01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Pfennig, B. W. (2021). Principles of Inorganic Chemistry (2nd ed.). Wiley.
章の要約
第2版は全13章、約830ページで、そのあとに11の付録と索引が付く。各章末には演習問題と参考文献があり、数学的な導出を求める読者のために「In-Depth」(詳細)の小節に導出が収められている。順序は、原子(物質の構造、原子の構造、元素の周期性)から、結合(序論、幾何構造、対称性と分光学、そして原子価結合理論と分子軌道理論)、固体、反応性(酸塩基と酸化還元)へ進み、最後に配位化学と有機金属化学に至る。出版社は、再設計された本書が第1版を学習と記憶を助けるように再編したものだと述べている。
第1〜3章:物質の構造/原子の構造/元素の周期性
第1章は原子論、原子の構造、周期表、原子核、核反応、放射壊変、元素の起源を扱う。第2章は光と物質の波動性から出発し、箱の中の粒子、シュレーディンガー方程式、水素原子、スピン、トポロジカルな原子を経て、原子の量子論的な像を築く。第3章はそれを多電子原子に適用する。電子配置、遮蔽、イオン化エネルギー、電子親和力、半径、分極率、硬さ、電気陰性度、そして不活性電子対効果や相対論的効果などである。
第4〜5章:化学結合入門/分子の幾何構造
第4章は化学結合を定義し、結合形成の熱力学的な駆動力、ルイス構造、結合長と結合エネルギー、共鳴、電気陰性度、結合の三角形、分子中の原子モデルを扱う。第5章は分子の幾何構造として、X線結晶構造解析、リネットの二重四重項理論、VSEPR 理論、配位子密充填モデル、VSEPR と LCP の比較を扱う。
第6章:対称性と分光学
長い章で、対称要素と対称操作、点群、表現と指標表、直積、大直交定理、IR とラマン分光の選択則、基準振動の対称性、射影演算子法による対称座標の生成を扱う。
第7章:分子の構造と結合
原子価結合理論(混成を含む)、分子軌道理論、そして両者の相補性。対称性の章の次に置かれているため、分子軌道を対称性の観点から論じることができる。
第8章:固体の構造と結合
結晶構造、金属結合、イオン結合、結晶性固体の種類。
第9章:化学構造と反応性
酸塩基化学、酸化還元化学、化学反応性の一般的な見方。
第10〜11章:配位化学/配位化合物の反応
第10章は配位化学の概観、配位化合物の結合モデル、電子分光を扱う。第11章は速度論と反応座標図を導入し、続いて八面体型と平面四角形型の置換反応、電子移動反応を扱う。
第12〜13章:有機金属化学/有機金属化合物の反応
第12章は電子数の数え方と18電子則から有機金属化学に入り、カルボニル、ニトロシル、ヒドリドとジヒドロゲン、ホスフィン、エチレンと関連配位子、シクロペンタジエニル、そしてカルベン、カルビン、カルビド配位子へと進む。第13章は金属上と配位子上での反応、メタセシス、有機金属の触媒サイクル、アイソローバル類似を扱う。
付録
古典的な波動方程式とシュレーディンガー方程式の導出、量子力学の公準、原子および分子の項記号、指標表と直積表、対角化による表現の簡約、相関表、調和振動子モデル、230の空間群。
主要概念
第1〜5章
- 原子構造と周期構造:電子配置と、そこから生じる性質。
- 化学結合のモデル:ルイス構造、VSEPR、配位子密充填モデル、分子中の原子。
第6〜9章
- 点群と指標表:分子の対称性を分類する道具。
- 原子価結合理論と分子軌道理論:分子の結合についての二つの相補的な記述。
- 固体の結合:結晶における金属結合とイオン結合。
- 酸塩基と酸化還元の化学:反応性の主要な枠組み。
第10〜13章
- 配位結合のモデルと電子スペクトル:金属–配位子結合をどう記述し、どう調べるか。
- 置換と電子移動の機構:配位化合物がどう反応するか。
- 18電子則とアイソローバル類似:有機金属化合物を整理する考え方。
批判的分析
長所
- 原理を先にした設計。 出版社は理論的な深みをもつ原理重視のアプローチだと述べており、目次もそれを裏づけている。原子構造と周期性が結合より先に、結合が固体、反応性、配位化学より先に展開される。
- 対称性と群論の深い扱い。 第6章は点群、指標表、大直交定理、対称座標を完全に扱い、後の章で分子軌道とスペクトルに用いられる。
- モデルの比較。 出版社は、化学モデルの長所と短所の比較、および原子価結合理論と分子軌道理論のつながりへの重点が新版で強まったと述べている。目次には「The Complementarity of VBT and MOT」という節と、分子中の原子の扱いがある。
- さまざまな読者への配慮。 例題、難易度の異なる演習、そして「In-Depth」の導出が、数学を求める読者への道筋になっている。
短所
- 記述的な化学は限られる。 目次には元素を族ごとに概観する内容がない。それを求める読者は記述的な教科書と併用することになる。
- 分量と数学的水準。 約830ページ、11の付録に加えて In-Depth の小節での導出があるため、本書は要求が高い。第6〜7章は群論に根気が必要になる。
- 有機金属化学は入門的。 第12〜13章は簡潔な最初の紹介であり、専門書の代わりにはならない。
コースにおける位置づけ
無機化学コースの中で、本書は学部レベルの原理と理論の教科書である。Rayner-Canham と Overton の Descriptive Inorganic Chemistry は、いくつかの原理を述べたあとで元素の化学を族ごとに概観しており、記述的な側面での自然な相棒である。Housecroft の Inorganic Chemistry と、Shriver、Weller、Overton、Armstrong、Rourke の Inorganic Chemistry は、物理無機的な原理と体系的な記述化学を組み合わせた、より幅広い教科書である。出版社は、Pfennig の群論、項記号、多原子分子の分子軌道理論、バンド理論、田辺–菅野図の徹底した扱いを特に挙げている。Scerri の The Periodic Table: A Very Short Introduction は短い入門書である。Crabtree の The Organometallic Chemistry of the Transition Metals は、第12〜13章を大学院レベルへと続ける本である。
本書の使い方
出版社は、本書が大学2年次レベルの学生に適しており、詳細な囲み記事により学部上級生や大学院1年次の学生にも理想的だと述べ、物理化学、材料科学、化学物理の学生にも役立つとしている。出発点は一般化学であり、第2章が光の波動性から必要な量子力学を展開する。
実用的な進め方は次のとおり。
- 中核: 原子、周期性、結合を扱う第1〜5章、そして分子軌道の第7章。
- 群論: 講義で対称性を使うなら、第7章の前に第6章。最初に読むときは In-Depth の小節は飛ばしてよい。
- 反応性と金属: 第9章、続いて配位化学の第10〜11章、有機金属の第12〜13章。
- 任意: 固体の第8章と、参照用の付録(項記号、空間群)。
- 各章末の演習問題を解く。 例題と並行して行うこと。
