01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Flowers, P., Theopold, K., Langley, R., & Robinson, W. R. (2019). Chemistry 2e (2nd ed.). OpenStax. Free official edition: https://openstax.org/details/books/chemistry-2e
章の要約
Chemistry 2e は、2学期制の一般化学コース向けに OpenStax が刊行した教科書で、PDF で約1,200ページ、全21章に13のデータ付録(A〜M)と解答集が付く。各章の構成は共通しており、短い導入の場面設定、学習目標から始まる番号付きの節、「Check Your Learning」の問題が続く例題(Example)があり、章末に重要用語、重要な式、節ごとの要約、演習問題が置かれる。
第1章:基本となる考え方(Essential Ideas)
化学の対象と方法、物質の分類と性質を扱ったのち、測定に進む。SI単位、不確かさと有効数字、正確さと精密さ、単位換算のための次元解析(ファクター・ラベル法)を学ぶ。
第2〜4章:原子・分子・イオン/物質と溶液の組成/化学反応の量論
第2章はドルトンからラザフォード、チャドウィックに至る原子論の発展をたどり、同位体、化学式、周期表の最初の紹介、イオン性化合物と分子性化合物、命名法を扱う。第3章はモル、実験式と分子式、モル濃度とその他の濃度単位を導入する。第4章は化学反応式の釣り合わせ、沈殿・酸塩基・酸化還元への反応の分類を扱い、量論を限定反応物、収率、滴定、重量分析に応用する。
第5章:熱化学
エネルギー、熱と仕事、比熱と熱量測定を扱い、続いてエンタルピー、すなわち標準生成エンタルピーとヘスの法則に進む。エントロピーと自由エネルギーを含むより本格的な熱力学は第16章に回される。
第6〜8章:電子構造と元素の周期的性質/化学結合と分子の形/共有結合の発展的理論
第6章は電磁放射、黒体放射、光電効果からボーアモデル、シュレーディンガー方程式と量子数、電子配置、周期的傾向へと進む。第7章はイオン結合と共有結合、電気陰性度、ルイス構造、形式電荷と共鳴、結合の強さ(ボルン・ハーバーサイクルを含む)、VSEPR による分子の形と極性を扱う。第8章は原子価結合理論、混成軌道、多重結合、分子軌道理論を加え、分子軌道理論を用いて酸素が常磁性を示す理由を説明する。
第9〜11章:気体/液体と固体/溶液とコロイド
物質の状態を扱う3章である。第9章は気体の圧力、気体の法則と理想気体の状態方程式、気体の量論と分圧、噴散と拡散、気体分子運動論、非理想的なふるまいを扱う。第10章は分子間力、液体の性質、相転移、状態図、単位格子と X 線回折を含む結晶性固体を扱う。第11章は溶解、電解質、溶解度、束一的性質、コロイドを扱う。
第12章:反応速度論
反応速度とそれを左右する要因、実験で決まる速度式、積分形速度式と半減期、衝突理論とアレニウスの式、反応機構と触媒作用を扱う。
第13〜15章:平衡の基本概念/酸塩基平衡/その他の反応の平衡
第13章は反応商と平衡定数を定義し、ル・シャトリエの原理を適用し、計算のための ICE 表の方法を整える。第14章はその上にブレンステッド・ローリーの酸塩基化学を築く。pH と pOH、酸と塩基の相対的な強さと電離定数、塩の加水分解、多塩基酸、緩衝液、滴定曲線を扱う。第15章は平衡の考え方を溶解度積、錯イオンの生成定数を含むルイス酸・塩基、連成平衡へと広げる。
第16〜17章:熱力学/電気化学
第16章は自発性、エントロピー(微視的状態の数として、また可逆的な熱として)、第二法則と第三法則、ギブズ自由エネルギーを導入し、自由エネルギーを平衡定数と結びつける。第17章は酸化還元化学を復習したのち、ガルバニ電池、標準電極電位、電池電位・自由エネルギー・平衡の関係、ネルンストの式、電池と燃料電池、腐食、電気分解を扱う。
第18〜19章:典型金属・半金属・非金属/遷移金属と配位化学
記述化学の章である。12節からなる第18章は、典型元素の周期性を概観したのち、水素から貴ガスまで、典型金属、半金属、非金属の産出、製法、化合物を扱う。第19章は遷移金属、配位化合物(配位子、キレート、異性)と、結晶場理論によるその分光学的・磁気的性質を扱う。
第20〜21章:有機化学/核化学
第20章は1章だけで有機化合物を概観する章で、炭化水素、アルコールとエーテル、カルボニル化合物、アミンとアミドを扱う。第21章は原子核の安定性と結合エネルギー、核反応式、放射性崩壊と半減期、核分裂と核融合、放射性同位体の利用、放射線の生物学的影響を扱う。
主要概念
第1〜5章:基礎、量論、熱化学
- モルとモル質量:グラム単位の質量と原子・分子の数とを結びつける単位。
- 限定反応物と収率:最初に使い尽くされる反応物が理論収量を決め、実際の収量はそれと比べて評価される。
- ヘスの法則:エンタルピー変化は経路によらず足し合わせられるため、反応エンタルピーを生成エンタルピーの表から計算できる。
第6〜8章:原子と結合
- 量子数と電子配置:原子内の電子の記述であり、原子の大きさ、イオン化エネルギー、電子親和力の周期的傾向を説明する。
- VSEPR 理論:中心原子の周りにある電子密度の領域の数から分子の形を予測する方法。
- 分子軌道理論:原子軌道の結合性・反結合性の組み合わせであり、結合次数と磁性の説明に用いられる。
第9〜12章:物質の状態、溶液、反応速度論
- 理想気体の状態方程式:PV = nRT。ボイル、シャルル、アモントン、アボガドロの各法則はその特別な場合にあたる。
- 分子間力:分散力、双極子–双極子相互作用、水素結合であり、沸点や溶解度を説明する。
- 速度式と活性化エネルギー:実験で決まる、濃度に対する反応速度の依存性と、アレニウスの式で表されるエネルギー障壁。
