01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Truskey, G. A., Yuan, F., & Katz, D. F. (2009). Transport Phenomena in Biological Systems (2nd ed.). Pearson. (First edition: Prentice Hall, 2003.)
章の要約
本書は三つの部からなり、冒頭に序論、末尾に数学の付録がある。著者はいずれもデューク大学の生体医工学の教員で、学部上級から大学院向けの1学期のバイオトランスポート講義の教科書として位置づけている。工学の基礎は、具体的な生物学の問題の中で展開される。各部の最初の章は生物学的な文脈を通じて関連する工学概念を導入し、本書の締めくくりの章は全身の輸送の例を通じて各部をつなぐ。第2版では生体熱伝達の章(第17章)が加わった。以下に挙げるその他の章は、両版に共通する中心部分である。
第1章:Introduction(序論)
最初の章では、バイオトランスポートの範囲と、生物・化学・物理の過程を生体医学の応用の中でどう結びつけるかを示す。
A部:生理学的流体力学入門(第2〜5章)
第2章 Conservation and Momentum Balances(保存則と運動量収支)は、流体の流れの基本的な収支式を示す。第3章 Conservation Relations for Fluid Transport, Dimensional Analysis and Scaling(流体輸送の保存関係、次元解析とスケーリング)はそれを拡張し、どの効果が重要かを判断する道具として次元解析を加える。第4章 Macroscopic Form of Conservation Relations and Applications of Momentum Transport(保存関係の巨視的な形と運動量輸送の応用)は積分形の収支を扱う。第5章 Fluid Flow in the Circulation and Tissues(循環系と組織の流れ)は、これらを血流と組織内の流れに応用する。
B部:物質輸送の基礎と応用(第6〜10章)
第6章 Introduction to Mass Transport(物質輸送入門)は物質輸送を導入して、この部を始める。第7章 Diffusion with Convection or Electrical Potentials(対流または電位を伴う拡散)は、バルクの流れと電気的効果を加える。第8章 Transport in Porous Media(多孔質媒体中の輸送)は、組織などの多孔質構造を通る輸送を扱う。第9章 Transvascular Transport(血管を介した輸送)は血管壁を横切る移動を、第10章 Solvent and Solute Transport across the Kidney Glomerulus(腎糸球体を通る溶媒と溶質の輸送)は、この道具立てを一つの具体的な生理的フィルターに適用する。
C部:物質輸送が生化学的相互作用に及ぼす影響(第11〜17章)
第11章 Mass Transport and Biochemical Interactions(物質輸送と生化学的相互作用)は、輸送と反応を組み合わせて、この部を始める。第12章 Oxygen Transport from the Lungs to the Tissues(肺から組織への酸素輸送)は、酸素が体内を通る経路をたどる。第13章 Ligand-Receptor Kinetics on the Cell Surface and Molecular Transport within Cells(細胞表面のリガンド・受容体動力学と細胞内の分子輸送)は細胞スケールに移り、第14章 Cell Adhesion and Cell Signaling(細胞接着と細胞シグナル)は輸送の考え方を接着とシグナルに適用する。第15章 Transport of Drugs and Macromolecules in Tumors(腫瘍における薬物と高分子の輸送)は薬物送達への応用である。第16章 Transport in Organs and Organisms(器官と生物体の輸送)は、出版社が本書の締めくくりの総合と述べる全身の例を取り上げる。第17章 Heat Transfer in Biological Systems(生体系の熱伝達)は第2版で加わった生体熱伝達の章である。
