01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Levine, D. M., Szabat, K. A., & Stephan, D. F. (2019). Business Statistics: A First Course (8th ed.). Pearson.
章の要約
第8版(著作権表示は2020年)は、導入章「First Things First」、印刷版の番号付き14章、オンラインで提供される品質管理の第15章、付録、自己テスト問題と偶数番号の問題の一部の解答からなり、印刷版は約650ページである。各章は「Using Statistics」というビジネス・シナリオで始まり、章末で再びそのシナリオに戻る。章末にはまとめ、主要な式と用語、「Checking Your Understanding」の問い、章の復習問題、ケースが置かれる。ケースには複数章にわたって続くケース(Managing Ashland MultiComm Services)と、ビジネス文書の中の主張を吟味させる「デジタル・ケース」がある。各章には Excel、JMP、Minitab 用の、一部の章では Tableau 用の個別のソフトウェア・ガイドも付く。分析の手順は DCOVA の枠組み(定義、収集、整理、可視化、分析)に沿って組み立てられる。
First Things First(まず最初に)
統計学がなぜ重要か、ビジネス・アナリティクスと「ビッグデータ」が分野をどう変えつつあるか、そしてソフトウェアをどう使い始めるかを扱う導入章である。序文によれば、この章は無料でオンラインからダウンロードでき、学生はコース開始前に学び始められる。
第1章:Defining and Collecting Data(データの定義と収集)
変数の種類と測定尺度、母集団と標本、データの入手源、主な標本抽出法(単純無作為、系統、層化、集落)、データのクリーニングと前処理、そして調査誤差の種類を扱い、調査における倫理的問題についての節もある。
第2–3章:Organizing and Visualizing Variables(変数の整理と可視化)、Numerical Descriptive Measures(数値による記述統計量)
第2章は、要約表と分割表、度数分布、棒グラフ、円グラフ、パレート図、ドーナツグラフ、ヒストグラムと度数多角形、散布図と時系列プロット、複数の変数の組み合わせの可視化(ツリーマップやスパークラインを含む)、データのフィルタリングと抽出、そして誤解を招くグラフの落とし穴を扱う。第3章は、中心傾向・ばらつき・形状の尺度、四分位数と箱ひげ図、経験則とチェビシェフの定理を含む母集団の尺度、共分散と相関を扱う。
第4–6章:Basic Probability(確率の基礎)、Discrete Probability Distributions(離散確率分布)、The Normal Distribution(正規分布)
確率の概念、条件付き確率、決定木、独立性、ベイズの定理、数え上げの法則(第4章)、期待値と二項分布・ポアソン分布(第5章)、そして正規分布と、正規確率プロットによってデータがほぼ正規分布に従うかを評価する方法(第6章)。
第7–9章:Sampling Distributions(標本分布)、Confidence Interval Estimation(信頼区間推定)、Fundamentals of Hypothesis Testing: One-Sample Tests(仮説検定の基礎――1標本の検定)
中心極限定理を含む平均と比率の標本分布(第7章)、平均と比率の信頼区間と標本サイズの決定(第8章)、そして仮説検定の論理、平均に関する Z 検定と t 検定、片側検定、p 値によるアプローチ、比率に関する Z 検定(第9章)。
第10–11章:Two-Sample Tests and One-Way ANOVA(2標本の検定と一元配置分散分析)、Chi-Square Tests(カイ二乗検定)
二つの独立な平均、対応のある二つの平均、二つの比率、二つの分散の比較と、それに続く一元配置分散分析(第10章)、そして二つ以上の比率の差と独立性に関するカイ二乗検定(第11章)。これらの章以降、結果は表形式のまとめで示され、それぞれの統計的結果がどのようなビジネス上の結論を支えるかが対にして示される。
第12–13章:Simple Linear Regression(単回帰)、Multiple Regression(重回帰)
第12章は、回帰式の導出、変動の尺度、回帰の前提、残差分析、ダービン・ワトソン統計量、傾きと相関についての推測、信頼区間と予測区間、そして落とし穴を扱う。第13章はこれを複数の説明変数に拡張し、自由度調整済み決定係数、全体の F 検定、残差分析、係数についての推測、ダミー変数と交互作用項を扱う。
第14章:Business Analytics(ビジネス・アナリティクス)
この版で新設された章で、記述的アナリティクス(ダッシュボード)、予測・分類・クラスタリング・アソシエーションのための予測的アナリティクス、テキスト・アナリティクス、処方的アナリティクスを、JMP、Minitab、Tableau、Power BI と組み合わせた Excel を使って紹介する。
第15章(オンライン):Statistical Applications in Quality Management(品質管理における統計の応用)
比率、件数、平均と範囲の管理図、工程能力、総合的品質管理(TQM)、シックスシグマを扱う。
主要概念
First Things First と第1–3章:データと記述