第13〜17章:平衡、熱力学、電気化学
- 平衡定数とル・シャトリエの原理:平衡混合物の組成と、乱されたときにそれがどちらへ移動するか。
- 緩衝液:弱酸とその共役塩基の混合物で pH の変化に抵抗するもの。ヘンダーソン–ハッセルバルヒの式で扱われる。
- ギブズ自由エネルギー:一定の温度と圧力のもとで、その符号が自発性を決める状態関数であり、K や電池電位と結びついている。
第18〜21章:記述化学、有機化学、核化学
- 結晶場理論:配位子による d 軌道の分裂であり、錯体の色と磁性を説明する。
- 結合エネルギーと半減期:質量欠損によって放出されるエネルギーと、すべての放射性同位体がしたがう一次の崩壊。
批判的分析
長所
- 一貫した例題の設計。 300題近い番号付きの例題が解法を一歩ずつ示し、最後に解答付きの Check Your Learning の問題で締めくくられるので、各技能を教わったその場で練習できる。
- 標準的な範囲を無料で網羅。 目次は測定から核化学まで通常の2学期の流れに沿っており、本書はオンラインでも PDF でも CC BY-NC-SA ライセンスのもと無料で利用できる。序文が述べるとおり、このライセンスにより教員は章を並べ替えたり再編集したりすることもできる。
- 参照データを内蔵。 付録には演習に必要なデータがそろっている。熱力学データ、電離定数、溶解度積、生成定数、標準電極電位、半減期に加え、指数表記、対数、二次方程式の解の公式を扱う「Essential Mathematics」の付録がある。
- 文脈を与えるコラム。 「Chemistry in Everyday Life」44本、「How Sciences Interconnect」19本、「Portrait of a Chemist」10本(ライナス・ポーリングやロザリンド・フランクリンなど)が、中心となる内容の流れを妨げずに文脈を補う。
短所
- 意図的に代数ベース。 微積分が必要になる箇所では結果だけが示される。濃度曲線の傾きは本章の範囲を超えるとされ、積分形速度式は示されない積分の結果として提示される。導出を求める学生には別の種類の教科書が必要である。
- 有機化学は手薄。 有機化学は化合物の種類ごとに構成された4節だけの1章で、置換反応や付加反応も機構ではなく反応の型として紹介される。有機化学の授業への準備ではなく、予告編にとどまる。
- 解答は奇数番号の演習のみ。 解答集が扱うのは奇数番号の章末演習で、偶数番号の解答は教員向けに限られる。
- 一部に古い文脈。 背景となる記述の一部は古いデータに基づいている。たとえば熱化学の章は2012年の米国のエネルギー消費の数値から始まる。
コースにおける位置づけ
このリストの一般化学の本のなかで、Chemistry 2e は標準的な代数ベースの流れに対応する、無料でオープンライセンスの選択肢である。最も近い商業出版の対応物は Brown らの Chemistry: The Central Science と Petrucci らの General Chemistry: Principles and Modern Applications で、いずれも同様の流れを扱う包括的な教科書である。Chemistry 2e はそのどちらの代わりにもなり、どちらかと併用すれば説明と例題を補うこともできる。
リストのほかの2冊は、さらに先を求める学生に向く。Atkins らの Chemical Principles は微積分を用い、物理的な原理から化学を組み立てるので、Chemistry 2e が省いた導出を補ってくれる。Keeler と Wothers の Chemical Structure and Reactivity は有機・無機・物理化学という通常の区分を捨て、軌道理論、熱力学、反応速度論をさらに掘り下げる。化学専攻の学生にとって自然な次の一歩である。
本書の使い方
本書は2学期制の一般化学コースで学ぶ1年生向けに書かれている。実際に必要な予備知識は学校で学ぶ代数、指数、科学的表記で、付録 B がこれらを復習し、第1章が全体を通じて使われる次元解析を教える。
章の順序に沿った典型的な分け方は次のとおりである。
- 前期: 第1〜10章(測定、原子、量論、熱化学、電子構造、結合、気体、液体と固体)。
- 後期: 第11〜17章(溶液、反応速度論、平衡の3章、熱力学、電気化学)。第14章と第15章は第13章の方法を全体にわたって使う。
- 任意または選択的に: 第18〜21章。第18章と第19章は記述的な概観なので選んで読めばよい。第19章は無機化学の授業の前に、第20章は有機化学の前に、第21章はコースが核化学を扱う場合に役立つ。
独学では、Check Your Learning の問題をすべて解き、そのうえで奇数番号の演習を解いて解答集で確かめるとよい。本書は同じ話題に戻ってくるので、第16章の前に第5章を、第17章の前に4.2節を見直すこと。「Link to Learning」は PhET シミュレーションなどの対話型教材を紹介しており、原子の構造、理想気体の法則、物質の状態、反応速度に関するシミュレーションは使う価値がある。章末演習のなかにはこれらを前提に作られたものもある。
版と出典
本ガイドは Chemistry 2e(OpenStax、初版刊行2019年2月、主要寄稿著者は Paul Flowers、Klaus Theopold、Richard Langley、William R. Robinson)を、https://openstax.org/details/books/chemistry-2e から入手できる公式の無料 PDF(現行版、CC BY-NC-SA 4.0)で読んだものに基づく。序文、目次全体と付録一覧、そして全21章について冒頭の導入、すべての節の見出し、節ごとの要約を参照し、一部の節はより詳しく読んでいる。
