01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Feenstra, R. C. (2015). Advanced International Trade: Theory and Evidence (2nd ed.). Princeton University Press.
章の要約
第2版は12章と二つの付録からなり、参考文献と索引の前までで約430ページ(全体では496ページ)である。出版社は、現在の理論的アプローチと実証的証拠を統合した大学院向けの教科書と説明しており、各章に理論の演習と実証の演習が付く。実証の演習は著者のウェブサイトで提供されている。不均質な企業を伴う独占的競争を扱う新しい章が加わっている。
第1章:序論:2部門モデル
この章は、以降の全体が依拠する二つの主力モデルを復習する。まず2財1要素のリカードモデルから始め、貿易パターンは比較優位で決まり、賃金水準は絶対優位を反映することを示す。次に、規模に関して収穫一定の2財2要素モデルを展開する。GDP関数、均衡条件、要素価格の決定、産品価格の変化の影響(ストルパー=サミュエルソンの定理)、賦存量の変化の影響(「オランダ病」を例としたリプチンスキーの定理)、要素価格均等化、要素集約度の逆転である。付録ではラーナー図を示す。この章は実証的証拠を伴わない唯一の章であると述べて終わり、検証は第2〜4章に委ねる。
第2〜4章:ヘクシャー=オリーンモデル、多数の財と要素、中間財貿易と賃金
第2章は2×2モデルを、国と国の間の貿易のヘクシャー=オリーンモデルへと拡張し、貿易パターンに関する証拠を示す。第3章は多数の財と要素をより詳しく調べ、ストルパー=サミュエルソンとリプチンスキーの結果が一般化できるか、どう推定するかを問う。連続体の財をもつリカードモデルと特殊要素モデルも扱う。第4章は、中間財の貿易を許すモデルで、産品価格と賃金の関係についての証拠を検討する。
第5〜7章:独占的競争とグラビティ方程式(I、II)、貿易の利益と地域協定
第5章と第6章は、規模に関する収穫逓増と不完全競争を導入し、独占的競争を2国間貿易のグラビティ方程式と結びつける。第7章は貿易の利益と地域貿易協定に移る。
第8〜10章:輸入関税とダンピング、輸入割当と輸出補助金、貿易政策の政治経済学
この三つの章は貿易政策、すなわち関税、割当、輸出補助金などの手段と、政策がなぜそのように選ばれるかの政治経済学を扱う。出版社の紹介は、本書がまだ公表されていない重要な結果も示していると付け加えている。
第11〜12章:貿易と内生的成長、多国籍企業と企業組織
第11章は貿易を内生的成長と結びつける。第12章は多国籍企業と、国際貿易における企業組織を扱う。
付録A・B:価格・生産性・交易条件の指数、離散選択モデル
二つの付録は国際貿易研究の方法を説明する。価格、生産性、交易条件の指数と、離散選択モデルである。
主要概念
第1章
- 比較優位と絶対優位:貿易パターンを決めるのは比較優位、賃金水準を決めるのは絶対優位。
- ストルパー=サミュエルソンの定理とリプチンスキーの定理:2×2モデルで、要素価格が産品価格にどう反応し、生産量が賦存量にどう反応するか。
- 要素価格均等化と要素集約度の逆転:貿易が要素価格を均等にする条件と、それを崩す場合。
第2〜7章
- ヘクシャー=オリーンモデル:要素賦存の違いが引き起こす貿易。
- グラビティ方程式:2国間貿易を経済規模と貿易費用の関数とみなし、独占的競争と結びつけたもの。
- 不均質な企業:同じ産業内での企業の生産性の違い。
第8〜12章と付録
- 関税、割当、輸出補助金:貿易政策の手段。
- 貿易政策の政治経済学:関税の選択における利益集団の側面。
- 多国籍企業と企業組織:企業が海外でどこにどのように生産するか。
- 離散選択モデル:貿易研究で使われる計量経済学の道具。
批判的分析
長所
- 理論と証拠の組み合わせ。 出版社は、本書が現在の理論的アプローチと実証的証拠を統合していると述べており、第1章の結論は、この章が実証的証拠を伴わない唯一の章だと述べる。付録B(離散選択モデル)と付録A(指数)は、その研究に使う道具を与える。
- 丁寧な基礎モデル。 第1章は2部門モデルを方程式と図の両方で詳しく扱い、単位費用関数による要素価格の双対的な決定を論じる。2×2モデルは以降の章に不可欠な土台とされる。
- 2種類の演習。 各章に理論と実証の演習があり、実証の演習は著者のウェブサイトにある。
- 幅広さ。 主題はリカードとヘクシャー=オリーンから、不均質な企業、オフショアリング、多国籍企業、内生的成長にまで及ぶ。
短所
- 大学院レベルの前提。 第1章は、リカードモデルの扱いを学部の内容の復習としたうえで、すぐに2×2モデルに進む。大学院のミクロ経済学と微積分が前提とされていることを意味する。
- 貿易のみ。 本書は貿易理論と貿易の証拠についての本で、国際経済学のマクロ・金融の側面は目次にない。
- 一部が古くなっている。 第2版は2015年刊であり、2015年以降の研究は含まれない。
コースにおける位置づけ
このコースの他の書籍の多くは、より広いか、より初歩的である。FeenstraとTaylorの Essentials of International Economics は貿易と国際マクロの両方を扱う1学期の学部向け教科書で、SalvatoreとHepp、KrugmanとObstfeldとMelitzの本も、国際経済学の両面を扱う学部向け教科書である。Rodrikの The Globalization Paradox はグローバル化の経済と政治を扱った読みやすい本である。UribeとSchmitt-Groheの Open Economy Macroeconomics はマクロの側面を扱う大学院向けの教科書である。
Feenstraの本は、この一覧における大学院向けの貿易理論の教科書である。学部の国際経済学と大学院のミクロ経済学の後に読み、授業が開放経済マクロも扱う場合は、UribeとSchmitt-Groheの本と組み合わせる。
本書の使い方
本書は、国際貿易の研究を行う準備をしている大学院生と、貿易モデルとその検証方法の体系的な説明を必要とする経済学者を対象とする。大学院レベルのミクロ経済理論、多変数の微積分、計量経済学の基礎が必要になる。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1〜3章(2部門モデル、ヘクシャー=オリーン、多数の財と要素)と第5〜6章(独占的競争とグラビティ方程式)。
- 次に: 第4章(中間財と賃金)、第7章(貿易の利益)、第12章(多国籍企業と企業)。
- 政策と成長: 授業の必要に応じて、貿易政策の第8〜10章と成長の第11章。
各章末の問題を解き、著者のウェブサイトの実証演習にも取り組み、指数や離散選択モデルが出てきたら付録AとBを参照する。
