01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Rogers, Y., Sharp, H., & Preece, J. (2023). Interaction Design: Beyond Human-Computer Interaction (6th ed.). Wiley.
章の要約
第6版は16の章、エピローグ、50ページを超える参考文献一覧、索引から成り、全体で約720ページである。章は4つのまとまりに分かれる。インタラクションデザインとは何か、どう行うか(第1–3章)、人とその人が使うインターフェース(第4–7章)、データの収集と分析(第8–10章)、デザインと評価のプロセス(第11–16章)である。公開されている第1章からは、全編で用いられる学習の仕組みがわかる。目標の一覧、囲み記事、「ジレンマ」の欄、それぞれにコメントが付いたアクティビティ、動画へのリンク、まとめ、要点、参考文献、そして章末の発展的なアクティビティである。6つの章は研究者や実務家へのインタビューで締めくくられ、補助ウェブサイトには追加の資料がある。
第1章:What Is Interaction Design?(インタラクションデザインとは何か)
よいデザインと悪いデザインを対比し(ごちゃごちゃしたリモコンと、利用者を巻き込んで設計されたTiVoのリモコン)、活動がデジタル化されることで得るものと失うものを比べ、インタラクションデザインとヒューマンコンピュータインタラクションとの関係を定義する。この版で「ユーザー中心」より好んで使われるようになった「人間中心(people-centered)デザイン」を紹介し、続いてアクセシビリティとインクルーシブネス、6つのユーザビリティ目標(有効性、効率性、安全性、有用性、学習しやすさ、記憶しやすさ)、ユーザー体験の目標、ダークパターン、そして可視性、フィードバック、制約、一貫性、アフォーダンスというデザイン原則を取り上げる。最後はハリー・ブリグヌルへのインタビューである。
第2章:The Process of Interaction Design(インタラクションデザインのプロセス)
プロセスとしてのインタラクションデザインに何が含まれるかを述べ、続いて実践上の問題の節を置く。索引によれば、デザイン案の生成と選択がその中に含まれる。
第3章:Conceptualizing Interaction(インタラクションの概念化)
概念モデル、インターフェースメタファー、インタラクションの種類、そしてデザインに影響を与えるパラダイム、ビジョン、理論、モデル、フレームワーク。アルブレヒト・シュミットへのインタビュー付き。
第4章:Cognitive Aspects(認知的側面)
認知とは何か。長い最初の節は、索引によれば注意、知覚、記憶、学習、読むこと、計画を扱う。続いて、人がテクノロジーとどう関わるかを説明するための認知的フレームワークを取り上げる。
第5章:Social Interaction(社会的インタラクション)
社会的であること、対面の会話、遠隔の共同作業とコミュニケーション、コプレゼンス(共在)、ソーシャルゲーム。出版社はこの章を全面的に改訂されたものとし、ハイブリッドワークやオンラインでの仕事に新たな重点を置いたと説明している。
第6章:Emotional Interaction(感情的インタラクション)
感情と行動、表情豊かなインターフェース、アフェクティブコンピューティングと感情AI、説得的テクノロジーと行動変容、擬人化。
第7章:Interfaces(インターフェース)
最も長い章で、インターフェースの種類の概観(主たる節だけで60ページを超える)に続き、ナチュラルユーザーインターフェースと、インターフェースの選び方についての指針を示す。リア・ビュークリーへのインタビュー付き。
第8章:Data Gathering(データ収集)
データ収集を計画する際の6つの主要な問題、データの記録、インタビュー、質問紙、観察、そして実践でこれらの技法を組み合わせる方法。
第9章:Data Analysis, Interpretation, and Presentation(データの分析、解釈、提示)
量的データと質的データ、それぞれの基本的な分析、会話分析などの分析フレームワーク、分析を支援するツール、そして結果の解釈と提示。
第10章:Data at Scale and Ethical Concerns(大規模データと倫理的懸念)
大規模なデータを収集・分析する手法、データの可視化と探索、デザインにおける倫理的な懸念。出版社によれば、この版では人間中心のAIに重点が置かれている。
第11章:Discovering Requirements(要求の発見)
要求とは何か、要求のためのデータ収集、ペルソナとシナリオ、ユースケース。
第12章:Design, Prototyping, and Construction(デザイン、プロトタイピング、構築)
プロトタイピング、概念デザインと具体デザイン、プロトタイプの作成、構築。ジョン・フローリッヒへのインタビュー付き。
第13章:Interaction Design in Practice(実践におけるインタラクションデザイン)
AgileUX、デザインパターン、オープンソースの資源、インタラクションデザインのためのツール。ルシアナ・ザイナへのインタビュー付き。
第14章:Introducing Evaluation(評価入門)
評価のなぜ、何を、どこで、いつ、評価の種類、事例研究とそこから学べること、その他の考慮事項。
第15章:Evaluation Studies: From Controlled to Natural Settings(評価研究:統制された環境から自然な環境まで)
ユーザビリティテスト、実験、イン・ザ・ワイルド研究。ダナ・ボイドへのインタビュー付き。
第16章:Evaluation: Inspections, Analytics, and Models(評価:インスペクション、アナリティクス、モデル)
ヒューリスティック評価とウォークスルー、アナリティクスとA/Bテスト、予測モデル。この後にエピローグが続く。
主要概念
第1–3章:基礎
- インタラクションデザイン:日常生活や仕事の中で人々がコミュニケーションし交流する仕方を支えるインタラクティブな製品を設計すること。本書はこれを学際的なものとして扱う。
