01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Atkins, P., Jones, L., Laverman, L., Young, K., & Patterson, J. (2023). Chemical Principles: The Quest for Insight (8th ed.). W. H. Freeman (Macmillan Learning).
章の要約
第8版は1,120ページで、Kelley Young と James Patterson の2人が新たに共著者に加わった。通常の順序で番号が振られた章ではなく、冒頭の「基礎」(Fundamentals)部と10の「フォーカス」(Focus)単位で構成され、各単位は1A、1Bのように文字で番号づけられた短いトピックに分かれる。出版社は、オンラインのみで提供される7つの「主要な技法」(Major Techniques)も挙げている。
基礎:導入とオリエンテーション;トピックA–M
この部分は基礎事項を復習し、各フォーカスが共通の出発点から始められるようにする。物質とエネルギー、元素と原子、化合物、命名法、モルとモル質量、組成の決定、混合物と溶液、化学反応式、沈殿反応、酸と塩基、酸化還元反応、反応の化学量論、限定反応物である。出版社によれば、オンラインの「基礎」診断テストが付属する。
フォーカス1:原子
6つのトピックが、原子構造の証拠から原子を組み立てる。原子の探究、量子論、波動関数とエネルギー準位、水素原子、多電子原子、周期性である。
フォーカス2:原子間の結合
7つのトピックで、イオン結合、共有結合、オクテット則を超えて、結合の性質、VSEPRモデル、原子価結合法、分子軌道法を扱う。
フォーカス3:物質の状態
7つのトピックで、気体の性質、気体の法則の応用、混合物や反応中の気体、分子間力、実在気体、液体、固体を扱う。
フォーカス4:熱力学
10のトピックが、内部エネルギー、仕事と熱、エンタルピーと熱化学から、エンタルピーへの寄与を経て、エントロピー(分子論的解釈、絶対エントロピー、全体のエントロピー変化を含む)とギブズエネルギーに至る。
フォーカス5:平衡
9つのトピックで、蒸気圧、1成分系・2成分系の相平衡、溶解度、束一的性質、化学平衡、平衡定数の別の形、平衡の計算、条件変化に対する平衡の応答を扱う。
フォーカス6:反応
最大の単位で、15のトピックがある。前半は酸と塩基で、その本質、自己プロトリシスとpH、弱酸と弱塩基、水溶液のpH、多塩基酸、非常に希薄な溶液、緩衝液と滴定が続き、そのあとに溶解平衡と沈殿が来る。残りは電気化学で、酸化還元反応の表し方、ガルバニ電池、標準電位、電極電位の応用、電気分解を扱う。
フォーカス7:反応速度論
5つのトピックで、反応速度、積分形速度式、反応機構、反応のモデル、触媒作用を扱う。
フォーカス8:材料
13のトピックが記述的な無機化学を概観する。周期的傾向、水素、アルカリ金属とアルカリ土類金属、第13〜18族(ホウ素族、炭素族、窒素族、酸素族、ハロゲン、貴ガス)、d ブロック元素の概観、配位化合物、d 金属錯体の電子構造である。出版社によれば、第8版は従来の2つのフォーカスをこの単位に統合し、無機材料や新技術のための材料に関するトピックも取り込んだ。
核化学と有機化学
最後の2つの単位は最も小さい。核化学には核崩壊、放射能、核エネルギーの3トピックがある。有機化学には、脂肪族炭化水素の構造、脂肪族炭化水素の反応、芳香族化合物、代表的な官能基、高分子と生体高分子の5トピックがある。
主要な技法(オンラインのみ)
7つが挙げられている。赤外・マイクロ波分光法、紫外・可視分光法、X線回折、クロマトグラフィー、質量分析、核磁気共鳴、計算である。
主要概念
基礎とフォーカス1–3
- 原子の量子論的記述:波動関数とエネルギー準位が、水素原子、多電子原子、周期性の扱いを支える。