付録:Relevant Mathematical Concepts(関連する数学概念)
付録には、各章で使う数学がまとめられている。
主要概念
A部:流体力学(第1〜5章)
- 保存則と運動量収支:流体の運動を支配する式。本書の冒頭で展開される。
- 次元解析とスケーリング:問題を支配的な無次元数にまとめること。
- 巨視的収支:保存関係の積分形を系全体に適用すること。
B部:物質輸送(第6〜10章)
- 対流または電位を伴う拡散:濃度以外の要因にも駆動される溶質の輸送。
- 多孔質媒体:組織を多孔質構造として扱う輸送。
- 血管を介した輸送:血管壁を越える溶質と溶媒の移動。腎糸球体が一例。
C部:輸送と生化学(第11〜17章)
- 反応と結合した輸送:物質輸送と生化学的相互作用が影響し合うこと。
- リガンド・受容体動力学:細胞表面での結合と、細胞内の輸送。
- 全身の輸送:器官や生物体の輸送。本書の各部が合流するところ。
- 生体系の熱伝達:第2版で加わった生体熱の扱い。
批判的分析
長所
- 生物学的な問題を通じた工学概念の導入。 出版社は、各部が具体的な生物学的文脈の中で工学概念を展開する章で始まり、概念は展開された直後に応用されると強調している。
- 解析解の重視。 目標は物理的な洞察と一次の理解であり、ソフトウェアを動かすだけでなく、モデルを組み立てて批判的に分析したい読者に向いている。
- 全体を通じた例題と問題。 各章に例題と、解析解と数値解の双方を含む宿題がある。第2版では約25パーセントが新しい問題、約20パーセントが改訂された問題である。
- 明快な構成。 流体力学、物質輸送、生化学と結びついた輸送、全身の総合という順序は、講義に自然な流れを与え、各部は前の部を使う。
短所
- 数学的な要求が高い。 学部上級生と大学院生を対象とし、数学概念の付録がある。輸送や微分方程式の経験がない読者は、より多くの準備が必要である。
- 扱う範囲は選択的。 各章は循環、腎臓、酸素供給、細胞スケールの結合、腫瘍、熱に集中している。膜や上皮を越える分子輸送はどの章題にもなく、必要な読者は専門書で補うこと。
- 熱伝達は第2版のみ。 生体熱伝達の章は2009年に加わった。第1版(2003年)にはないので、熱伝達が必要な講義では版に注意が要る。
- 1学期の分量を超える。 17章と付録は、1学期に通常収まる量を超えるので、教員が取捨選択する。
コースにおける位置づけ
バイオトランスポートの読書リストの中で、本書は発展的な総合教科書である。Introductory Transport Phenomena は Bird、Stewart、Lightfoot の流儀を学部向けに改作したもので、運動量・熱・物質の移動を並行して教える。Rubenstein、Yin、Frame の Biofluid Mechanics は循環系の流体力学と輸送の入門書、Basic Transport Phenomena in Biomedical Engineering は学部レベルで化学工学の原理を生理系と医療機器に応用する。これらが自然な準備となる。
Roselli と Diller の Biotransport は、生体系の運動量・熱・物質輸送を一貫した方法で扱い、似た位置を占める。Friedman の Principles and Models of Biological Transport は、膜と上皮を越える輸送に焦点を当てた大学院向けの教科書である。流体力学、物質輸送、反応を、生理学的問題を軸に一冊で学びたいなら Truskey、Yuan、Katz を選び、膜輸送は Friedman で補う。
本書の使い方
学部上級から大学院の、1学期のバイオトランスポート講義向けである。読み始める前に、微積分と微分方程式を身につけ、流体力学か輸送に少し触れておくとよい。数学概念の付録は各章で使う道具をカバーしている。
- 中核: 第1章、A部の流体力学(第2〜5章)、B部の物質輸送の基礎(第6〜9章)、輸送と生化学的相互作用を扱う第11章。
- 関心に応じて: 第10章(腎糸球体)、第12章(酸素)、第13〜14章(受容体、接着、シグナル)、第15章(腫瘍)、第17章(熱伝達)。
- 最後に: 第16章。三つの部すべてを使う。
章末問題は数値問題も含めて解くこと。本書はモデルの構築と分析を軸に作られている。各部の最初の章は、それが工学概念に与える生物学的な設定に注意して読むとよい。その部の後続の章はこの枠組みの上に築かれている。
