二法則を第6章のサイクルから導入することも、第7章のエントロピーの定義から導入することもでき、第7章の冒頭の節は第6章なしで成り立つように書かれていると説明している。
- 熱流体科学とのつながり。 初版の序文が述べるように、質量保存には独立した章があり、通常は流体力学に任される内容を含む。また伝熱の速度法則が第4章で導入され、例題で再利用される。これは学生が流体力学や伝熱の授業に進む準備になる。
- 構造化された演習。 例題は標準的な問題解決の形式に従い、ほとんどの例題の後にセルフテストがあり、重要な式は強調されている。1,363問の問題は節ごとに整理され、FE試験向けの問題や、ある場合を手計算で解き、同じ問題をソフトウェアで解き直し、さらにパラメータスタディを行うEESやコンピュータの問題もある。
- 実際の物性データ。 学生は印刷された表だけでなく、NISTの物性ソフトウェアやオンラインのNIST WebBookを使うよう勧められている。
短所
- 大部で密度が高い。 850ページを超え、物性だけで100ページ以上あるので、一つの授業で扱える量を超えている。教員も学生も取捨選択が必要になる。
- 後半は二つ目の授業向けの内容。 混合物、湿り空気、燃焼、平衡は収められているが、著者自身がそれらを二つ目の授業に位置づけているので、最初の授業で使うのは第1〜9章だけになる。
- ところどころにアメリカの設定。 本書は一貫してSI単位を使っているが、第1章は応用をアメリカの電力データで示しており、FE試験の問題はアメリカの技術士資格試験を対象としている。
コースにおける位置づけ
Turns と Pauley の本は、熱力学のリストにおける入門的な工学の教科書である。Atkins の The Laws of Thermodynamics: A Very Short Introduction は数学をほとんど使わない短い概念面の伴走書で、第1〜7章の前に、あるいはそれと並行して読めば、物性表や収支式が登場する前に、温度、エネルギー、エントロピーが何を意味するかを理解する助けになる。
リストにある他の主要な工学の教科書、すなわち Çengel、Boles、Kanoglu の Thermodynamics: An Engineering Approach、Borgnakke と Sonntag の Fundamentals of Thermodynamics、Moran、Shapiro、Boettner、Bailey の Fundamentals of Engineering Thermodynamics は同様の範囲を扱い、いずれも授業の教科書になりうる。Turns と Pauley の特色は熱流体科学の枠組みと第二法則への二つの入り方にある。別の教科書を使う学生も、質量保存や定常流機器の章を別の説明として借りることができる。Bejan の Advanced Engineering Thermodynamics は、法則を設計と最適化の道具として捉え直す大学院向けの本で、第7章と第9章の後に続く自然な続編である。
本書の使い方
序文は、熱力学の基本原理に初めて触れる工学部の学部生を対象としている。大学1年の微積分と物理学が自然な前提知識であり、第1章は本文の最後に復習すべき数学的スキルの一覧を置いている。
- 最初の授業の中核: 第1〜9章。第2章は最初は選んで読み、後の章で物性が必要になるたびに戻るとよい。初版の序文は物性の内容を、何度も立ち返るべき資料と説明している。
- 第二法則: 授業が選ぶ道筋に従う。第6章から第7章へ、または第7章から第6章へ。授業でエクセルギーを扱うなら、第7章末の有効エネルギーの節を学ぶ。
- 二つ目の授業や専門科目: 空調・HVACには第10〜11章、燃焼と化学平衡には第12〜13章。
各章の学習目標と主要概念のチェックリストを復習の計画に使い、例題の後のセルフテストを解いてから先へ進み、EESやコンピュータの問題に取り組んで、ソフトウェアの結果を手計算で確かめる練習をするとよい。出版社のコンパニオンサイトの無料資料には、第一法則と理想気体の過程に関する解説動画が含まれている。