- 人間中心(people-centered)デザイン:人々のニーズを中心に設計することを指す、この版で好まれる用語。特定のインターフェースを指す場合には「ユーザー中心」も残される。
- ユーザビリティ目標とユーザー体験の目標:有効性や学習しやすさのような測定可能な性質と、楽しさのような体験的な性質。
- デザイン原則:可視性、フィードバック、制約、一貫性、アフォーダンス。
- 概念モデル:製品がどのように構成され動作するかを、利用者に理解してほしい形で高いレベルで記述したもの。
第4–7章:人とインターフェース
- 認知的フレームワーク:人がテクノロジーを使うときにどう考え行動するかを説明する理論。
- 遠隔の共同作業とコプレゼンス:離れていても一緒に働き、共にいることをテクノロジーがどう支えるか。
- アフェクティブコンピューティングと説得的テクノロジー:人の感情や行動に反応し、あるいはそれを変えようとするシステム。
- インターフェースの種類:設計者が選択できるインターフェース様式の幅。
第8–10章:データ
- データ収集技法:インタビュー、質問紙、観察。
- 量的分析と質的分析:数値による要約と、テーマやパターンの解釈。
- 大規模データと倫理:大規模なデータセット、その可視化、そしてそれが引き起こす倫理的問題。
第11–16章:デザインと評価
- 要求、ペルソナ、シナリオ:製品が何をすべきか、誰のためのものかを捉える方法。
- プロトタイピング:デザインを探り検証するために使う低忠実度・高忠実度のモデル。
- AgileUXとデザインパターン:インタラクションデザインをアジャイル開発に組み込み、実績のある解決策を再利用すること。
- 評価手法:ユーザビリティテスト、実験、フィールド研究、インスペクション、アナリティクス、A/Bテスト、予測モデル。
批判的分析
長所
- 能動的な学習のための構成。 公開されている章からは、密度の高い学習の仕組みがわかる。明示された目標、解説コメント付きのアクティビティ、議論のためのジレンマ、実在の製品を評価する発展的なアクティビティである。学生は読むだけでなく、考え方を適用しながら学ぶ。
- デザインのサイクル全体を扱う。 概念と人間的要因から、データ収集、要求、プロトタイピングを経て、評価に関する3つの章まで進むので、授業は1冊の中でプロジェクトを最初から最後までたどることができる。
- 学際的で新しい。 出版社はデザイン、計算機科学、心理学に基づく基礎を強調しており、第6版ではハイブリッドワークやオンラインでの仕事、アフェクティブコンピューティングと感情AI、人間中心のAI、新しいインターフェースの種類が加わった。研究者や実務家へのインタビューが手法を現場の実践と結びつける。
- 倫理とインクルージョンが組み込まれている。 アクセシビリティとインクルーシブネスは第1章で登場し、ダークパターンは例を挙げて論じられ、第10章は大規模データと倫理的懸念を組にしている。
短所
- 非常に長い。 約720ページ、16の充実した章から成り、一つの授業で扱える量を超えている。第7章だけでも、インターフェースの種類に関する節が60ページを超える。
- 手法は深さより幅。 統計、実験計画、質的分析は、より大きな章の中でそれぞれ1–2節が割かれるにとどまる(たとえば第9章の基本的な量的分析は約10ページ)。本格的な研究を行う学生には専門の研究法の教科書が必要になる。
- 実装についてはほとんど扱わない。 構築は第12章の一節として登場するのみで、本書はインタラクティブな製品の設計と評価を教えるものであり、そのプログラミングを教えるものではない。
コースにおける位置づけ
本書は、コンピュータグラフィックスを中心とするコースの中のヒューマンコンピュータインタラクションの教科書であり、グラフィックスの本とは独立に読める。コース内の他の本は、ユーザー調査、デザインプロセス、評価を扱っていない。ガブリエル・ガンベッタの Computer Graphics from Scratch はレイトレーシングとラスタライズについてのプログラマ向けの短い入門書であり、マーシュナーとシャーリーの Fundamentals of Computer Graphics とエンジェルとシュライナーの Interactive Computer Graphics は学部の標準的なグラフィックスの教科書で、後者は最初からWebGLでのプログラミングを行う。ファー、ヤコブ、ハンフリーズの Physically Based Rendering とアケニン=メラーらの Real-Time Rendering はレンダリングに関する専門書である。
コースのHCI側を学ぶ学生は、本書を全期間を通じた主教科書とするとよい。グラフィックス側の学生にとっては、第1章、第3章、第7章が、自分たちの作るインタラクティブなシステムを人がどう体験するかについての有益な背景となり、第14–16章はそうしたシステムを実際の利用者で試すための手引きとなる。
本書の使い方
本書は、ヒューマンコンピュータインタラクション、インタラクションデザイン、ソフトウェア工学、ウェブデザイン、情報学を学ぶ学部生・大学院生、そしてユーザー体験の仕事に移ろうとしている実務家に向いている。技術的な背景は必要ない。
- 基礎: 第1–3章をアクティビティも含めて通読する。
- 人: 第4–6章は選択的に読んでよい。インターフェース設計の判断に最も重要なのは第4章である。
- インターフェース: 第7章は参照用として扱い、自分のプロジェクトに関係するインターフェースの種類の節を読む。
- 手法の中核: デザインプロジェクトのために第8–9章と第11–12章、続いて第14–15章、専門家レビューやアナリティクスを計画しているなら第16章。
- 授業に応じた選択: データ集約的な仕事やAIに関わる仕事には第10章、アジャイルなチームで働く予定の学生には第13章。
アクティビティはコメントを読む前に自分でやってみて、各章末の発展的なアクティビティは小さな課題として使うとよい。最も効果的な学び方は、実際の人々を相手にした小さなプロジェクトと並行して読むことである。データを集め、ペルソナとシナリオを書き、プロトタイプを作り、評価する。インタビューは手法が研究や産業界でどう使われているかを知るために読み、補助ウェブサイトで追加の資料を参照するとよい。