- DCOVA の枠組み:変数を定義し(Define)、データを収集し(Collect)、整理し(Organize)、可視化し(Visualize)、分析する(Analyze)という、各分析の骨組みとなる手順。
- 標本抽出法と調査誤差:標本がどのように抽出されるか、そしてカバレッジ誤差、無回答誤差、標本誤差、測定誤差がどのように生じるか。
- 記述統計量:分布の中心、ばらつき、形状を統計量と箱ひげ図で要約したもの。
第4–7章:確率と標本抽出
- 条件付き確率とベイズの定理:情報が得られたときに確率を更新すること。
- 二項分布、ポアソン分布、正規分布:件数や連続的な測定値のための標準的なモデル。
- 中心極限定理:母集団の形にかかわらず、標本サイズが大きくなるにつれて平均の標本分布は正規分布に近づく。
第8–11章:推測
- 信頼区間:指定された信頼水準のもとで、母集団パラメータについてありうる値の範囲。
- 仮説検定と p 値:標本の証拠が帰無仮説を棄却するのに十分強いかを判断する手続き。
- 分散分析とカイ二乗検定:複数の平均、あるいは比率やカテゴリー変数を比較する方法。
第12–14章:回帰とアナリティクス
- 最小二乗回帰と残差分析:直線を当てはめ、その背後にある前提を確認すること。
- ダミー変数と交互作用:重回帰にカテゴリー型の説明変数や組み合わせ効果を含めること。
- 予測的アナリティクス:分類やクラスタリングなど、大規模なデータセットからパターンを見いだすための手法。
批判的分析
長所
- 計算よりも解釈。 著者たちは、手計算ではなく、結果の解釈、前提の評価、前提が満たされない場合にどうするかを重視すると述べている。この版で導入された表形式のまとめはそれを実践に移したもので、各検定結果の横にそれが支える意思決定が置かれる。
- 一貫したビジネスの文脈。 各テーマは会計、ファイナンス、マネジメント、マーケティングの例を通じて示され、各章は Using Statistics のシナリオを軸に組み立てられ、継続ケースとデジタル・ケースは現実的なデータを扱い統計の誤用を見抜くことを学生に求める。
- 柔軟なソフトウェア対応。 Excel(著者たちが開発したアドイン PHStat を含む)、JMP、Minitab、Tableau のためのモジュール化されたガイドによって、コースは手元にあるソフトウェアを使うことができ、ソフトウェアが統計の学習を押しのけることもない。
- 豊富な練習。 「Learning the Basics」と「Applying the Concepts」の問題、復習問題、自己テスト問題と多くの偶数番号の問題の解答が、独習を支える。
短所
- 1学期分の範囲。 時系列予測とノンパラメトリック検定は印刷版の章には含まれず、品質管理はオンラインのみである。序文はオンラインの個別トピックや章の一群に言及しているが、これらの主題が必要なコースは利用できるものを確認するか、本書を補う必要がある。
- ソフトウェア・ガイドが分量を増やす。 各章の後に複数の個別のソフトウェア・ガイドが続くため、印刷版は内容のわりに長く、学生は使わないソフトのガイドを読み飛ばすことに慣れる必要がある。
- ビジネス・アナリティクスは入門的。 第14章は手法の仕組みを扱うのではなく、ソフトウェアで実行される手法の概観である。
コースにおける位置づけ
本書はビジネス統計学のコースで最初に使う教科書として自然な一冊で、データ収集から重回帰までを1学期で扱い、ソフトウェアを重視している。チャールズ・ウィーランの Naked Statistics は、統計の道具が何のためにあり、どのように人を誤らせるかを技術的でない形で説明する本で、本書の前に、あるいは並行して読める。演習もソフトウェアもないので、レヴィンを置き換えるのではなく補うものである。シャープ、デヴォー、ヴェルマンの Business Statistics は、計算の前に考えることと結果の伝え方を同じく重視する本格的な代替教科書で、回帰モデリングとデータマイニングにさらに踏み込む。レヴィンを終えてより深く学びたい学生はそちらへ進むとよい。
イアン・ジャックの Mathematics for Economics and Business は、より形式的な統計学に必要な代数と微積分の素地を補う。レヴィン自体は高校レベルの代数しか必要としない。ニューボールドらの Statistics for Business and Economics は、確率、推測、回帰、時系列をより数学的に詳しく扱う包括的な教科書で、計量経済学や数量ファイナンスに進む学生にとって妥当な次の一歩である。
本書の使い方
高校の代数で十分で、統計学の予備知識は前提とされない。典型的な1学期のコースは First Things First と第1–13章を扱い、シラバスにアナリティクスが含まれる場合は第14章を加える。
- 中核: 第1–3章(データと記述)、第6–9章(正規分布、標本分布、信頼区間、仮説検定)、第12–13章(回帰)。コースの評価の大半はここから出る。
- 補助: 推測を中心とするコースでは、確率の第4–5章は選択的に扱える。第10–11章で標準的な検定がそろう。
- 任意: ビジネス・アナリティクスの第14章と、オペレーションや品質管理を学ぶ学生のためのオンラインの第15章。
ソフトウェアを一つ選び、各章ではそのガイドだけに従うとよい。まず各章の Using Statistics のシナリオを読み、章末でもう一度そこに戻って、分析がビジネス上の問いに答えているかを確かめる。「Applying the Concepts」の前に「Learning the Basics」の問題を解き、自己テスト問題は巻末の解答で確認し、各章で少なくとも一つのケースに取り組むとよい。デジタル・ケースは統計的な主張を評価する練習として特に役立つ。