- 結合のモデル:イオン結合と共有結合、VSEPRモデル、原子価結合法、分子軌道法。
- 物質の状態:気体とその法則、分子間力、液体と固体。
フォーカス4–7
- エントロピーとギブズエネルギー:エントロピーの分子論的解釈と、自発変化の基準。
- 化学平衡:平衡定数と、平衡が条件の変化にどう応答するか。
- 電池と標準電位:電池反応、標準電位とその応用。
- 速度式と反応機構:積分形速度式、反応機構、触媒作用。
フォーカス8以降
- 周期的傾向と族ごとの化学:元素の体系的な記述。
- 配位化合物:錯体と d 金属錯体の電子構造。
- 核崩壊と有機化合物の構造:放射能、炭化水素、官能基、高分子。
批判的分析
長所
- 原理を先に置いた順序。 原子と結合が熱力学、平衡、反応、反応速度論より先に来て、記述的化学がそのあとに続くため、後のトピックは先に作ったモデルに頼ることができる。
- 多様な出発点への配慮。 診断テストのついた「基礎」部により、読者はフォーカスに入る前に基本を確認し補うことができる。
- 学習資源。 出版社は、奇数番号の演習問題と「基礎」の演習問題の解答を詳しく載せた学生用解答集、各フォーカスの授業内ワークシート、法医学、グリーン・環境化学、天文学、技術、生物・医学、工学との関連を示すアプリケーションアイコンを挙げている。オンラインシステムの Achieve は、ヒントとフィードバック付きの宿題問題を提供する。
- 短いトピック。 文字で番号づけられた約90のトピックにより、教員や読者が内容を選んだり順序を入れ替えたりしやすい。
短所
- 分量。 1,120ページと大部であり、短いトピックの構成のため、何を飛ばすかは読者が決めなければならない。
- 技法はオンラインのみ。 NMR、質量分析、X線回折を含む7つの主要な技法は、印刷された本には含まれない。
- 有機化学と核化学は後ろにあり、簡潔。 有機化学は終盤の5トピックで炭化水素、官能基、高分子を扱う。トピック一覧には反応機構を独立して扱う項目がなく、有機化学には別の教科書が必要である。
コースにおける位置づけ
一般化学のコースでは、本書は規則の背後にある理由を知りたい読者を対象としている。『Chemistry 2e』は自習に向く無料のオープンライセンスの2学期用教科書、『Chemistry: The Central Science』は明快な説明と豊富な演習問題を軸とする2学期用教科書、Petrucci らの『General Chemistry』は問題解決と応用を重視する。いずれも最初の1冊として使える。より原理志向の順序を望むなら Atkins を選ぶ。
Keeler と Wothers の『Chemical Structure and Reactivity』は別の道をとる。有機・無機・物理という通常の区分を取り払い、分子軌道論、熱力学、反応速度論を土台に、有機化合物と無機化合物の両方を説明する。Atkins の結合・熱力学・反応速度論の部分を終え、それらを化学全体に適用したい読者にとって、2冊目として適している。
本書の使い方
本書は、より深い内容を求める1年次の化学コースの学生や、一般化学を修了して物理化学の前に原理に基づく扱いを求める読者に向く。まず「基礎」の診断テストを受け、不足が見つかれば、先に進む前に該当するトピックAからMを学ぶ。
実践的な進め方は次のとおり。
- 核: フォーカス1〜7を順に読む。フォーカス1と2(原子と結合)はフォーカス4と5に直結し、フォーカス7の反応速度論は平衡の直後に読める。
- 選択的に: 気体の法則に重点を置く授業ではフォーカス3(物質の状態)を早めに読める。フォーカス6の電気化学のトピックはフォーカス4の熱力学と組み合わせるとよい。
- 参照と概観: 時間やシラバスに応じて、フォーカス8(材料)、核化学、有機化学。
- 技法: オンラインの主要な技法は、実験の補助資料として使う。
各トピックのあとに演習問題を解き、学生用解答集の奇数番号の解答で、答えだけでなく方法も確かめる。
